PICK UP

2025.12.13

レビュー

New

大型ワンコ系男子×強気ちびっこ男子の、インテリアお仕事BL『メイク・ディア・ホーム』

一緒に住んだりとかってナシですか?

「家」ほどその人の考え方やライフスタイルが反映されるものはない。限られたスペースに誰かと一緒に住むなら、「大切に思うもの」も「嫌なもの」も同じ人がいい。大抵の人はそう思うはず。

だけどここに、バラバラの価値観を持ち寄って一緒に暮らすことを決めた2人がいる。『メイク・ディア・ホーム』の蜂矢小晴と熊田大和だ。なんだか、こっちまでドギマギするような空気さえ漂っている。
一体どうしてこうなった?

さかのぼること1ヵ月。それぞれ別のインテリア系企業に新卒で入社した2人は「両社1名ずつのペアになり、会社が用意した物件に住み込んで、自分の住みたい部屋を2人でコーディネートする」という研修を受けることに。物件の採寸や家具選び……やりがいを感じるどころか、1人でイライラしている蜂矢だ。
小柄でツンツン系の蜂矢と、おっとりした大型犬のような熊田。見た目からして正反対の2人だけど、蜂矢がピリピリしているのには別の理由がある。
蜂矢の敬愛するル・コルビュジェはこう言った。「家は暮らしの宝石箱でなくてはならない」。
バルセロナチェアに憧れ、「家は自分を表現するもの」と考える蜂矢には、熊田の家具選びの基準にはポリシーを感じられない。

そんなある日、蜂矢は熊田が思いのほかしっかりした“芯”を持つと知る。偏見と対話の少なさを反省した蜂矢は、2人の目指すものが両方ある「俺たちの部屋」を作ろうと持ちかける。
いっぱい話そう、お互いを知ろう……今度は熊田の距離感の近さに驚きながらも、2人の部屋は研修発表会で最優秀賞を獲得! 浮かぶのは達成感と喜び、そしてなぜか別れがたい気持ち……。
2人は、今度は自分たちの意思で一緒に暮らすことを選ぶのだった。

インテリアコーディネーター見習い男子2人が、「家」という空間を通じて、人の心の奥深くに触れる本作『メイク・ディア・ホーム』。2人が織りなす化学反応と、実用的なインテリア知識が融合して、なんだか自分の“宝石箱”も見直してみたくなる。

だから一緒にやりたいんだ

奇妙な縁で結ばれた新卒2人。まだ会社の案件は持たせてもらえないので、SNSでインテリア相談を募集し、経験を積むことに。
アカウントの立ち上げもそこそこに、行動力とこだわりでさっそく相談者を見つけてきた蜂矢だけど、熊田の何気ない距離の近さにはやっぱりドキッとしてしまう。

それでも、オーダーに応えるべくロジカルにおしゃれで実用的な美しい部屋を作ろうとしているときには、こんな熊田の言葉に素直に耳を傾けるようになる。
自分の“芯”をやわらかな言葉で語れる熊田の前では、相談者だけでなく蜂矢まで、ポロリと本音が出てしまうのがいい。

本作の魅力は、インテリアを通じて人の心に寄りそう姿勢が描かれていること。そばにいる人との「文化の違い」をすり合わせるには、一見価値のないものに思える相手の「宝物」に目を向けることが大事なのだと、相談者の笑顔や、だんだん柔らかくなる蜂矢の雰囲気が教えてくれる。

実用的なインテリア解決法が具体的に描かれているのはお仕事漫画ならではの楽しさだ。
「体格の差が不便にならない2人暮らしの部屋」「姉妹2人が同じ生活用品をそれぞれ持っている家の整理整頓」といった「大切な誰かと暮らす」ためのテクニックは、思わず試してみたくなる。

気にしてるのは俺だけ……?

それぞれが抱える「宝石に見えないもの」をいかに理解し、美しい空間に昇華させるか。この漫画は単なるインテリア・コーディネートを超えた「理解」の物語だと思う。
2人だけの特別な「宝石箱」はどんな空間として完成するのだろう。プロとしての想いと個人的な感情が優しく溶け合う、温かで心躍る展開を期待している。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。

X(旧twitter):@752019

おすすめの記事

レビュー

【神BL×超BL】すべてのオタクに捧ぐ同人誌シスターフッドコメディ!『新刊100億冊ください』

  • コメディ
  • BL
  • ほしのん

レビュー

お前の存在が、何でもない日常を特別にしてくれた。再会ピュアBLストーリー!

  • BL
  • 黒田順子
  • 恋愛

レビュー

こんなに好きなのに、僕らの恋は実らない──。甘酸っぱい青春逃避行BL

  • エンタメ
  • 花森リド

最新情報を受け取る

講談社製品の情報をSNSでも発信中

コミックの最新情報をGET

書籍の最新情報をGET