#地雷系女子と繋がりたい
SNSで「#地雷系」で検索をかけると、大量のハッシュタグが付いた女性のつぶやきが現れる。#量産 #コンカフェ #雰囲気嫌いじゃないよって人いいね #1mmでもいいなと思ったらいいね #自発ください #美男美女さんと繋がりたい #自撮り界隈さんと繋がりたい……。繋がりたい、繋がりたい、と彼女たちは言うけれど、繋がりたいと望まれているのはきっと私ではない。そんな人間が訳知り顔で分かったふうなことを語れば、即座に「うっざ!」と切り捨てられるのだろうと想像する。そのつぶやきに添付されているのは、黒とピンク(もしくは白)を基調とした服を着て、涙袋や垂れ目を強調したメイクをした自撮り画像(=セルフポートレイト)だ。
本作『セルフポートレイト』の主人公「うさぽ」は、常にギスギスしている両親と、友達のいない地獄の学校を行き来して育った女の子。そんな彼女に、初めて「しまちゃん」という友達ができる。それからというもの、しまちゃんに連れられてネットで知り合った子とたくさん友達になり、ボードゲーム店をたまり場にして、うさぽは強くて可愛い女の子へと変わっていく。
そんなある日、うさぽはしまちゃんが自殺したことを知る。しまちゃんに何があったのか知っているという「ろん」から話を聞こうとするのだが、彼女は意地悪な笑みを浮かべて、しまちゃんの死の理由を教えてくれない。そこでボードゲーム店の店長の提案で、理由を話すか話さないか、ゲームをして決することになる。そのゲームとは「自撮りしりとり」(このゲームの展開がとても楽しいので、是非漫画で読んでほしい)。うさぽはこの勝負に勝つのだが、ろんは意外なことを言う。
本作『セルフポートレイト』の主人公「うさぽ」は、常にギスギスしている両親と、友達のいない地獄の学校を行き来して育った女の子。そんな彼女に、初めて「しまちゃん」という友達ができる。それからというもの、しまちゃんに連れられてネットで知り合った子とたくさん友達になり、ボードゲーム店をたまり場にして、うさぽは強くて可愛い女の子へと変わっていく。
そんなある日、うさぽはしまちゃんが自殺したことを知る。しまちゃんに何があったのか知っているという「ろん」から話を聞こうとするのだが、彼女は意地悪な笑みを浮かべて、しまちゃんの死の理由を教えてくれない。そこでボードゲーム店の店長の提案で、理由を話すか話さないか、ゲームをして決することになる。そのゲームとは「自撮りしりとり」(このゲームの展開がとても楽しいので、是非漫画で読んでほしい)。うさぽはこの勝負に勝つのだが、ろんは意外なことを言う。
しまちゃんは···· うさぽのせいで死んだんだよ
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みんなと繋がりたかったうさぽ。
うさぽとだけ繋がりたかったしまちゃん。
そして、しまちゃんとだけ繋がりたかったろん。
その思いが重ならなかったゆえの悲劇。
ここまでが第1話のお話。
うさぽとだけ繋がりたかったしまちゃん。
そして、しまちゃんとだけ繋がりたかったろん。
その思いが重ならなかったゆえの悲劇。
ここまでが第1話のお話。
ライ麦畑でフルスイング
第2話からは、物語の話者が変わる。“うさぽと繋がっていた友達”を通して、うさぽとどうやって知り合い、繋がったのか、回想として語られる。
母から教育虐待を受けていた「コマちゃん」は、SNSでうさぽと知り合った。どんな深夜でも欲しい言葉を返してくれる彼女を心の支えにして、コマちゃんは高校に合格。しかし両親は離婚し、「次は大学受験ね」と毒母が圧をかけてくる。うさぽはそんなコマちゃんの家に現れ、親子3人を縛り上げ「罰ゲームで気絶したり死んだりしたら負けでゲーム終了ね」という恐怖のオリジナルボードゲームを始める。そして勝ち残ったコマちゃんは、うさぽと“繋がる”。
「カナミ」は、ウリをしながら心を病んだDV彼氏とネカフェ暮らしをしていた。そんな彼女を買おうとしていた客を、うさぽがバットを片手に急襲。ふたりは知り合う。うさぽは、カナミに彼氏と別れてほしいと頼むけれど、彼氏に頼られることで自分の価値を確かめているカナミには別れることができない。それからしばらくして、彼氏に変化が現れる。なんでもネットで知り合った東大卒の若手起業家から励まされ、バイトをするようになったのだという……。
実は、その若手起業家の正体は、うさぽと仲間たちがネットに作り上げた架空の存在だった。
母から教育虐待を受けていた「コマちゃん」は、SNSでうさぽと知り合った。どんな深夜でも欲しい言葉を返してくれる彼女を心の支えにして、コマちゃんは高校に合格。しかし両親は離婚し、「次は大学受験ね」と毒母が圧をかけてくる。うさぽはそんなコマちゃんの家に現れ、親子3人を縛り上げ「罰ゲームで気絶したり死んだりしたら負けでゲーム終了ね」という恐怖のオリジナルボードゲームを始める。そして勝ち残ったコマちゃんは、うさぽと“繋がる”。
「カナミ」は、ウリをしながら心を病んだDV彼氏とネカフェ暮らしをしていた。そんな彼女を買おうとしていた客を、うさぽがバットを片手に急襲。ふたりは知り合う。うさぽは、カナミに彼氏と別れてほしいと頼むけれど、彼氏に頼られることで自分の価値を確かめているカナミには別れることができない。それからしばらくして、彼氏に変化が現れる。なんでもネットで知り合った東大卒の若手起業家から励まされ、バイトをするようになったのだという……。
実は、その若手起業家の正体は、うさぽと仲間たちがネットに作り上げた架空の存在だった。
彼氏はカナミちゃんがいなくても大丈夫だし
カナミちゃんは彼氏がいなくても大丈夫なんだよ
そうしてうさぽは、カナミと“繋がる”。
うさぽは、どうして“みんな”と繋がりたかったのか?
