作中でも触れていますが、ナチスドイツの戦略として取り上げられることが多いため、ネガティブな印象を持たれるワードでもあります。
本作は、そんなプロパガンダを就職活動の最終選考テーマにした企業を舞台に、2チームに分かれた8人の学生たちが様々な戦略・戦術を駆使しながら競い合う様を描いていきます。
巨大広告代理店の就職試験最終選考は、国民を戦争へと扇動すること!?





・政府側予算はレジスタンスの2倍
・PPで購入できる「情報素材」の活用
・レジスタンスは市民アカウントを使い、口コミが作れる
・各陣営にはひとりずつ、敵陣のスパイが潜入している
このような設定・ルールのもとで、政府とレジスタンスが国民へのプロパガンダを仕掛け、自陣の思惑に沿うよう誘導していく、というのが骨子となります。この「プロパガンダゲーム」を通じて就活生は広告代理店の肝となる宣伝の仕事を知る、そして代理店は就活生の適正を見極める、というのが作中におけるこのゲームの目的とされています。
情報操作、フェイクニュース……現代情報社会が抱える闇を捉えた問題作
今回、2国間で争点となっているは、キャンバスという島の領有権問題。そこで政府側の学生たちは、以下のような方向性を目指します。



人は何に影響されて行動を起こすのか。どんなアクションが人の意思決定を左右するのか。これらの引き金となる戦術を実施するタイミングからその具体的な内容などを細かく描いていく本作を読んでいると、リアルな生活において、私たちは知らぬ間にどれほどのプロパガンダ(宣伝)にさらされているのかと少し怖くなります。
最近でも自治体や参議院、そして先日行われた自民党総裁選といった選挙で、メディアやSNSを中心に様々な情報が広がりました。敵対勢力を貶めるネタ、自陣の評判を上げるニュース。多忙な議員が昼食にコンビニ弁当を食す、といったお決まりのSNS動画もまた、ひとつのプロパガンダと言えるかもしれません(陣営が意図した効果が得られているかは定かではありませんが)。
就活生&人事部社員、個性豊かなキャラクターがゲームの行方を左右する!

そしてゲームのルールを説明する指導社員的な人事部キャラのふたりも油断なりません。特にレジスタンス側担当となった石川は、チームミーティングの際に「政府の犬どもに差をつけられるわけにはいきません」と発言。単なるゲームとは思えないニュアンスに、含みを持たせます。
こうして「プロパガンダゲーム」と名付けられた就活最終試験が走り出したわけですが、それがたとえゲームという設定だとわかっていても、一瞬ゾッとしたのが次のシーン。

漫画というフィクションの世界で起こるあれこれを楽しむ、という枠組みを超えて、自分や周囲を取り巻くこの世界と地続きであり、「宣伝」「情報」というものの扱い方について警鐘を鳴らす本作。まさに今、様々な思惑のもとで流布される情報の洪水に溺れる私たちにとって、これ以上ないタイミングで投下された必携の作品と言えるのではないでしょうか。