本作は、そんな「推し活」を軸に、叔母と姪の交流を描いた作品です。主人公は、ブラック企業を退職し、実家に舞い戻った柳周子(やなぎしゅうこ)、29歳無職。実家には、離婚した姉とその娘の柳舞子(やなぎまいこ)、15歳高校生が住んでおり、母と姉、姪との4人生活がスタートしたところから物語は始まります。
幼い頃はともかく、成長した舞とは接点がなかった周子は、気まずさ回避のために積極的に声をかけるも、クールでそっけない舞の対応に落ち込む日々です。
実は周子には、まわりに隠している秘密がありました。それは、趣味でBL同人作家をしているということ。無職となった今、ブラック企業時代には満足にできなかった同人活動に精を出す気マンマンです。
一方の舞。クールビューティな彼女にも、誰にも言えない秘密の趣味が――。
こうしてひとつ屋根の下、ふたりの新たな推し活ライフが幕を開けます
“オタクあるある”描写に思わずニヤリ
舞の「これが私のオタク道」が清い
たとえば、彼女が1万人のフォロワーをもつ神絵師・アジオのSNSをフォローしていることを知った周子が、ある提案をする場面。
さらに、推し漫画『オーバーラック』がシール付きお菓子とのコラボ商品を発売した際のこと。舞の「開封式(※)をやりたい」というリクエストに応え、ふたりはコンビニへ。無職とはいえ元勤め人な周子は、その財力で大人買い。舞の分も買ってあげると提案するのですが……。
※購入した商品をある種の儀式のように開封して楽しむ行為。ランダムグッズの場合は、どの商品が入っているか一喜一憂するというイベント性も付与される。
オタクなら共感!? 笑いの中に潜むエモ描写!
とある理由で落ち込んでしまい、悲しい涙を流す舞。彼女に悩みを打ち明けてほしくて、周子はこんな行動に出ます。
このシーンにクスっと笑いつつも、共通言語を持つ者だからこそ生まれるパッションとアクションに、グッときてしまうのです。キラっと表情を輝かせリアクションする舞、そして「痛オタクムーブしちゃってごめんね…」と謝る周子まで含めて、オタクの愛と友情溢れる1巻屈指の名シーンだと勝手に認定します!
アラサー無職と現役女子高生というコンビ、そして舞のクールビューティ&ガチオタクという、ふたつのギャップが生むグルーヴとともに紡がれるオタク同士の推し活ライフは、葛藤を抱えながらそれでも好きなものを追いかけるオタクの性を描いた、まさに人間ドラマ。
表紙カバーをめくって出てくる本体表紙には劇中作『オーバーラック』1巻表紙が描かれているという、オタク心をくすぐる仕掛けも込みで、推し活経験者必読の1冊です!








