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【WBC世界一の根源】栗山英樹という生き様に学ぶ「信じ切る力」

2024.04.23
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WBCで侍ジャパンが世界一になった試合では、神がかったシーンがいくつもありました。
その優勝までの道のりを栗山監督はどのように戦ったのか。
そんなドキュメンタリー番組を見たときです。この人は次元が違う、とんでもない“人間力”の持ち主だ!! ということが画面から伝わってきたのです。

一体どんな人生を歩んできたら、あんな神がかったことを引き寄せることができるのか。その答えが、この本の中にありました。

最後は誰でやられたら、納得がいくか

やはり最も神がかった試合として思い出されるのは、 WBCの準決勝、メキシコ戦ではないでしょうか。
4対5で日本が負けている9回裏、開幕からずっと不振で、この日も4打席3三振の村上宗孝(むらかみむねたか)をなぜ代えなかったのか。

栗山監督は数々のメディアで「ムネを信じていた」と答え、「信じる」という言葉がクローズアップされました。
ただこれは、いい結果が出たから人々に響いたのではないか。もし違う結果だったとしたら……という思いが、私にはありました。
しかし、この本を読んですっと腹落ちしました。

瞬時に決断を下さなければならないあの場面で、栗山監督が真っ先に考えたのは、「最後は誰でやられたら、納得がいくか」だったのです。つまり腹をくくったわけです。
しかも打撃準備をしている村上のところに、2度もコーチを行かせています。

選手というのは、まわりがバントを準備していたりすると、代えられるかもしれない、という空気をつかんでしまうものなのです。だから、そのすべてを消させて、覚悟を伝えたかった。

やることをやり切ったから、「信じ切る」こともできたのです!!

こうしたWBCの裏話や、大谷翔平選手との細かなやり取りを読めるのはこの本の醍醐味ですが、それ以上に面白かったのは、栗山英樹という人物の生き様でした。

キャスターとしての経験を活かす

野球にうとい私でも、ヤクルトスワローズ時代の栗山選手がゴールデン・グラブ賞を受賞し、スマートでカッコよかったことはよく覚えています。

だから、ドラフト外で入団し、なかなか1軍にあがれなかったこと、入団2年目に発病したメニエール病が、引退の大きな要因であったことを知り驚きました。

さまざまな逆境を跳ねのけていった話を読むうち、やっぱり“生き様”で示されると説得力が違うなぁと思っていると、同じような言葉が載っているじゃありませんか!!

 人としての生き方、生き様こそが大事、人間性こそが大事なのだ 。

これは、栗山さんが『ニュースステーション』のキャスターとして、メジャーリーガーのノーラン・ライアンを取材したときに聞いた言葉で、その後の栗山さんの価値観を確立させる原点になったといいます。

神様に生き様を認めてもらう

勝負の世界は、「最後は運を取り込むことが必要」であり、監督をしていると神様を意識することが起こるのだとか。
だから、神様が応援してやろうと思うような努力を怠ってはいけないし、日頃の生き方、生き様が大事で、神様はそれを見ていると。

こんなふうに言われて育った方も多いでしょうし、私自身もそうなのですが、世の中にはずるい人たちがいて、いいように利用されたり、損をしたりすることが多く、“人を信じる難しさ”を感じていました。

しかし栗山さんは、「嘘をついてバカを見ないよりも、正直でいてバカを見た方がいい。とりわけ今は、そういう時代が来ている気がする」といいます。

私はこれらが書いてある「第6章 神様に生き様を認めてもらう」のページに励まされましたが、きっと読む人によって響くところが違うと思います。

それぐらいこの本は、野球の話にとどまらず、色々な興味深い話が出てきます。
というのも、栗山さんは「寸暇を惜しんで本を読む」読書家。
第4章では、こうした栗山さんの “日常のルーティン” が書いてあり、改めてWBCでの神がかった勝利は決して偶然ではなく、こうした日々の積み重ねによって手繰り寄せたものだったのだと確信しました。

そうそう、WBC優勝後の好評価に対し栗山さんは、「こうやって人はダメになるんだな」と思ったそうです(笑)。
こんなお人柄が垣間見える本なのですから、間違いありません。強くオススメしたいと思います!!

  • 電子あり
『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』書影
著:栗山 英樹

大谷翔平の二刀流も、WBCの世界一奪還も、「信じ切る力」がなければ実現しなかった。

信じること、信じられることによって、毎日が変わり、生き方が変わる。その結果、人は大きく成長していく。

運とは、日々の行動の積み重ねで、コントロールするもの。神様に信じてもらえる自分になるしかない。

ダメな自分に向き合い、相手にただ尽くし、日常のルーティンで「信じ切る力」を磨き続けた栗山英樹の、真摯で“実践的”な人生論。

野球を知らない人にも、中学生にも、ビジネスパーソンにも、すべての人に読んでほしい一冊です。

【目次】
第1章  信じ切るということ
第2章 ダメな自分をどう信じるか
第3章 すべてのことに、意味がある
第4章 「信じ切る力」を育てる日常のルーティン
第5章 相手を、信じ切る
第6章 神様に生き様を認めてもらう


【プロフィール】
栗山英樹 Hideki Kuriyama

1961年生まれ。東京都出身。創価高校、東京学芸大学を経て、1984年にドラフト外で内野手としてヤクルトスワローズに入団。1989年にはゴールデン・グラブ賞を獲得するなど活躍したが、1990年に怪我や病気が重なり引退。引退後はスポーツキャスター、野球解説者に転身した。2011年11月、北海道日本ハムファイターズの監督に就任。翌年、監督1年目でパ・リーグ制覇。2016年には2度目のリーグ制覇、そして日本一に導いた。2021年までファイターズの監督を10年務めた後、2022年から日本代表監督に就任。2023年3月のWBCでは、決勝で米国を破り世界一に輝いた。2024年から、ファイターズ最高責任者であるチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)を務める。

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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