今日のおすすめ

PICK UP

2024.01.24

レビュー

いまこそ旅に! 神戸・兵庫ならではのサステナブルを体感、勉強できる旅

本当に知りたい「神戸・兵庫」

神戸のガイドブックは数あれど、こんなにも「もっと知りたい!」「行ってみたい!」と気分が沸き立つものはそう多くないでしょう。「FRaU S-TRIPシリーズ」第5弾となる『未来につづく旅「神戸・兵庫」へ』は、まるごと一冊「神戸」「兵庫」を旅する特集号です。
美しい写真と、丁寧につづられた文章が紹介するのは、観光地として名をはせるエリアだけではありません。地域の人びとやその取り組み、ものづくり、美しい自然……気づけば本にはふせんがビッシリ。どこを紹介しようか迷うほど、訪れたくなる場所ばかりなのです。

表紙とカバーストーリーには神戸市出身の俳優・ダンサー、森山未來さんが登場。
淡路は古代、地上に降り立ったふたりの神が日本の島々を生み落としたとき、最初にできたとされている「はじまりの地」です。その古代、現代、未来を象徴する場所を森山さんとともに訪れます。

透きとおるような海と白い砂浜がきらめく阿万海岸(あまかいがん)で寝転んで空を仰いだり、

伊弉諾(いざなぎ)神宮の境内にたたずむ夫婦の大楠の傍らでその歴史に思いを馳せてみたり。静かな時間が流れます。

一方、建築家・安藤忠雄氏によって設計された複合施設「淡路夢舞台」のような現代的な空間も。淡路を南から北までめぐるなかで見えてくる島のいろいろな表情、また森山さんが見せてくれる即興の舞にも注目です。

神戸のまちがつなぐ人の縁

神戸は華やかな港町としての顔だけでなく、美しい山々や農地、下町など、さまざまな表情を持っています。「Trip2 六甲の山から生まれるもの」では、そんな神戸のまちがつなぐ人の縁をたどります。


あまり知られていませんが、近畿の政令指定都市のなかでも、神戸はトップクラスで農業や漁業がさかんです。

こう語るのは神戸市の農水産物や加工品などを扱う〈FARMSTAND〉などの運営に携わる小泉亜由美さんです。
売れ残った野菜は加工してジュースや瓶詰に、野菜の皮や芯はランチにセットされるスープとなり、食品廃棄はずっとゼロだといいます。なんてサステナブル、そして何よりおいしそう!

また、六甲山が育む名水は酒づくりにもひと役買っています。

灘の銘酒「大黒正宗」を守り続ける蔵元が、地元の食材とのペアリングを想定した酒を考案したり、バレンタインの催事に向けてチョコレートに合わせたペアリングの提供を予定するなど、斬新なアイデアでファンを増やしています。

コラボレーション先のショップに並ぶのは、ほおずきやぶどう山椒、六甲味噌など、日本の素材を活かした宝石のようなチョコレートたち。酒粕を用いたジェラートが縁で、バレンタインの催事も実現したそう。

豊かな神戸の風土がつなぐ縁は、山が野菜の育つ土壌を育み、豊富な水を与え、その水がまちを潤し、海にたどりつくようすと重なります。

「5つの国」の多様な魅力

かつては「5つの国」に分かれていた兵庫。大都市神戸を有する「摂津」エリアをはじめ、丹波焼の産地であり、近年は移住先としても人気の高い「丹波」。城崎温泉や豊岡鞄、但馬牛など魅力的なコンテンツが豊富な「但馬」や、赤穂の城下町で知られ、塩、播州織などものづくりが受け継がれるエリアでもある「播磨」。温暖な気候で、驚異の食料自給率120%を誇る「淡路」……。その多様な魅力に触れてみましょう。

ここ10年程の間に住まいを移す人が増えはじめたという丹波篠山。

霧が多く、美しい雲海を見ることができるエリアです。ここでは、全国区にファンを持つ人気のセレクトショップや陶芸家、美術家などがこの山あいのまちにたどり着き、土地の風土に寄り添いながら自分たちの表現を追求する暮らしを紹介します。

海の幸、山の幸があり、さまざまなカルチャーが息づく但馬。

温泉街の一本裏手の路地には、自然派ワインと但馬ならではの食材で作る唯一無二の料理で話題のレストランがあり、地元の人だけでなく、観光客にも人気を博しています。

また、城崎にはこのまち以外では購入できない本があります。
志賀直哉の小説『城の崎にて』に解説書を合わせたオリジナル本をはじめとする特別な本は、温泉旅館の若旦那衆が中心の本づくりのプロジェクト〈本と温泉〉によるもので、県外からも注目を集めています。

古くから受け継がれる文化に、若い世代が新たな息を吹き込みます。カバーストーリーで森山さんが語った、

情報技術が発達したいま、都会を経由しないと外に出せないという時代ではないことに、みんな気がついていますよね。地域からグローバルに届けられる。

という言葉のままの盛り上がりを感じられるまちです。

「面白い人たちが集まる、面白い路」があるのは摂津。

商店街や市場など、“路”でゆるやかにつながる人びとの暮らしは、「行ってみたい」にとどまらず、「ここで暮らしてみたい」……そんな気持ちにさせられます。

地元のプロに聞く「街の重要文化財」

そんな兵庫5国から、ピンポイントで行きたいエリアと、そこで出会える文化財級の人を教えてくれるのが、関西きっての月刊情報誌『Meets Regional』です。
「すべては当日のお楽しみ」という、店主もお品書きも日替わりの立ち呑み店をはじめ、新しい風が吹く「シタマチコウベ」こと新開地、

先に紹介した「霧のまち」とはまた違う顔でローカルフードを堪能させてくれる丹波篠山など、

地元のプロが教えてくれる、まちの本当の魅力を今すぐ体感したくなるはず。

京都や大阪にはよく行くけれど、少し足を延ばした先にこんなに心惹かれるまちがあったとは。いままで知らなかった! そしてもっと知りたくなる、神戸と兵庫を丸ごと楽しむ一冊です。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
X(旧twitter):@752019

おすすめの記事

2023.10.11

レビュー

【サステナブルな神奈川】人生観を変えるような人、場所、自然……を体験しに神奈川へ!

2023.12.26

レビュー

「捨てたら本当に必要なものが入ってくる」という絶対法則。服を捨てたら人生が変わった!

2023.11.17

レビュー

料理家・栗原はるみが見つけた全58スポット。本当に知りたかった“普段の京都”

最新情報を受け取る