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【食通と健康の科学】チーズのカビは、なぜ美味しく食べられる?

忘年会やクリスマスパーティーの季節ですね。すでに職場の仲間や取引先、気心の知れた友人たちとの楽しい会合の予定で、年内がせわしない方も多いことでしょう。
ちょうどこの時期なら、ワインとチーズでお洒落に乾杯しながら歓談するのも楽しいものです。お酒にチーズは最高の組合せですが、このおいしさのヒミツはどこにあるのでしょう。
今回はチーズに関するトリビアをいくつかご紹介します。

2016.12.23
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変幻自在に姿を変える地球で唯一の「おいしいタンパク質」

みなさんは、1日のうちにチーズをどれくらい食べますか? チーズの味は大好きだけれども、おつまみやデザート以外では、実はほとんど食べないという方も多いかもしれません。
国際酪農連盟の2014年のデータによれば、日本人は1年間に約2.2kgしかチーズを食べていないのだそうです。1日に換算するとその量はたったの6g。そのうちの85%はおつまみとして食べられるだけで、家庭料理にはほとんど使われていません。
忘年会やパーティーの季節です。ワインやお酒のおつまみとしてチーズを食べる機会も増えることでしょう。せっかくですから、チーズの「すごさ」をこの機会に堪能してみてはいかが?

  • 電子あり
『チーズの科学 ミルクの力、発酵・熟成の神秘』書影
著:齋藤忠夫

本書の著者で東北大学大学院農学研究科教授の齋藤忠夫氏は、機能性乳酸菌とヨーグルト、チーズに造詣が深く、自他共に認めるチーズ好き。担当する大学では「ミルク大学」と称した講義を行い、1年間の講義の終わりには、必ず学生たちにチーズを食べてもらうのだそうです。
氏によれば、世界にはじつに1000種類以上のチーズが存在するそうです。毎日違った種類のチーズを食べても約3年はかかる計算ですが、齋藤氏曰く「『チーズ三昧』の3年間を送ってみたい」とのこと。
そんなチーズ博士の氏が記した本書は、やさしい語り口で、チーズの歴史やチーズにまつわるさまざまなトリビア、おいしさの秘密などを解説しています。
食の原点は理屈よりもまず「食べてみること」だそうですから、ぜひチーズを片手に本書を読んでもらいたいですね。

Q1.チーズを食べると太るってホント?

チーズの成分は、水分を除けば半分はタンパク質、半分は脂肪です。そう聞けば、とても太りそうな食品に感じられるでしょう。しかし、原料乳の乳脂肪に由来するチーズの脂肪には、動物性脂肪の中でも非常に珍しい揮発性脂肪酸(VFA)である「酪酸」を含んでいますので、体脂肪蓄積のコントロールに役立ち、肥満になりにくい性質があるのです。

また、チーズにとくに多く含まれているビタミンは、脂肪の体内燃焼を促進するため、肥満防止の効果があると考えられています。カルシウムの含量が高いことも、脂肪蓄積を防ぎます。

したがって、ダイエットをしたい場合は、じつはチーズは優れた食品なのです。さらにコレステロールの吸収を阻害するペプチド(アミノ酸が結合したもの)もチーズ中に見つかっており、適量の摂取は生活習慣病を防ぐ効果もあると考えられます。

チーズを食べると太るってホント?

Q2.チーズはしょっぱいから血圧が上がるんじゃないの?

血圧を上げる成分といえば、食塩(NaCl)です。一般的に、チーズには塩分が多いと思われがちですが、じつは意外と少ないのです。含有量が最も多いブルーチーズでも、4.5%以下。エメンタールチーズなどはとくに少なく、1.5%程度です。したがって、ほかの食品と比較しても、とくに塩分が多いということはありません。

一方、熟成の進んだチーズには、血圧を下げる作用を示すペプチド(降圧ペプチド)が数多く含まれています。これらが腸管から吸収されることで血圧を下げる効果が十分に期待できるため、チーズを食べて血圧が上がることは少ないと考えられます。

Q3.チーズの白カビや青カビは食べてもダイジョウブ?

