「売れないと死亡ですから」
ファッション業界のお仕事マンガということで、着道楽としては絶対に読まねばと思った『アパレルドッグ』は期待以上に熱くてリアルで働く人の胸に刺さる。喉の奥に石が詰まったようなプレッシャー、アドレナリンが出すぎて脳がフル回転しているのか静止しているのかまったくわからなくなるあの瞬間、そして働きまくってクタクタになった体に少しだけ漂う充足感。全部ある。
本作では、着道楽なりにうっすら予感していた「アパレル業界のハードさ」が存分に描かれる。手加減なしの弾丸のようだ。しかも果てしない。
そんな彼の魂が垣間見えるのが、ソラトの自宅だ。
この美しい部屋を思うと、彼が自分の仕事に向ける愛憎と焦りがヒリヒリ伝わってくる。
そんなソラトの仕事に転機が訪れる。
本作では、「服の売れない時代」なんていわれる現代に君臨するアンノワがいかにすさまじいブランドであるかが何度も描かれる。
さて、アパレル戦国時代の王者ことアンノワに立ち向かうべく、ミシロはメンズを新たに立ち上げることに。一世一代の大勝負だ。ソラトは社運をかけた「ミシロ・メンズ」のMDを任されるも、顔は真っ青。なぜなら、ソラトにはメンズが「負け戦」だとしか思えないから。
『アパレルドッグ』は登場人物のファッションも見どころで、それぞれの人となりが伝わってくる。なにより眼福! 表紙では、ストライプのフリルジャケット(25000円)とレースシャツ(8990円)とラインパンツ(12000円)をミシロ社員たちがそれぞれ着こなしていて最高だ。
負け戦にしか見えないと散々渋るも、ソラトはミシロ・メンズのMDを引き受けることに。というか会社員に選択肢はないのだ。会社に所属し続ける限り、降ってくる仕事は基本的により好みできない。イエスかハイだ。
スケジュール、予算、客層の実態、ミシロらしさ、ライバル店の動向……使える情報はすべて使って、そして自分の信念を灯りのように見つめながら、ソラトはミシロ・メンズの戦略を練り上げる。








