虚無を抱えた男の「命を懸けた商談」
そんな思いから明らかにきな臭い見込客にも、会社に隠れて対応する鳥井。しかし、呼び出されたその家は、反社の二人組・風間と耳津による殺人の現場だった。気づけば鳥井は山中で拘束され、銃口を向けられている。その瞬間、鳥井は虚無でしかないと思っていた自分の中の強烈な生存本能を自覚する。
鳥井が口にしたのは、感情的な命乞いではなく「ソリューション営業」だった。
需要は必ず眠っている
この漫画の見どころの一つは、鳥井が裏社会の底辺組織を、一般社会で鍛えた営業スキルで動かしていく過程にある。風間たちの所属する「極凍コンサルティング」は、組織とは名ばかり。ノルマ達成のための戦略もなく、暴力で威圧するのがせいぜいである。
しかし、顧客リストすらない中、鳥井はターゲットを決定する。
さらに、表社会では「マシーン」だった鳥井を、「おもしれーおっさん」と呼ぶ男がいる。殺しの「実行部隊」耳津だ。卓越した心理計算、思考力、度胸で事態を動かす鳥井の異質さにいち早く気づき、あからさまに期待の目を向け、肩入れし始めるのだ。
忌み嫌った天職が、死地で牙をむく
表社会では「マシーン」と笑われた合理主義や計算高さが、裏社会では魅力になり、強力なサバイバルツールになる。鳥井自身、死と隣り合わせの環境で初めて自身の能力の使い道を見出したように見えるのだ。この「本人は嫌気がさしているのに、営業は細胞レベルで染み付いた最強の天職で、裏社会でさらに輝くことになる」皮肉なズレが、鳥井というキャラクターのたまらない魅力になっている。
タイムリミットまであと2週間。いかにして2億円という絶望的なノルマを達成するのか。天賦の才で裏社会に適応しはじめた鳥井の次なる一手から目が離せない。







