Twitterの中の人、と呼ばれる方々がいます。(いまはXですがあえてTwitterと呼ばせてください)。いわゆる企業アカウントを運用している人なのですが、企業の“公式”アカウントでありながら個人のようなゆるい呟きが楽しく、私もフォローしているアカウントがいくつかあります。
その元祖とも言うべき方が「シャープさん」ではないでしょうか。
その呼び名からわかる通り、大手家電メーカーSHARPの公式Twitterアカウントを運用している中の人です。公私が入り混じった世間話のような呟きはPRっぽくないPRとして拡散されており、SNSのPRに携わる端くれの私としてはすごいなーと見上げる雲の上の方です。
そのシャープさんがマンガサイト「コミチ」で連載している漫画時評のコラムをまとめた1冊が本作です。
コミチで公開されたマンガから1作品選び、その作品から感じたことを始点にしたシャープさんの思考を覗(のぞ)くことができます。そのコラムはまさにタイトルのように、ちょっとしんどいなって感じている気持ちにそっと「共感」という息継ぎをさせてくれるようです。
例えば、私が特に刺さったコラムは「推すは難しい」「言語化」「罵倒と称賛のアンバランスな世界」。
マンガが好き、という気持ちを抱えて一念発起し、マンガに関わる記事執筆やPRを始めた私にとって「好きなモノやコトを第三者に伝えるのって難しいよね」ということを、視点を変えつつシャープさんが寄り添ってくれることに何度も何度も頷きました。
褒め言葉ってもっと多様性や自由があっていいよね。
好きを伝えるにはまず自分自身を深く覗き込まないといけない。
言語化って省略と抽象化と時間の圧縮なんだよ。
シャープさんが語りかけに、ですよね! わかります! なるほど!と合いの手を入れながら読み進めていく感覚は読書というよりも、二次会の居酒屋でほどよく打ち解けておしゃべりをしている感覚に近いです。
気心知れた仲間でも飲み始めよりも、数時間経ってからのあの感じ。愚痴を言ったり聞いたり、それに対して共感したり提案した経験はありませんか。
あの時間を過ごしたあとは、何だか心が軽くなって明日からも頑張れそうだなと感じていました。
スマホを手放せなくなり、SNSが生活に溶け込んでいる私たちが「ちょっとしんどい」と思っていること、あるいはしんどいとも気づいていなかったことを、それこそ言語化してくれるシャープさん。言語化され、それを読むことで自分自身の気づきとなり、一度立ち止まって深呼吸ができる余裕が生まれるような気がします。
あとがきでお笑い芸人ロザンの宇治原さんが多くのコラムに共通しているのは「優しさ」だと仰っています。その優しさに甘えてみるのはいかがでしょうか。いまこのレビューを読むため、片手にもっているそのスマホを置いて。
……と、ここまで書いてやはり感じることは、ちゃんと本作を推せているのだろうか、オススメしたい気持ちを伝える言語化ができたのだろうか、ということです。
レビュアー
ライター。フリーランスで働く1児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
Twitter:@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier