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空気が「声」になる旅──からだの中でうたや声が生まれる奇跡を描く絵本

絵本 うたうからだのふしぎ
(作:川原 繁人/北山 陽一 まんが:牧村 久実)
2024.02.20
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「声はどこから生まれるの?」に答える絵本

言葉を話すとき、歌うとき……。私たちの体の中ではどんなことが起きているか知っていますか?

『絵本 うたうからだのふしぎ』は、体にとりこまれた空気が声や歌になるまでを、わかりやすく解説した絵本です。教えてくれるのは、気鋭の音声学者・川原繁人先生と、『永遠に』『ひとり』などのヒット曲を持つ「ゴスペラーズ」のメンバー・北山陽一さん。可愛いまんがは『絵本 はたらく細胞』シリーズの作画などを手がける牧村久実さんによるものです。

私たちが何気なく出している「声」。それはどこから生まれるのでしょう。声が人に「歌」となって届いたり、会話でコミュニケーションできるのはなぜでしょう。私たちの「声」にふと感じる「ふしぎ」をやさしく解き明かしてくれる一冊です。

「声」が生まれるまでの旅

この本は、人のからだから声や歌が生まれる過程を、子どもから大人まで楽しめるまんが形式で読ませてくれます。
主人公は、“空気”。ステージ上にいる男の子は、これから大勢の人の前で歌おうとしています。とても緊張していますね。

ぼくも声に
なれるかな?

空気は、男の子のからだに入ってみることにしました。

ここは 
どこだろう?

空気が到着したのは「肺」。ここから、空気が体内のさまざまな器官を通り、「声」になる旅が始まります。まず空気が出会ったのは、肺を動かす筋肉たちです。

筋肉たちは、自分では動けない肺を縮めたり広げたりして、空気を上に押し上げます。

いろいろな筋肉が協力し合って、空気は「声帯」に向かうことができるのです。

私たちは口やのどだけでなく、楽器のようにからだ全体を使って声を出しているとこの本は教えてくれます。
高い声や低い声、その音階を制御するからだのしくみ、「あ」と「い」の発音を分けるしくみなど、「声が生まれる」過程には、からだのさまざまなパーツが関わっているのです。
この本のタイトルにある「うたうからだ」の通り、全身を使って声を生み出す高性能な楽器のような、私たちのからだの一面を知ることができます。

一緒にやってみたくなる!

空気が声になる旅の途中にあるのは、川原繁人先生による「さらにくわしく説明するよ」のコーナーです。川原先生は慶應義塾大学言語文化研究所教授で、言語学、音声学を専門としている「声」のプロ。ここでは、まんがパートで紹介された知識の、さらなる深掘りができます。

音と空気の関係を説明するときは

まず、みなさん「ぱぱぱ」とくり返し発音してみましょう。両唇が閉じるのを感じられると思います。つぎに、「たたた」と発音してみましょう。舌先が上がったり下がったりしませんか?

また空気の流れで音を作る仕組みを説明するときは

2枚のうすい紙かティッシュを平行になるように手で持ちます。2枚の間に息を吹き込んでみましょう。

といった具合に、試してほしい発音や動きが出てきます。これは、読むだけでなく、ぜひ一緒にやってみてほしいのです!
まんがの中の空気や筋肉たちが何をしているのか、より分かりやすくなります。これは大人の私にとっても新鮮で「確かにそう!」「ほんとだ!」と楽しい驚きがあることばかりでした。こんな複雑な動きを意識することなくできて、声や歌を生み出す私たちのからだには、実はすごい奇跡が宿っているのですね。

紙の本には、QRコードが記されていて、北山陽一さん作詞作曲の『うたうからだのふしぎ』を聴くことができます。美しい声とメロディを楽しみながら、私たちの歌声や話し声は、からだ全体から生まれる素敵な個性であることに、想いをはせてみてはいかがでしょうか。

『絵本 うたうからだのふしぎ』書影
作:川原 繁人/北山 陽一 まんが:牧村 久実

気鋭の音声学者・川原繁人とゴスペラーズ・北山陽一による「うたの絵本」誕生!
からだの中でうたや声が生まれる奇跡がわかる!

うたをうたう、ことばをはなす──。
日々、あたりまえにしていることですが、あなたのからだの中でなにが起こっているか、知っていますか?
からだにとりこまれた空気が声やうたになるまでを、わかりやすく解説した絵本です。

高い音や低い音って、体のどこで変化させているの?
「あ」と「い」の発声方法のちがい、わかりますか?

まんが形式でたのしく学べ、くわしい解説も充実。知識の深掘りができます。

子どもだけでなく、アナウンサーや声優、歌手など声を出すお仕事をなさっているみなさまにも、手に取っていただきたい1冊です。

オールカラー 子どもから大人まで

*紙の本だけの豪華特典*
本を読み進めながら、内容に合わせて、北山陽一さん作詞作曲の『うたうからだのふしぎ』を聴くことができます。
(楽曲を聴くための二次元コードが掲載されているのは紙の本のみとなります)


【川原繁人】
慶應義塾大学言語文化研究所教授。2022年国際基督教大学より学士号(教養)、2007年マサチューセッツ大学より博士号(言語学)を取得。ジョージア大学、ラトガーズ大学にて教鞭を執った後、現職。専門は言語学、音声学。著書に『音とことばのふしぎな世界』(岩波科学ライブラリー)、『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』(朝日出版社)、『フリースタイル言語学』(大和書房)、『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。義塾賞(2022)、日本音声学会学術研究奨励賞(2016、2023)など受賞。

【北山陽一】
ミュージシャン、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授。1992年慶應義塾大学環境情報学部に入学、1994年早稲田大学のアカペラコーラスサークル「Street Corner Symphony」の門を叩き、「ゴスペラーズ」に加入。同年12月にメジャーデビューをはたし、「永遠に」「ひとり」「星屑の街」「ミモザ」など、数々のヒット曲を送り出す。2012年から教壇に立ちつつ、2021年より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に在学。

【牧村久実】
漫画家、イラストレーター。「少女フレンド」「デザート」で漫画を執筆し、おもな作品は『天使の唄』。ほかに青い鳥文庫(講談社)の「泣いちゃいそうだよ」シリーズ(小林深雪/著)、「鈴の音が聞こえる」シリーズ(辻みゆき/著)などのさし絵、「絵本 はたらく細胞」シリーズ(清水茜/原作)の作画などがある。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
X(旧twitter):@752019

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