私たちは奇跡の中にいる
宇宙人は存在すると思いますか? 映画やドラマには頻繁に登場する宇宙人はファンタジーの産物なのでしょうか。もし「宇宙人は、この宇宙にいるの?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか? 「いるわけがない」? それとも……?
『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑 宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』の著者である国立天文台教授・本間希樹さんは、この問いにこう答えてくれます。
無数の恒星が集まる銀河・天の川の中には、地球以外にも生物が暮らせる環境の星があってもおかしくなく、「宇宙で文明を持つ生命体は地球人だけ」と考えるほうがむしろ難しい……。
夢のある答えだと思いませんか。それなら、私たちは文明を持った宇宙人と交流することはできるのでしょうか? その疑問への、本間先生の答えはこう!「いるけれど会うのは難しい。なぜなら4万年かかるから」
最も近い星に宇宙人がいるとして、そこに行くとしても4万年もかかる。宇宙はあまりにも広大です。観測機器の進化も著しい近年、宇宙についてのさまざまなことがわかってきており、民間企業の宇宙分野への参入も相次ぐなど、宇宙は今、「新教養」になりつつあると言われています。それでもまだ知らないことや想像もつかないことが多いのは、その広大さゆえかもしれません。
「私たちの体は、星のかけらでできています」
私たちの宇宙は今から約138億年前、無限に小さな点から始まりました。
天の川は、本当に流れています。
この本には、こんなふうに思わず人に話したくなるような驚きがたくさん詰まっています。宇宙の始まりから、ブラックホールや天の川といった天体、時間や暦といった身近なことまで、宇宙に関する61個のQ&Aをわかりやすい見開きで解説しています。
宇宙の成り立ちを知ることは、私たちの生命の成り立ち、ひいては今の自分の存在の「すごい!」を知ることにつながるのです。
「私たちは今、奇跡の中を生きているのかも」。そう思わせてくれる、地球のこと、命のこと。その奥深さに触れてみませんか?
宇宙を支配する「力」の話
重力は、月も太陽も、私たちが暮らす地球も、宇宙そのものを支配する力です。
重力は物質どうしが互いに引きあう力ですが、それが宇宙と何の関係があるの?と思いますよね。しかし、重力は現在の宇宙の姿を決めるうえでもっとも重要な役割を果たす力です。月が地球のまわりを回るのも、太陽のまわりを地球が公転するのも、私たちが地球で生活できるのも、すべては重力のおかげ。しかし、その理由をきちんと説明できる人はそう多くないでしょう。
この本では、「重力」が太陽系に及ぼす影響を漫画で見せてくれています。
ここからの数ページで、「太陽系はなぜ、その形を保っていられるのか?」「地球に生命が誕生したのはなぜなのか?」「太陽系をはじめとする銀河の中心には何があるのか?」が、すんなり理解できるようになっています。後の章で紹介される宇宙のあれこれにも、意外な形で重力が関係していることもわかります。「重力」を頭に入れてこの本を読み進めることで、宇宙に対する理解がより深まるのです。
思わず話したくなる「宇宙の話」
第3章「星と銀河」は、星の誕生と死の繰り返しである「宇宙の歴史」についての章です。銀河や星、ブラックホールなど、神秘を感じる学びがあります。冷たいガスの中でたくさんの星が生まれる「馬頭星雲」や、
見えないけれど確かに存在し、その重力によって宇宙誕生直後に銀河が生まれた「ダークマター」といった存在を知ることができます。
なかでも、とても興味深いのがこの「マルチバース」ではないでしょうか。
この本を読んでいると、私たちの暮らす地球の環境は、人間にとってまさに奇跡のような幸運の上に成り立っていることが分かります。そんな「人間にとっての素晴らしい環境」がなぜできたのか、次のように考えたのが「マルチバース宇宙」です。
科学者たちは「神様が決めた」と考えることを避けたいので、かわりに「条件の異なるいろんな宇宙があって、その中の人類が誕生しやすい宇宙で私たちは生まれた」と考えます。
宇宙は、まだまだわからないことだらけですが、だからこそこんなにも面白く、私たちの心を湧かせるのでしょう。「マルチバース宇宙」のように、科学者たちがあらゆる可能性を否定せずに宇宙に関する研究を進めていることも、私たちがそんなワクワクを感じられる理由の一つかもしれません。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
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