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2017.10.05

インタビュー

“壁ドン”を生んだ『L・DK』完結! 累計1000万部のラブきゅんを振り返る

2009年に「別冊フレンド」で連載が始まった『L♥DK』の最終巻(第24巻)が10月13日に刊行される。 主人公は、アパートで一人暮らしをする女子高生・西森葵(にしもりあおい)。その隣に、学校で「王子」と呼ばれるイケメン・久我山柊聖(くがやましゅうせい)が越してきた。しかも、あるハプニングから同居することに……。2014年には映画化(主演/剛力彩芽、山﨑賢人)もされた本作。完結にあたって、著者と担当編集者2人(柳、山崎)が語り合った。

“書体マニア”になりました

 第24巻の原稿作業お疲れさまでした! 最終巻のあとがきでは、渡辺さんが主人公の葵や柊聖たち主要キャラクターについて語っています。その数、20人。「そうだったんだ!」ってびっくりする裏エピソードもありました。最終回で大きな働きをする草樹(そうじゅ/柊聖の兄)はかなり初期からのキャラクターですが、登場したときからラストの展開は決まっていたんですか?

渡辺 そうですね。描くときに最後まで固まってないと安心できない性格なので、ラストシーンとそこに至る流れは連載初期から決めてました。描きたいエピソードを順番に最終巻まで描かせていただけてよかったです。

山崎 約1年前に僕が初めて『L♥DK』の打ち合わせに参加した日も、まずは最終回までの流れの見直しから始まりました。それもかなり詳細なところまで決まっていたことに少しびっくりして。

渡辺 実際に話を描き上げると、思ってもみない動きをキャラクターがするんです。そうすると細かいところが変わっていくので、その都度ラストまで確認しないと心配で(笑)。連載を開始したとき、『L♥DK』は「シンプルに胸キュンできるラブストーリー」にするんだと決めました。それまでの私の作品は、設定をひねろうとして難しい話になりがちだったので、まずはその反省がありました。
でも、連載を続けていくうちに「家族」っていう軸が見えてきて。そのテーマを深く描き進んでいくことと、連載当初からのシンプルさ・わかりやすさを両立させることに、いちばん気を配っていました。ストーリーラインでも、コマ割りみたいなビジュアル面でも。

山崎 「わかりやすさ」は渡辺さんの漫画の特徴だなって、僕は前から思っていて……。とにかく読みやすいんですよね。フキダシや絵の位置が計算されてて、読む順番を考えなくても自然にストーリーが頭に入ってくるんです。

渡辺 わ、ありがとうございます。うれしい(笑)。画面構成はいちばん時間をかけているところです。読みやすくするためにできることは全部したくて。
文字の大きさや書体も重要だって感じて、いまは自分でほぼ全セリフの書体を指定させてもらってます。連載を通して書体マニアになりました。普段の生活でも、目に入る文字の形が気になっちゃって。お気に入りの書体は麗雅宋(れいがそう)です(笑)。

 最終回までの流れは、本当に何度も話し合いましたね。こういうふうに終わらせよう、というよりは、「葵と柊聖だったらこうなるよね」と確認し合うような打ち合わせでした。

渡辺 葵と柊聖のおかげで『L♥DK』という作品が成立しています。この2人は私にとって友達とか家族みたいな存在です。ずっと近くにいて、思考回路もよくわかっていて、葵たちと向き合うことが物語を作ることと同じだったなぁと。最終回は、描きたかったシーンと彼らの感情の流れがぴたっと繫がってよかったです。
最終回までの出来事は決まってましたが、ラストの見せ方は直前まで少し迷いました。これまでの軌跡をモノローグで振り返る、ドラマチックな締め方もあるのかなと。でも、この2人だとそれはちょっと違うかな、って感じて、日常が続いていく終わらせ方になりました。機会があれば番外編も描きたいですね。2人で葵の父親に会いに行く話とか、柊聖の姉カップルのお話とか。

 素敵ですね……! 私はもう、全キャラクター分のその後のストーリーが読みたいぐらいです。みんなそれぞれひとくせあって大好きで。渡辺さんの興味の幅の広さが反映されてるなって感じます。

ラブラブシーンを描くのが本当は恥ずかしい

 毎月の打ち合わせはファミレスに集まって、雑談というかお互いの近況報告みたいな話題から始めるんですけど、渡辺さんの話が面白くてなかなか本題に入れなくて。

渡辺 最近はドラクエXIの話で盛り上がりましたね(笑)。

 ゲーム、お好きですよね。『L♥DK』の中でも、乙女ゲーム(女性向け恋愛ゲームのうち、主人公=プレーヤーが女性のゲームの総称)を題材にした話がありましたね。ゲームについての描写の細かさが大好きで、私はよく読み返してます。第14巻に入ってる「トリコロールに萌えて」の回です。

渡辺 私も思い入れのある回です。楽しかった(笑)。題材が架空のゲームなので、嘘くさくならないようにどう説明するかとか、さらにそこへ葵と柊聖の恋愛をどう無理なく入れていくかとか、そういう面では苦労も多かったんですが。最終的にはいろいろな要素をぴたっとうまくはめられたな、と、実感のある回です。

山崎 僕はあの回、やきもちを焼いた柊聖が、葵に対して大胆な行動に出るところが大好きですね。コスプレ&壁ドン! 渡辺さんは主人公たちのラブラブシーンを描くのが恥ずかしいって、よく言うんですけど……。

渡辺 自分の殻を破らないといけないので、大変なんです。主人公の気持ちの流れに沿いつつ、絵で面白く見せなきゃいけないところが難しいですね。描くと決めたら、楽しく読んでもらえるように振り切って描いてますが。

 すごく楽しませていただいてます(笑)。「壁ドン」は流行語大賞に選んでもらいましたね。ノミネートされてからはほぼ毎日編集部に取材の電話が来て、当時の編集長がテレビに出演して、その報道でまた取材が増えて……。それをきっかけに、新しい読者さんがついてくれたのがうれしかったです。最終巻の帯でもお知らせしてるんですが、『L♥DK』は紙・電子の累計部数が1000万部を超えました。

渡辺 『L♥DK』は本当に多くの方に愛してもらえて、感謝しています。

新連載へ向けて、イチから出直す気持ちでいます

渡辺 それにしても、9年近く休まず走り続けられたのは読者さんのおかげです。渡辺あゆの描いたまんがだから、というよりは、『L♥DK』だから読んでくれていた読者さんが多いんだろうな、とは思っていて、次の新連載はプレッシャーを感じます。イチから出直すような気持ちでいます。
笑って泣けてキュンとする、読む人のいろんな感情を揺らすお話を作りたいですね。物語やキャラクターを伝えたいという情熱は変わらずあるはずなので。

山崎 「はず」だなんて。ありますよ! 弱気にならないでください(笑)。

 新連載、早くお届けしたいですね。チーム渡辺あゆ全員一丸となって、がんばりましょう!

渡辺 ジムに行って体力つけときます♥

渡辺あゆ(わたなべ・あゆ)

2000年に『Secret Heaven』で第18回BF新人まんが大賞入選を受賞してデビュー。主な作品に『元カレ』『キミがスキ』『オトメゴコロ』など

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