本作は、そんなフルダイブ系RPGのプレイヤーが主人公。名前は如月小夜(きさらぎさや)。フルダイブ型ゲーム機の最新デバイスである「IMAGINARY」で、『シャドウ・アサシンズ・ワールド』(通称シャドアサ)というゲームをチョイスするところから始まります。
本作における特徴のひとつは、やはり如月のキャラクター。現実世界での彼女は、東京生まれでビジュアルから学校の成績まですべてが平均。ごく普通の一般的な16歳の高校生です。しかし、平均すぎるせいか、学校の出欠確認を飛ばされ、修学旅行では彼女を置いてバスが出発するなど、とにかく影が薄くて存在感がないのです。
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この如月がプレイすることになる『シャドウ・アサシンズ・ワールド』とは、どんなゲームなのでしょう。
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また、同ゲームについては「陰キャぼっち御用達の神ゲー」という評価もあり、これは如月にとって有利なゲームになる可能性も。存在感がなく影が薄い、その特性にピッタリのクラスもありますからね。ということで、如月が選んだクラスはこちら。
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その秘密は、如月がゲットしたスキルにありました。
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これほどのエネミーを欺けるということは、かなりのレアスキル。これは千載一遇のチャンスと考えた如月は、瞬殺されたプレイヤーチームを思い浮かべて一瞬諦めかけますが、それでも心を奮い立たせて《鴉》に立ち向かいます。その勇気の裏にあったのは、これまでの人生で味わってきた孤独と、その孤独を受け入れてきた自分への嫌悪感でした。
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自動ドアにすら気づかれない影の薄さ。きっと如月は、飲食店で「すいませーん」と店員さんを呼んでも誰も来てくれないタイプでしょう。私にはわかります。自分がそうなので笑。「どうせ私なんか」と諦めの気持ちに支配されそうになるけれど、どこかで「これじゃダメだ」と悪い流れに抵抗する、その繰り返しの日々。そんな人生を大きく変えるきっかけになるかもしれない『シャドアサ』との出会い。
ここから如月の『シャドアサ』世界での花形プレイヤーぶりが描かれるものと思いながらページをめくると、ひとりの少女が登場。
最強の暗殺者を決める、『シャドアサ』初の多人数同時参加型イベントが開催されるのですが、そこで如月は、エネミーから必死で逃げるプレイヤーを見かけます。しかし、プレイヤー同士が競い合うイベントの特性上、助けることのリスクを考慮した如月の決断はこれ。
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如月が盾なら、この少女は矛となるのか。この出会いは、物語、そして如月のクロとしてのゲームライフをあらたなルートへと導いていく……そんな気配をビンビン感じさせてくれます。
現実世界ではネガティブなエピソードばかりの「影の薄さ」が、『シャドアサ』の世界では大きな武器になる。この地殻変動によって得た経験が、もしかしたら現実世界の自分をも変えてくれるかもしれません。
欠点だと思っていた部分が、別の場所では利点になることもあるという、人生におけるひとつの可能性にも想いを馳せることができる本作。如月が繰り広げるゲーム世界での大逆転劇と、彼女自身の成長物語を、影の薄さには自信のある私を投影しながら見守りたいと思います。