今日のおすすめ
ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・ガザ紛争、台湾海峡緊張、抑圧される人権とそれに抗する人々──。
世界で今なにが起きているのかを読み解く、講談社の書籍をご紹介します。
すべてを他人事にしないために
好きなことを言い、好きな服を着ているだけで、政治犯として逮捕されてしまうイラン。日本で暮らしていると、「遠いイスラム世界の話」にも思えます。しかし本書に込められているのは、家父長制のもとで見えない重圧に縛られている、すべての女性へのメッセージ。「自由を決してあきらめてはいけない」と。
独房の中で祈り、入ってきたハエに話しかけて孤独から逃れ、囚人同士で連帯しようとする熱いシスターフッド。絶望的な現実を描きながら、人間の根源にある希望が描き出されるノンフィクションを、ぜひご一読ください。
─── ノンフィクション編集チーム 青木由美子
■禁断の書籍を緊急出版!
私はいま、家を去る最後の瞬間にこの文章を書いています。(中略)今回の逮捕は、いまあなたが手にしているこの本――『白い拷問』が原因です。(「はじめに」より)
2023年に獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディの手記と、ナルゲスによる13人の女性受刑者へのインタビューをまとめた衝撃のノンフィクション。
■推薦の言葉および海外での反響
・安藤優子――全人格を奪う「白い拷問」。その実態をつぶさに告発したナルゲスさんと証言者たち。彼女らが闘っているのは、この地球上の人権を踏みにじられているすべての人々のためだ。
・浜田敬子――「人間らしさ」を破壊するには暴力も言葉も必要ない。昼夜もわからない極小の独房で徹底した孤独状態に置かれることが、これほど心身を痛めつけるのかと戦慄する。それでも彼女たちはこの「白い拷問」を必死で生き抜こうとする。その強い意思を持ち続けることだけが、イラン社会の家父長的な体制を変える一歩になると信じて。
・ニューヨーク・タイムズ絶賛。世界16ヵ国で緊急出版予定。
■白い拷問とは?
イランのエヴィーン刑務所は、悪臭と恐怖に満ちた悪名高き場所。そこで繰り返されるのは、看守による自白の強要、鞭打ち、性的虐待、家族への脅迫、そして「白い拷問」だ。照明を操作した独房で昼夜の感覚を奪い、睡眠パターンを妨げ、時に目隠しをし、身体的接触をすべて奪うことで、囚人の身体と精神を蝕む非人道的な拷問である。
■突然の逮捕と奪われた日常
「女性にも権利を」「人権を守ろう」「好きなことを言い、好きな服を着たい!」
自由を求めて思いを表すだけで、服装が不適切というだけで、思想犯・政治犯として逮捕されてしまうイラン。ヒジャブ着用が不適切だと拘束されたのち死亡したマフサ・アミニ氏問題を巡り、国連調査委員会は「違法でありイラン政府に責任がある」と発表している。
本書に登場する女性たちも一方的な容疑をかけられ、拘束されている。幼いわが子を道端に置き去りにするかたちで逮捕・投獄された女性までいる。
著者ナルゲス自身、夫は政治亡命し、10代になった双子の子どもたちも父のもとで暮らし、孤独な闘いを強いられている。13回逮捕され、5回の有罪判決を受け、31回の禁固刑と154回の鞭うち刑を言い渡されても、ナルゲスが闘いをあきらめない理由は、女性の権利と暴力や死刑の廃止を求める信念に他ならない。
命をかけた「6秒の反戦行動」
テレビ局の生放送中のスタジオで戦争反対の紙を掲げた女性。世界中に衝撃を与えた「事件」後、彼女の身に何が起こったのか。 ─当局による度重なる尋問と監視、職場解雇、メディア・SNSでの中傷、さらにプーチン支持の母親からは絶縁され、元夫には愛娘を奪われ会えなくなる。
刑務所に入れられる寸前、奪還した娘を連れて軟禁された自宅から決死の国外脱出を果たすまでの7ヵ月を綴った彼女の手記は、いまのロシアで普通の人々がプーチンに「NO」と言うことの恐怖、それでも立ち向かう個人の強さを描いています。ロシアで起きている「現実」をご高覧ください。
─── ノンフィクション編集チーム 田中浩史
彼女を大胆な行動に駆り立てた理由とは?
周囲の沈黙と冷笑の中、すべてを失いながら自らの良心に従いながら一人で行動し、自由を勝ち取った女性の手記。
ロシアのウクライナ侵攻後まもない2022年3月14日。モスクワの政府系テレビ局・チャンネル1のニュース番組中にスタジオに乱入し、反戦ポスターを掲げた女性。この映像は瞬く間に全世界に配信され、一躍時の人となったマリーナ・オフシャンニコワ。
しかし彼女の行動は、欧米での賞賛の一方、母親はじめ国内の多数派からは「裏切者」のレッテルを張られ、激しいバッシングの対象に。
同局のニュース編集者として何不自由ない暮らしをしていた彼女をこの行動に駆り立てた理由とは?
そして、彼女の周辺のメディア関係者は、ごく少数の支援者の強まる言論統制のなかでどのような行動をとっていたのか?
反戦行動後、逮捕・失職・親権制限・自宅軟禁など、次々とやってくる逆境。
最終的には娘を連れて決死の国外脱出に成功するまでの激動の7ヵ月間を描く。
プーチンが語る「戦争の論理」
ウクライナ戦争はなぜ起こったのか? それをプーチン自身の論理で紐解くため、大統領就任からウクライナ戦争までのターニングポイントが分かる20のプーチン論説を編訳したのが本書です。プーチンがいかなるロジックとレトリックを駆使して人心を掌握し、現在の地位に登り詰め、権力を行使してきたのかが、彼自身のスピーチと論文を通してニュース以上に深く理解できます。
ピケティ『21世紀の資本』訳者による充実した解説とともに、ウクライナ戦争の、プーチンの是非を自分の目で確かめられる貴重な一次資料です。
─── 星海社 片倉直弥
プーチン自身の言葉でたどる「ウクライナ戦争への道」
プーチンはロシア大統領就任後、数多くの演説や論文を発表し、自らの意見を世に問うてきた。その中から20の論説を精選して、プーチンがロシア再生からウクライナ戦争までの道筋をどう考えて行動し、また国内外に宣言してきたのかを検証するのが本書である。ソ連崩壊後の惨状からロシアを建て直し、テロ対策で一度は国際社会と協調するもやがて欧米に失望し、2008年のジョージア侵攻や2014年のクリミア侵攻で軍事力に自信をつけ、2022年のウクライナ戦争を決断するまでの、20余年のプーチンの言葉を実際の行動と対比し、世界を変えたウクライナ戦争がなぜ起きてしまったのかを、より深く考える一助としたい。
<解説対談>専門家に聞くプーチンの言葉と思想 黒井文太郎×山形浩生
*本書目次より抜粋
まえがき 編訳者の口上
第1章 第1期(2000ー2004年):ロシア再興とテロ対応を通じた協力模索の時代
第2章 第2期(2004ー2008年):欧米への不信と決別の時代
第3章 首相時代(2008ー2012年):実力行使の始まり
第4章 第3期(2012ー2018年):クリミア侵略と欧米無力への確信
第5章 第4期(2018年ー):ウクライナ侵略への道
まとめ プーチン思想の推移
あとがき
解説対談 専門家に聞くプーチンの言葉と思想 黒井文太郎×山形浩生
出 典
紛争を読み解く
隣の人は何する人ぞ
戦争のメカニズム
マンガでわかりやすく
作家によるルポ
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