乳酸菌を使って長期間熟成させるだけでもおいしいチーズができるのですが、冒険心に満ちた生物である人間は、乳酸菌以外にカビの助けを借りて熟成させると、いままでにない風味のチーズができることを発見しました。おそらく最初は、カビが生えてしまったチーズをたまたま口にしたのがきっかけだろうと考えられます。

ブルーチーズとは青カビでつくったチーズですが、その産地の1つとして名高いロックフォール(フランス)では、いまも洞窟の中でブルーチーズをつくっていることも、このチーズのなりたちを物語っています。

チーズに使用される白カビや青カビは、ともに有名な抗生物質ペニシリンをつくるペニシリウム属に含まれますが、食用のカビですので、食べても大丈夫です。

食物アレルギーがある人がペニシリンショックを恐れて口にしないこともあるようですが、カビ系チーズに使用されるカビは、ペニシリンをつくるカビとは菌の種類がまったく異なります。だから安心して召し上がっていただいて大丈夫です。

チーズの白カビや青カビは食べてもダイジョウブ?

Q4.チーズには虫歯の予防効果があるってホント!?

チーズと虫歯(専門的には「齲蝕(うしょく)」ともいいます)の関係は、わが国ではほとんど知られていないのではないでしょうか。

かつては、チーズを食べると唾液がたくさん出て、口腔内の雑菌が洗い流されることから、虫歯予防に効くと思われていました。最近の研究では、チーズに含まれるリン酸カルシウムに、虫歯でできた歯の穴を補修する作用があることや、チーズの乳タンパク質がもつ酸を中和する性質に、虫歯の予防効果があることなどが知られてきています。

世界保健機関(WHO)では、硬質チーズの虫歯予防効果はシュガーレスガムと並んで「probable」(高い可能性)に分類されているほどです。しかし、歯磨きをさぼってもよいということでは決してありませんので、過大評価は禁物です。

Q5.チーズに合う飲み物ってどんなものがあるの?

チーズと最も相性のよい飲みものは何でしょうか? 西欧では「運命の出会い」といえるほどお互いに惹かれ合ったものとして、チーズとワインがあげられます。とくにフランスでは古くから、ワインと相性のよい食べものとの組み合わせを、生まれる前から結ばれる運命にあった最高の恋人になぞらえ、「マリアージュ」(結婚)と呼んできました。そしてずばり、チーズこそはワインの最高の伴侶とされ、両者がマリアージュの関係とされてきた歴史があります。

このほか、ビールという選択肢もあるでしょう。

世界で最も日常的に多く飲まれている飲料は、じつはビールです。古くからワインを食卓の酒として決めているのはフランス、イタリア、ポルトガル、ギリシャなどですが、これらの国はむしろ例外なのかもしれません。それほど、ほかの国ではワインよりずっと多くビールが飲まれているのです。日本も例外ではありません。

料理の場合と同様、同じ産地、あるいは産地が近いものの相性がよいとされているフランスの定説を考えると、アメリカやドイツなどのビール大国では、チーズのマリアージュはビールであってもまったくおかしくはありません。

日本酒はワインやビールと同じ醸造酒ですが、これまではチーズとの相性など、ほとんど考えられてきませんでした。しかし、甘口から辛口まで種類が多く、フルーティーな味わいのものもあるので、ワインと同じようなマリアージュは十分に考えられます。実際に、いまでは「日本酒と合うチーズ」といったふれこみのおつまみも、居酒屋などでよく目にするようになりました。

2015年にミラノで開催された「ミラノ国際博覧会」では、多くの日本酒とチーズとのマリアージュが提案され、地元のイタリアの人たちにも大好評だったようです。

チーズに合う飲み物ってどんなものがあるの?

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