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2025.11.29

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かもし再開! 平成の時代をかもしにかもした『もやしもん』が帰ってきた!!『もやしもん+』

祭りは続く

長く愛されたマンガが最終話を迎えるとき、読んでいるこちらとしては「ありがとう、おつかれさまでした!」と思うが、プラス「お幸せに……!」みたいな気持ちになると、とてもうれしい。『もやしもん』もそうだった。私が読める最後のページはここだけど、私には見えない次のページがあると思ったのだ。

某農大の新年度が始まり、学生自治組織「農志会」が覆面黒タイツ姿でいきなり開催を告げる「第8回春祭」はやっぱりむちゃくちゃで、未来には“沢木”や「けいぞうー」こと“樹先生”は毎年ノーベル賞を獲っちゃうだろうなあ、と。
菌が見える人間こと沢木の農大キャンパスライフと、菌たちの愉快で豊潤な世界。

とにかく、みなさんお達者でねグッバイ……と思っていたら、約10年後に『もやしもん+』が私たちに「続き」を見せてくれるとは。しかも正真正銘、逃げも隠れもしない、ガチンコの続きだ。ぜひ、お手元の『もやしもん』13巻のラストを読んでから、本作に臨んでほしい。というのも……、
あの最後のページから、そのまま続いているのだ。沢木たちが農大の正門をくぐった数秒先が読めるなんて。愛すべき先輩・美里&川浜も健在! ということで、文字通り、祭りは続く。うれしいよ。

ルールは身を以て知る祭り

「菌が見える沢木が農大でチョロチョロ騒ぐ物語」こと『もやしもん+』は、おそらくシリーズ中最もチョロチョロ騒ぐ「春祭」から始まる。
“及川さん”も元気そうで何より。お姿もお社も五穀豊穣っぽさ満点で、さすがミス農大。ちなみに本作の用語解説では参照エピソードが『もやしもん』の何巻に収録されているかも示される。手厚い。また読んじゃうじゃないか!

春祭は、農大スピリットを体現するよい祭りだ。毎回、学生自治組織・農志会の黒チームと、非・農志会メンバーの白チームが「自給自足」を実践しながら、バチバチに戦う。沢木らは白だ。
戦いのルールは玉入れ? 白が負けたら翌日も祭りということは、その翌日も負けたらどうなる?
さすが農学部3年の美里・川浜コンビは春祭の何たるかをわかっている。春祭が単純な玉入れで終わるわけがない
ほらやっぱり! 農志会の策にハマり、わけもわからず散っていく白の学生たち……こりゃ白の晩ごはんは敗者メニュー(農大特製グミ)確定だな。それにしても、どうすれば勝てるのかが、誰にもわからない。

そう、春祭のルールは毎年変わり、かつ、ルール説明はされない。学生らは身を以てルールを知り、サバイブする。

しかも終結するまで学外には出られず、春祭の気配を感じた農大生たちが恋人やバイト先に「3日ほどそちらに行けません」と連絡するのは春の風物詩。食に困ることのない農大だし、これぞ大学自治といった感じで痛快だが、そんなロックダウンをやってもいいのか。
そこは令和仕様にアップデート。本作では、独立国家と化した閉鎖空間(大学内)でマネーとバイオレンスがとぐろを巻いた「第7回春祭」とは少し違うカオスが描かれる。
インテリジェンスと若さと乱暴さが合体した闘争であるところは変わらないのだが、今年の春祭は最新テクノロジーと陰謀がかすかに漂い、レジスタンス精神をくすぐる祭りにバージョンアップ。実に令和のカオスらしい。

そうそう、令和のカオスといえば……、
2020年以降のニュースでイヤってほどその名を連呼されてきたアイツらも! 沢木たちが春祭で駆けずり回るその瞬間にも、菌やウイルスたちは同伴し、ちょこまか活動している。とくに学生寮では彼らがモワ~っと飛び交う姿を拝める。

菌たちの「かもし進捗報告」や、“結城”や“西野”による日本酒のお披露目会も進むなか、春祭のワチャワチャが続く。次から次へと現れる懐かしい顔ぶれにニヤけてしまう1巻だ。
農志会の策略にはまり屈辱の涙を流す1年生のために、農学部2年の沢木、3年の美里と川辺が立ち上がる……!!

ところで、『もやしもん+』の1巻を読むと『もやしもん』もどうしても読みたくなる。とくに前回の春祭を描いた2巻の真ん中あたりを読みたい。当時の美里の浅はかさが懐かしいのだ(沢木の変わらなさっぷりも最高だ。主人公の安定感がある)。『もやしもん+』の農大3年の美里はなんだか頼もしい。あとチア部は今回もカッコいい! で、ちょうど2025年10月に新装版の刊行が始まり、『もやしもん』の2巻も読めるので、そちらもぜひ手に取っていただきたい。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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