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2023.02.28

レビュー

1億6000万年以上にわたって地上を席巻した恐竜たちは、なぜ大量絶滅したのか!?

豊富な画像と丁寧な解説でひも解く「中生代」の謎

一度は世界を支配するほど繁栄しながら、こつ然とこの世から姿を消してしまった、謎多き存在であり、今もなお多くの子どもたちの心を掴んで離さない。それが恐竜です。私も幼少期に、恐竜の図鑑をなんども読み、両親に連れられて恐竜の博物館にも足を運びました。ティラノサウルス、トリケラトプスにプテラノドン、ブラキオサウルスやステゴサウルスと、キラ星のごとく登場するスター恐竜たちに夢中になったものです。

『カラー図説 生命の大進化40億年史 中生代編』では、著者である土屋健氏が、爬虫類の時代であり、また恐竜たちが活躍した時代ともいえる「中生代」について、研究者たちの言説を参照しつつ、迫力のイラスト、そして化石や復元骨格の写真など210点を超えるカラー画像をふんだんに交えて丁寧に解説しています。

中生代とは、今から2億5200万年前に始まり、約6600万年前まで続いた時代。約1億8600万年間におよぶこの時代は、恐竜を含む爬虫類の時代とも言われ、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀の3つに分けられます。三畳紀を「再開」、ジュラ紀を「隆盛」、そして白亜紀を「大繁栄」の時代と捉え、各時代に分けて詳しく解説していきます。

中生代のスター・恐竜を知る

陸海空、それぞれに生息エリアを広げる様々な生物たちの生態やその進化について取り上げていくのですが、やはり主役となるのは、スター勢揃いの恐竜たちです。

ティラノサウルスの顎の力を数値化したら、現生のアリゲーターの約10倍のパワーを持っていた、あるいはステゴサウルスの背中にある骨の板は武器としてだけでなく体温調節の役割もあった、といったスターたちの特徴や生態もつまびらかにしています。

なかでも興味深かったのが、「格闘恐竜」というニックネームで呼ばれる化石。草食の恐竜である「プロトケラトプス」の首筋に、狩人である「ヴェロキラプトル」が自身の後ろ足の鉤(かぎ)爪を突き刺したまま、化石となっているのです。

まさしく、ヴェロキラプトルによるプロトケラトプス襲撃の瞬間を捉えた標本とみられている。このとき、プロトケラトプスもただ襲われるままだったわけではなく、ヴェロキラプトルの右腕をしっかりとくわえこんでいた。恐竜たちが生死をかけた格闘をしていたときに、近くにあった砂丘が崩れたのか、あるいは、砂嵐に襲われたのか……いずれにしろ、瞬間的に砂に埋もれ、そのまま化石として保存されたようだ。

こんな迫力ある劇的なシーンが化石として残っていることに驚くとともに、日々行われていた弱肉強食の世界の営みにも思いを馳せてしまいます。

恐竜化石多産国・日本

かつて「恐竜化石は見つからない」と言われていたという日本ですが、実はたくさんの恐竜の化石が発掘されています。

2022年に報告されたばかりの「パラリテリジノサウルス」や、福井県で発見され「フクイラプトル」と名付けられた大型肉食竜などいくつもの化石が発掘されていますが、特に紹介したいのが、北海道のむかわ町で発見された「むかわ竜」こと「カムイサウルス」です。化石の保存率が8割を超え、世界でも最高峰の大型恐竜化石として注目されています。

また、この化石が海から発見されたという点も重要。一般的に陸よりも海のほうが化石の年代特定がしやすいそうです。進化を考える際に、「いつ」というのはとても重要なファクター。そのため、保存率が高く、かつ年代の特定もしやすいカムイサウルスの化石は、今後の研究におけるひとつの基準となりえる有望な存在なのだそう。

議論は続くよどこまでも

中生代の生物たちについて、その生態や骨格の復元など、今なお議論や研究が続いています。たとえば白亜紀半ばに北アメリカにて生息していた「スピノサウルス」は、二足歩行か四足歩行か、また陸で生活していたのか、それとも水中に生息していたのかなど、活発な議論が現在進行形で展開しています。

本書の中ではたびたび、こうした学者や研究者による論文や研究発表などを取り上げながら生物たちの進化を解説していくのですが、ここ10年の間、あるいは2022年に発表された説も多数紹介しており、最新の研究成果が反映された内容となっています。

幼少期に憧れた恐竜について、「ティラノサウルス、カッコいい!」「ブロントサウルス、でかい!」で止まっていた知識を数十年ぶりにアップデートしようと手に取ったのですが、まさに今、議論が続いている最新の研究・分析に触れられるのも、大きな魅力。

また、本書ではスターたる恐竜だけでなく、カメやワニ、さらにはアンモナイトやカブトガニといった名脇役たちの興味深い進化や生態もひも解いています。

中生代の生物とその研究自体の「進化」を“目撃”することで、恐竜をはじめとするロマン溢れる多種多様な生き物たちの息吹に思いを巡らせてしまう……そんな体験ができる1冊です。

レビュアー

ほしのん イメージ
ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
twitter:@hoshino2009

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