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SNSでことばの事故を起こさない方法とは!? 日本語ラップは言語芸術!?『日本語の秘密』
言語学者と「ことば」のプロによる対談
日本語についてもっと知りたい、そう思ったことはありませんか?
私は学生の頃から英語が苦手でした。できないけれど、できるようになりたい、と大人になってから語学留学をしたりワーキングホリデー制度を活用して海外に住んだ経験もあります。今もまだ英語は苦手ですが、英語の世界に触れるほど日本語に対しても興味が沸いてきました。
なんで私は日本語を喋れているのだろうか、いや本当に理解して使いこなせているのだろうか……。
本書は「音声学・音韻論」を専門とする言語学者・川原繁人さんが、4名の「ことば」を仕事にしたプロの方々と対談した内容がまとめられています。歌人・俵万智さん、ラッパー・Mummy-Dさん、声優・山寺宏一さん、言語学者で小説家・川添愛さん、同じことばのプロでも業種の違う4名が日本語の魅力を語ります。そこには私たちが普段意識しないであろう日本語の捉え方が多数語られており、目から鱗の連続でした。
幼児ことばは大切にすべき日本語!?
特に私が興味深く読んだテーマは、俵万智さんとの対談で語られる「幼児ことば」についてでした。著者の川原さんはご自身が子育て真っ只中ということもあり、子どもの言語発達についても詳しく分析されています。
日本社会はどこか、子育てを急ぎすぎているように感じます。子どもたちを早く大人にさせすぎている。(中略)だから言語発達ものんびりでいいんです。急がせて「正しい」発音を子どもに強要しても、あまりいいことはないんじゃないかと。
まさにいま我が家の娘は1歳を過ぎて言葉を発しようと日々奮闘をしています。子育てが現実的になった時から、私はいわゆる「赤ちゃんことば」は使わないで彼女と接したいと考えていました。その方が「正しい」日本語を早く習得できると思ったからです。それこそ、幼児ことばは「正しくない」という認識があり、大人になることを急かしているんだと気づかされました。
具体的には「ワンワン」「ニャンニャン」ではなく、始めから「犬」「猫」と教えようと考えていました。しかし本書で、犬と言う言葉は動物的な特徴は何もなく、音と意味が恣意的に結びついている言葉だと説明されています。
ワンワンと鳴く動物だからワンワン。これは理にかなっている言語戦略です。赤ん坊にとって、まずは単語を身につけて使えるようにならないといけない。(中略)そんな赤ちゃんには、音と対象の特徴が繋がった単語の方が習得しやすいんです。
本当にその通りですよね! こんな当たり前なことを見逃していた自分に驚きました。俵万智さんも「これはそういうものだから」と早々に押し付けることはしなくていいと仰っており、教えるということは子どもの考える力も削いでしまうことに繋がるのだなと痛感しました。幼児ことばは子どもたちが考えて導き出した「ことば」であり、親や友だちとのコミュニケーションツールです。その過程を大事にしていくことは日本語を深く理解していく過程に繋がっていくのですね。
あなたにとっての目から鱗が必ずある一冊
今回私は子育ての部分のみをを取り上げましたが、本書では日本語というテーマで実に多様な切り口から日本語を解析しています。
音楽が好きな方はMummy-Dさんとの対談による「日本語ラップの韻の踏み方や変遷」、アニメや映画が好きな方は山寺宏一さんとの対談による「声色を変えるためにしている器官の使いこなし」、ChatGPTに興味がある方は川添愛さんとの対談による「AIは人間の代わりになるのか」といったお話はいかがでしょうか。
私たちが当たり前に使っている日本語。生活することに何ら問題はなく、深く考えたこともなかったかもしれませんが、日本語っておもしろいですよ! 読めばきっと誰かに話したくなる、そんな「へぇー!」がたくさん詰まった一冊です。
- 電子あり
気鋭の言語学者が「ことばの達人」に出会ったら――。思わず誰かに話したくなる、日本語の魅力とことばの楽しみ方が満載の対談集!
【本書の主な内容】
●「あかさたな」は美しすぎて怖い!
●SNSでことばの事故を起こさない方法
●すぐに始められる「韻の楽しみ方」
●「3人の学生が来た」と「学生が3人来た」はどう違う?
●RとLは聞き分けられなくていい
●発声で感情を伝えるテクニック
●日本語は「音の大食い」!?
●ことばは親があげられる最高のプレゼント
●声は一番手っ取り早い「遊び道具」
●文字に頼らないコミュニケーション術
【目次】
第1章 言語学から見える短歌の景色 俵万智
言語学者に作品を分析されるとは!?/頭韻の効果/連濁の不思議/句またがりという技法/日本語の美しさとは/視覚的になりすぎた日本語/制約は創造の母/子供たちのことばと心が空洞化している/言葉は親が与えられる最高のプレゼント ほか
第2章 日本語ラップと言葉の芸術 Mummy-D
言語学者とラッパーの出会い/日本語ラップにおける子音の役割/音節を使って母音を圧縮する技術/俵万智とMummy-Dの意外な共通点/アクセントとどう向き合うか/ラップのメッセージ性/ラップは言語芸術か/教育現場にも有効なラップ ほか
第3章 人間にとって「声」とは何か 山寺宏一
ドナルドダックから銭形警部まで/自分の声を好きになるために/エヴァンゲリオンでの「間」の取り方/声優の「ガンダム理論」/吹き替え映画のタイミングをどう合わせるか/声優からみた日本語と英語の違い/ドナルドダックの声にはどうやって辿り着いたか/AIは感情を表現できるか ほか
第4章 言語学の現在地 川添愛
言語学の分野はこんなにある/チョムスキーの「普遍文法」/言語学研究の面白さとは/外国語学習にも有用な音声学の知識/言葉の意味の多層性:論理的な意味と論理的でない意味/AIは人間の代わりになりうるのか/正しい日本語なんてない/知れば知るほどわからなくなる ほか
レビュアー
ライター。フリーランスで働く1児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier
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