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2024.08.29

レビュー

欲望がオーバードーズ! 承認欲求あふれるキラキラ大学生のカワイイの裏側──

血と蜜が滴る女の子

欲望を顔に塗りたくったまま表を出歩く人が面白いのは、普通はそんなことなかなかできないからだ。度胸がないのか、無作法だと教わってきたからなのか、そもそもそれが必要だなんて思ったことがないのか、とにかく、欲望は日陰者であり、吐き出すのも浴びるのもコンテンツになる。

『シュガーガールドリップ』のヒロイン・“マリー”は「望み」を隠そうとしない。



SNSでも実生活でも人気者のマリーは「自分の望みはすべて叶える」と何度も言う。マリーの生活はこんな感じ。



なんだかとてもちょうどいい。そしてこれはマリー自らが望んだ人生だ。そんなマリーの口癖はこれ。



「自分の望み」にひどく執着しているマリーの姿に、読者の私は興奮する。SNSも友達も彼氏もそんなに大事じゃない。マリーにとって、それらはあくまで手段であり、彼女の望みは別の所からブクブクと湧いている気がしてならないからだ。それは承認欲求ですらないんじゃないかと思う。

そんなマリーは出会っちゃいけない女の子に見つかってしまう。



マリーが彼女を見つけたともいえるのだけど、とにかく、この2人は血と蜜の味がして、とっても危ない。

コンカフェの陰と陽、店長を殺す

マリーは制服がかわいいと評判のコンカフェでアルバイトを始める。このコンカフェの制服姿でSNSに出たらもっと人気者になれると思ったから。



順調! でも店長がちょっとヘンなのだ。



マリーの性格がよく出ている場面だ。承認欲求モンスターで気に入られるためならなんだってできそうなマリーでも、店長がなれなれしく触ってくることは普通にウザい。

そしてもう1人、マリーには苦手な人物がいた。



コンカフェの先輩店員“アキ”は地雷系っぽさ炸裂で、誰とも目を合わせないし、マリーが挨拶をしても無視をする。

ある日、アキの着いているテーブルでマリーにも指名がかかる。客のリクエストで「あるポーズでアキとマリーのツーショット写真」を撮ることになったのだ。そのポーズは「キス」だった。



本気のベロベロのキスをするアキと、されるがままのマリー。



アキって言われたらなんでもする人なの!? マリーが「私の望む私」になるために毎晩トリートメントを施す髪の毛や、柔らかい唇に、他人に命令されただけのアキが触れるなんて、マリーにはひどく屈辱だった。そして命令されるだけで望みなんてなさそうなアキに、マリーはひどくイライラしていた。

2人のキスシーンはSNSで拡散されていく。マリーがアキを呼び出し「土下座して謝って」と凄むと……?



アッサリ土下座。このマリーの顔を見よ。望み通り相手が土下座したというのに、全然満足じゃない。



他人の望み通りに動いて、自分の望みを持たないアキが、「自分の望み」にとりつかれて生きるマリーには耐えられない。それに、マリーが絶対に思い出したくないことを、ズルズルと思い出させるから。



だからアキのことはマリーが叩き直さないといけない。

こうして始まったマリーによるアキの根性改造計画は、最初は順調だった。



それにしてもマリーはいつだってかわいい。そしてマリーは、自分がやっていることの奇妙さに自分で気がつき始めていた。いつもの自分じゃない。この望みは誰の望み?



そしてマリーをとぼとぼと追いかけるアキもかわいい。

順調のハズだったけれど、2人は思わぬ事件に巻き込まれ、とんでもないことをしてしまう。



あのイヤな感じのコンカフェ店長を殺してしまうのだ。さあ地獄の始まり始まり……かと思いきや、半分は地獄であり、もう半分はそうでもない。なぜならこれは「欲望」の物語だから。

つまり、そこそこの大学、友達、彼氏と同じように、店長の死体はマリーの「望み」の世界で処理されていくのだ。そしてマリーの望みが向かう先はひとつ。



アキだ。自分の存在をかけてでもアキを「望み」で満たしたいのには、理由がありそうだ。それにほら、欲望って、吐き出すのも吐きかけるのも、どっちも快楽なんですよね。

女の子たちの欲望がこれから先どんなふうに膨らんでいくのか、楽しみにしています。

レビュアー

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花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。
X(旧twitter):@LidoHanamori 

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