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2025.10.13

レビュー

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キスのみを許された男子中学生の欲望はどこに向かうのか?『みんなのキスクラブ』

普通の男子中学生が「キスの沼」に溺れていく

主人公は、クラス一の美少女・青山詩織(あおやましおり)に思いを寄せる持田悠太(もちだゆうた)。
成績は学年で2番とまぁまぁ秀才だが、ほかにはこれといった特徴のない男子中学生だ。

そんな彼が放課後の図書室で自習中、想い人の青山詩織と少しいい感じになる。
詩織の帰宅後、誰もいない図書室で彼女を想い、思わず自慰行為を始める悠太。
しかし、その現場を図書室の奥でサボっていた図書委員の平実果(たいらみのは)に見られてしまう。

平実果は男子の間で話題に上るレベルでスタイルのいい(バストが大きい)女の子。
そんな子にまさかの痴態を見られてしまった悠太は、涙ぐむ(そりゃそうだ)。

しかし、次の瞬間に実果から、あまりに意外な言葉が飛び出す。
ねぇ ウチとキスせん?
激しく動揺したすえ、断ろうとする悠太。
しかし実果は「勃起したら言うこと聞くんよ」と強引にキス。
しかもそのキスがあまりにエロくて上手すぎて、悠太は勃起どころか射精に導かれてしまう。
持田くんの負け
今日から仲間じゃよ
半ば強引に、秘密の「キスクラブ」の仲間入りを強いられることになった悠太。
実果が言うには、単に「気持ちいいキスを探求するだけ」の仲間だという。
部活みたいにルールを作って みんなで気持ちよくなって研究する
キスってなんじゃろうって 
以降、悠太は「ドッキリだ」と騙されて目隠しされた詩織とキスさせられそうになったり、実果の指導の下で、成績学年1位の女子・難波さんを含めて3人でキスしたり……。
ウチね キスがぶち上手(うま)いんよ
誰でもできる 気持ちぃキスのワザ教えちゃる
悠太の青春は、1人の「ちょっと癖が偏った」少女によって徐々に狂わされていく。

本作は普通の男子中学生が、秘密の部活動「キスクラブ」で1人の少女に翻弄され「キスの沼」に溺れていく、背徳の“性春文学”である。

背徳感的にちょうど良く、ときにはSEXより生々しくエロい「キス」

この原稿を書いている今は、2025年9月。
つい先日、Netflixにて「“最高のキス”を求めて、人気芸人たちがアドリブで演技合戦を繰り広げる」という特殊なドラマ『デスキスゲーム』が1位を獲得したタイミングだ。
本作『みんなのキスクラブ』も、ヤンマガWebで総合1位を連発しているという。

ネット配信のドラマや青年誌の中には、もっと過激で直接的な性描写が溢れた人気作品も山ほどある。その中で、キスに特化したこの2作がトップクラスの人気を博していることは、個人的には少しも意外ではない。

簡単に言えばキスは「背徳感的になんかちょうどよく、そのクセ、ときにはSEXより生々しくエロイ」のだ。

「キスだけで、その先がいらなくなるくらい気持ちよくなりたい」という実果。
実果とのあまりに気持ちいいキスに我慢できず「その先」に進もうとする悠太。

作中で実果は、悠太やほかの女の子とキスはするものの、それ以上は決して許さない。
実果は元恋人との関係においてもキスだけで満たされており、その先を求められたときに拒んだことで、別れることになったという。

そして何度となく実果との「極上のキス」を経験しておきながら、本当に好きな女の子である詩織とは、どうしてもキスができない悠太。

おおよそ色気のない青春を送っていた私でも、キスにまつわる切ない思い出は多少なりともあるわけで。
本気で好きであるがゆえに簡単にはキスできない悠太の気持ちもわかる。(それは大抵の場合、若さ故の葛藤であるわけだが、なにせ悠太はまだ中学生だ)

さらに、こんな気持ちを「わかる」と書いてしまう中年男の気持ち悪さに、みずから辟易としてしまう自分もいる。

第7話では、好きな女の子・詩織とのデートで、どうしてもキスができなかった悠太が、ベンチから離れてジュースを買いに行き1人になった瞬間、後をつけていた実果に襲われて、また濃厚なキスをしてしまう。
なんと、そんな決定的な場面を詩織に見つかってしまった場面で、第1巻は終了。
図書室での自慰行為といい、あまりに脇が甘すぎる悠太の行く末はどうなるのか。

なんか、さまざまなトラウマや共感性羞恥を掻き立てられながらもついチラチラ横目で見てしまう、そんな感じの作品に思える。

レビュアー

奥津圭介

編集者/ライター。1975年生まれ。一橋大学法学部卒。某損害保険会社勤務を経て、フリーランス・ライターとして独立。ビジネス書、実用書から野球関連の単行本、マンガ・映画の公式ガイドなどを中心に編集・執筆。著書に『中間管理録トネガワの悪魔的人生相談』『マンガでわかるビジネス統計超入門』(講談社刊)。

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