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あなたの隣にも必ずいる! 職場を腐らせる人のターゲットにされない方法

職場を腐らせる人たち
(著:片田 珠美)
2024.04.09
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ボロボロになる前に

あなたが職場に向かうとき、どんな気持ちでいるだろうか。明るく、やる気に満ちているだろうか。不安やストレス、イライラを感じるだろうか。もし、「今日は処理する仕事が多いから、忙しいだろう。気が重いな」「大事なプレゼンがあるから失敗しないか緊張する」といった仕事に対する緊張感ではなく、職場に漂うイヤな雰囲気や重いムードが気になる場合は、その陰に「職場を腐らせる人」の存在があるかもしれない。

『職場を腐らせる人たち』著者であり精神科医の片田珠美先生は言う。

これまで七〇〇〇人以上を診察してきたが、最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみだ。

「職場を腐らせる人」とは、その人がいることで職場の雰囲気が悪くなり、不和やもめごとが絶えなくなる人だ。当事者だけでなく、周囲がみな疲弊していき、中には心身の不調を訴える人も現れる。

そのような人が一人いるだけで、職場全体が腐っていくのは、箱の中に一つ腐ったミカンがあるだけで、ほかのミカンにも腐敗が広がるのと同じ仕組みだと、片田先生は言う。
腐ったミカンは、表面のカビが他のミカンに影響すると思われているが、実は表面に傷みが現れるより前に、周囲の果物や野菜の腐敗を促すガスを出しているという。職場を腐らせる人も同じだ。一目で見抜けるようなわかりやすい態度や見た目でいるとは限らない。時には悪意を巧妙に隠してあなたに近づいてくることもある。
この本は、周囲を腐らせるガスのような悪意や思惑を内に秘めた人を見抜き、そのターゲットにされないための方法を教えてくれる。

彼らは何を考えているのか

本書の約半分を占めるボリュームの第1章では、「職場を腐らせる人たち」の15の具体例を解説する。
「職場を腐らせる人」といっても「根性論を持ち込む上司」「言われたことしかやらない若手社員」のような、どこの職場にもいそうな人たちから、職場の人間関係を破壊する「不和の種をまく人」、「ストーカー化する人」といった、理解しがたい思考回路によるものもある。言動だけでなく、彼らのおかれた背景を通じてその精神構造と思考回路を分析していくが、ちょっとしたホラーも顔負けに怖いケースも少なくない。たとえば「職場でよくない噂を拡散される」事例には

Aさんは一見温厚そうで、いつもにこにこと笑顔なので、つい気を許していろいろ話してしまうのだが、後で自分が言った覚えのないことを「〇〇さんが~と言っていた」と吹聴されていたと知り、驚いたという社員が何人もいたのだ。

というケースもあれば、

この女性と出会い系サイトで知り合って不倫していたと称する男性の妻が、男性の携帯を盗み見て不倫の事実を知り、夜遅くに会社に怒鳴り込んできたところ、残業でただ一人社内に残っていた経理部のお局社員が「当該の社員はもう退職しましたから、当社とは一切関係ありません」と上手に説明して追い返したと、お局社員自身が吹聴しているというのだ。

というように、してもいない不倫の不始末をもっともらしく言いふらされた人もいる。このニつのケースは、表面上の言動は似ているものの、根幹では全く違う心理が働いており、「職場を腐らせる人」たちがそれぞれどのような基準でターゲットを選び、攻撃しているのかを知ることができる。15の事例には「怖い」「理解しがたい」だけでなく、彼らの悪意にいち早く気づき、自分の身を守るためのヒントが詰まっている。

変えることはできないけれど

2章以降では、そんな「職場を腐らせる人」を変えることが困難な理由と、彼らにターゲットにされない方法を説く。優しくまじめな人ほど「根気よく話をすれば、彼らにもわかってもらえるのではないか」と思いがちだが、彼らの心の底にある四つの心理を知れば、それがいかに厄介なことかわかるだろう。

私たちにできることは、彼らのターゲットにされにくい人物像を知り、職場においてはそのようにふるまうことだ。それは少し強気な人物像であるため、「素の自分」がそうなるのは難しいと感じるかもしれない。それなら「職場での顔」と考えてもいい。本書は、今すぐにでもできる「虫よけ」になる対策も教えてくれる。マネできるポイントから始めてみたい。

本書を読むと「職場は仕事をするために行く場所で、採用試験を突破した人の集まりだからまともな人しかいない」というのは大きな勘違いかもしれない……と、背筋が寒くなる。しかし、片田先生のあげる「対策」は、思いのほかシンプルだ。

職場を腐らせる人に対処するうえで何よりも大切なのは、まず気づくことである。

本書は、その気づきにつながるヒントをくれる。それはあなたの身を守る強力な盾になるはずだ。

  • 電子あり
『職場を腐らせる人たち』書影
著:片田 珠美

根性論を押し付ける、相手を見下す、責任転嫁、足を引っ張る、自己保身、人によって態度を変える……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか?

これまで7000人以上を診察してきた著者は、最も多い悩みは職場の人間関係に関するものだという。
理屈が通じない、自覚がない……やっかいすぎる「職場を腐らせる人たち」とはどんな人なのか? 有効な対処法はあるのか? ベストセラー著者が、豊富な臨床例から明かす。

「長年にわたる臨床経験から痛感するのは、職場を腐らせる人が一人でもいると、その影響が職場全体に広がることである。腐ったミカンが箱に一つでも入っていると、他のミカンも腐っていくのと同じ現象だ。
その最大の原因として、精神分析で「攻撃者との同一視」と呼ばれるメカニズムが働くことが挙げられる。これは、自分の胸中に不安や恐怖、怒りや無力感などをかき立てた人物の攻撃を模倣して、屈辱的な体験を乗り越えようとする防衛メカニズムである。
このメカニズムは、さまざまな場面で働く。たとえば、子どもの頃に親から虐待を受け、「あんな親にはなりたくない」と思っていたのに、自分が親になると、自分が受けたのと同様の虐待をわが子に加える。学校でいじめられていた子どもが、自分より弱い相手に対して同様のいじめを繰り返す。こうして虐待やいじめが連鎖していく。
似たようなことは職場でも起こる。上司からパワハラを受けた社員が、昇進したとたん、部下や後輩に対して同様のパワハラを繰り返す。あるいは、お局様から陰湿な嫌がらせを受けた女性社員が、今度は女性の新入社員に同様の嫌がらせをする。 
こうしたパワハラや嫌がらせの連鎖を目にするたびに、「自分がされて嫌だったのなら、同じことを他人にしなければいいのに」と私は思う。だが、残念ながら、そういう理屈は通用しないようだ。」──「はじめに」より

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
X(旧twitter):@752019 

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