生まれて初めてのアルバイト
人気青春小説『恋とポテトと夏休み』シリーズのコミカライズ版である本作(なのでこのマンガの題名も『恋とポテトと夏休み』です)の魅力も、まさに「自分はちゃんと生きていける」と主人公が少しずつ実感していくステップにあります。しみじみいいんですよ。めちゃくちゃ応援したくなる。
舞台は千葉県にあるハンバーガーチェーン店・“Eバーガー”の京成千葉中央駅前店。Eバーガーは物語の中の存在ですが、実際の千葉中央駅を地図で調べると、駅の近くにたくさんファストフード店が並んでいます。本作はお店の雰囲気や店舗でのオペレーションのリアルさも楽しいです。
主人公はEバーガーで人生初のアルバイトを始めた高校1年生の“守崎優芽”。
このバイト向いてないんじゃね?
何より、優芽にとって今通っている高校は「自分が行きたかった高校」ではないことも彼女の毎日をさえないものにしている理由でした。
そんな優芽の目の前に、あの日の新宿幕張高校の演劇で見た先輩が現れます。京成千葉中央駅にいたんです。まっすぐ家に帰るだけの優芽は、思わず彼の後を付けて、Eバーガーの店舗裏口にたどり着きます。そして例の先輩はEバーガーのユニフォーム姿で、優芽を「バイトの面接に来た人」と勘違いして「さあどうぞ中に入って」と案内しちゃう! この場面がすごくいいんです。ワクワクする。
で、そのままなし崩し的に始まった面接で優芽は即採用され、Eバーガーでアルバイトを始めることに。
アルバイト初日、優芽と同じ高校に通う“源拓真”がEバーガーでの仕事のトレーニングを担当することになりますが……?
ちなみにEバーガーの従業員マニュアルを見ると、なんとなく源の姿勢の本質がわかるはずです。
そうはいっても内気な自分に接客業なんて無理だよ、源も怖いし……と落ち込む優芽に、先輩はとてもいいヒントをくれます。
世界が広がる
例えば、同僚の “萌夏さん”との休憩中のおしゃべりで浮かび上がるのは「お母さん」のこと。優芽の母親は、厳格で、菜食主義で、ハンバーガーなんてもってのほか!みたいな調子。だから優芽はアルバイトのことを正直に話せていません。
母に嘘をついてしまう娘の息苦しさも、その娘が内緒のバイト先での休憩中に広げるお弁当も、どちらも私の胸をキュッとしめつけます。でも?
優芽の心の動きに、源や萌夏さんの物語が重なると、優芽や読者である私の世界が少し広がります。あけすけに言葉することなく、感情の小さな揺れを感じさせるマンガです。
もちろん、従業員だけじゃなくお客さんにもいろんな人がいて、胸があたたかくなる瞬間も、カスハラだろ~と腹が立つようなことも、等しくEバーガーには起こるわけです。その全部が優芽の「変わりたい」につながっていきます。