うさぽは、どうして“みんな”と繋がりたかったのか?
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本作を読んで想起するのは、小説『ライ麦畑でつかまえて』だ。主人公ホールデンは、あちこちで毒づき、殴られ、さまよい歩く。誰とも繋がれないホールデンは、「自分はあぶない崖のふちに立って、その崖から落ちそうになった子供を助ける、そんな役目を果たす存在になりたい」といったことを言う。
うさぽは、あやうく崖から落ちそうになっているコマちゃんやカナミに手を差し伸べ、繋がり、ボードゲーム店という安全地帯へと導いた。しかし、うさぽはホールデンではない。ホールデンはしまちゃんなのだ。うさぽは、崖から落ちそうになっているところをしまちゃんというホールデンに助けられ、自分もしまちゃんのように“みんな”を助けようと考えた。うさぽはそれを実行するだけの強さを持っていたが、しまちゃんはそんな強さを持っていなかった。それどころか、本当はしまちゃんもうさぽに助けられたかったのだ。そんな彼女の弱さを理解できない強いうさぽは、彼女の死を知って、崖のふちで立ち尽くしてしまうことになる。
そして人生は、ボードゲーム店という安全地帯の中だけで完結しない。
コマちゃんは毒母の元へと帰り、カナミはDV彼氏とヨリを戻した。
うさぽは、どうするのか?
この作品は全6話の1巻で完結するのだけど、ちょっと複雑な物語構造になっている。物語の時間は第1話から最終話までちゃんと順に流れているのだが、第1話のしまちゃんの死後うさぽは姿を消し、第2話から第5話は回想の形で過去の物語が展開し、最終話で再び現在のうさぽが現れる。つまり、第1話から最終話へと話がつながっている。その物語構造ゆえに、少し話が飲み込みづらい部分がある。しかしこの構成でなければ、最終話のうさぽとろんの“しまちゃんを失った”喪失感の大きさと、そこからの次なる一歩は描けなかったと思う。美しく整った短編より、彼女たちの慟哭、叫びを描き切ることに賭けた原作のずいの氏、漫画のザシマ氏の決断に、キャラクターへの最上級の「愛」を感じた。
蛇足かもしれないが、物語のラストに歌を付けるとしたら、ザ・ブルーハーツの『リンダリンダ』を推したい。
彼女たちの未来がドブネズミのように美しく、写真に映らない美しさを湛えることを祈らないではいられない。
うさぽは、あやうく崖から落ちそうになっているコマちゃんやカナミに手を差し伸べ、繋がり、ボードゲーム店という安全地帯へと導いた。しかし、うさぽはホールデンではない。ホールデンはしまちゃんなのだ。うさぽは、崖から落ちそうになっているところをしまちゃんというホールデンに助けられ、自分もしまちゃんのように“みんな”を助けようと考えた。うさぽはそれを実行するだけの強さを持っていたが、しまちゃんはそんな強さを持っていなかった。それどころか、本当はしまちゃんもうさぽに助けられたかったのだ。そんな彼女の弱さを理解できない強いうさぽは、彼女の死を知って、崖のふちで立ち尽くしてしまうことになる。
そして人生は、ボードゲーム店という安全地帯の中だけで完結しない。
コマちゃんは毒母の元へと帰り、カナミはDV彼氏とヨリを戻した。
うさぽは、どうするのか?
この作品は全6話の1巻で完結するのだけど、ちょっと複雑な物語構造になっている。物語の時間は第1話から最終話までちゃんと順に流れているのだが、第1話のしまちゃんの死後うさぽは姿を消し、第2話から第5話は回想の形で過去の物語が展開し、最終話で再び現在のうさぽが現れる。つまり、第1話から最終話へと話がつながっている。その物語構造ゆえに、少し話が飲み込みづらい部分がある。しかしこの構成でなければ、最終話のうさぽとろんの“しまちゃんを失った”喪失感の大きさと、そこからの次なる一歩は描けなかったと思う。美しく整った短編より、彼女たちの慟哭、叫びを描き切ることに賭けた原作のずいの氏、漫画のザシマ氏の決断に、キャラクターへの最上級の「愛」を感じた。
蛇足かもしれないが、物語のラストに歌を付けるとしたら、ザ・ブルーハーツの『リンダリンダ』を推したい。
彼女たちの未来がドブネズミのように美しく、写真に映らない美しさを湛えることを祈らないではいられない。