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2026.06.17

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下品と呼ぶには純情すぎる……エロを“ガチ取材する”漫研ラブコメ『ペンの夢に紅をさす』

エロ真面目って最高だ

夢に向かってなりふり構わず突き進む大学生たちを描いた『ペンの夢に紅をさす』は、本当になりふり構っていなくて、謎の勢いでエロいページを駆け抜けていく。ちなみにほとんど全てのページがエロい絵かエロい単語かエロい状況なので疾走感がものすごい。エロの湿り気を情熱で吹っ飛ばしていく。
物語が始まって早々コレである。ところでこのエピソードのタイトル『下品と呼ぶには純情すぎる』はとても正しい。私は彼らを下品だなんて絶対に言えない、こんな状況なのに! ただただ笑顔になる。

第1話では「見せてくれ」→「無理です」→「じゃあ私のも見せますから」→「なぜ!」……と、粘り強い交渉が展開される。
「では、おっぱいはいかがですか」と食い下がるのは“桃瀬白百合”。彼女は大学の漫画研究会の部長だ。おっぱいを見ることに一瞬同意しそうになる“灰田道則”は漫研の新入生。2人は漫画のリアリティを高めるために、「実物」を見たい&見せないの押し問答をやっている。

見せろ見せろと強く迫る白百合先輩は、どうしてそんなに見たいのか。実は彼女は今とても切羽詰まっていた。
すでにプロデビューもしている白百合先輩が手がける作品は、週刊少年マガジンでは絶対に掲載できない感じのエロ漫画。で、彼女のエロ漫画に登場する男性器には、少し違和感があるらしい。サイズも形状も質感もどこか謎めいており、そこにプロの画力も加わるので違和感が加速している。その違和感はモザイクを貫通してしまうようで、作品にとってマイナス要因となっている。つまり彼女は「実物」を見たことがない。
見たことないなりに涙ぐましい努力を重ねている。だってプロのエロ漫画家なんだもの。そんな白百合先輩の姿勢は、パンツを脱ぐことに同意したくない灰田の胸にも響くようだ。
灰田の夢は少年漫画家。大学在学中にデビューできなかったら漫画家の道は諦めることになっていた。だから、ジャンルは違えどプロとして活躍する白百合先輩は憧れの存在で、真面目に努力し続ける彼女を、とても尊敬している。ただ、いくら尊敬しているからといって、やっぱり美女の目の前でパンツを脱ぐのははばかられるが……?
お互い譲れるところ、絶対に譲れないところを擦り合わせて、どうにかこの問題は解決した。白百合先輩の画力も向上したようだし、おそらく灰田の画力も上がったはずだ。少年漫画では使い所が難しいスキルかもしれないが。

ただ、エロの世界は広くて深く、白百合先輩はストイックなので、これで終わるワケがない。
白百合先輩は、自身の表現の幅を広げてもっと成長するために、男性の乳首の「実際の触り心地」が知りたい! ただ、いくら漫画のためとはいえ無理に触るわけにもいかないので、灰田による全面協力のもと、男性の乳首の代替品を探すことに。何が最も男性の乳首っぽいのか、エロ真面目に検証する。ちなみにコンビニで手に入る「ある物体」に、ひと手間掛けると正解らしい。
乳首を触りはしないが、等身大で比率を確認したくてピトッと当てはする。エロ真面目がすぎる。毎話スレスレだ。

「皆で静物デッサンをしてみませんか?」

全員が自分の納得がいくものを描くために日夜努力を重ねるド根性漫画だが、ターゲットがエロになるととんでもない状況が生まれる。

ある日の漫研の部室はこんな感じだった。
白百合先輩の「皆で同じものを描くってやった事なかったですし」との号令のもと、漫研メンバーみんなで静物デッサン。対象は、リンゴやバナナや箱よりも複雑な形状の、大人の玩具。エッグいしバキバキだが、確かに静物ではある。それぞれが描き上げたデッサン画もこのあと披露される。涙が出るくらい笑った。灰田はよく頑張ったと思う。
こんな潤んだ目で真面目に言われちゃったら、そりゃ頑張らなきゃ!という気になるだろう。灰田もデビューできますように! 下品と呼ぶには純情すぎるエロ青春コメディだ。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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