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2022.04.03

レビュー

最凶の剣客集団「壬生浪士組」通称“ミブロ”で少年は剣を振るう!

もし幕末に男として生まれていたら、自分は尊王攘夷の志士になったのか、それとも新選組に入ったのだろうかと考えることがあります。
おそらくその時の身分によって、どちらにもなりえたのではないかと思いますが、もし『青のミブロ』の主人公のように、京に住む13歳の男の子だったら……。

白髪で青い目を持つ“ちりぬ にお”は、団子屋を営むお婆さんに引き取られ、血のつながらない妹と3人で店を切り盛りしていました。
そこに客としてやって来たのが、新選組の前身である壬生浪士組の土方歳三と沖田総司。

ある日、におが利発で人を見る確かな目を持っていることに気づいた土方は、「壬生(みぶ)に来て浪士組に入らないか」と言います。
両親を殺された孤児(みなしご)で、団子屋に来るまで散々辛い思いをしてきたにおは、迷ったすえに浪士組に入ります。
「強くなりたい」「世の中を良くしたい」という決意のもとに。

町の人から「悪の集団」と恐れられ、「鬼の棲(す)み家」と言われる浪士組の屯所(とんしょ)にやって来たにおは、土方から「ここでは何が起きてもおかしくない」「気をつけろ」と言われます。

血気盛んな浪士隊の中でも、思わず声を出して笑ってしまったのは、まさかの芹沢鴨(せりざわかも)。

今まで抱いていた新選組のイメージとは違う、男同士の熱い青春を感じるシーンに、さすがシリーズ累計1,300万部の大ヒットサッカー漫画『DAYS』を描いた安田剛士先生と思ってしまいました。

前半のこの明るさがあるだけに、この先に起こる芹沢鴨による仲間の粛清が、より残忍に映るのですが……。

「今、京で何が起きているのかを知りたい」と思ったにおは、見廻りにも臆することなく出かけて行きます。
しかし、三条大橋のさらし首を見て、いくら「正義の天誅」とはいえ、人を殺し、さらし首にした奴が英雄扱いされていいのかと疑問を持ちます。



新選組や幕末を描いた作品は過去にも色々とありますが、その時代を京で過ごした13歳の少年の気持ちになって考えたのは初めてで、それがとても新鮮でした。

この時代、誰もが自分の正義を持っていて、けれどもその結果、私たちの知っている殺し合いや暗殺や戦争に繋がるわけですから、正義って一体なんだろう?
もし自分が壬生の浪士組、壬生浪(ミブロ)に居たらどうしたのだろう? と思わずにおの姿に自分を重ねてしまいました。

実は壬生浪には、におのように京で壬生浪に加わった少年が3人います。
その1人である田中太郎は、芹沢から酷い扱いをされてもそれを受け入れ、見かけとは全く違う、憎しみと狂気に満ちた一面がありました。


そして、3人いる少年のうちのもう1人、斎藤はじめが本格的に登場するのは、いよいよこれからです。
実際の斎藤一は、若くして新選組の中枢を担った男であり、後に警視庁で活躍した人物。この先におは、斎藤はじめとどう関わっていくのか気になります。

当の理由は何だったのか? さらに、におはどんな剣士になっていくのか? これからのミブロが、ますます楽しみです。

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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