シリーズ累計発行部数450万部突破の『はたらく細胞』。その公式スピンオフ『はたらく細菌』が、今度は青い鳥文庫でも読めるようになりました。
マンガでは断片的にしか読んだことがなく、なんとなく乗り遅れてしまった私でも、イチから楽しめる内容です。
腸内の菌の理想的なバランスは、善玉菌20%、悪玉菌10%、強い方に味方する日和見菌(ひよりみきん)70%。
人間の腸内では、いつも激しい「陣取り合戦」が行われています。
偏食家の女子高生である「宿主(やどぬし)」は、野菜嫌いでいつも肉ばかりを食べるので、善玉菌が5%にまで減少してしまいました。
そこで一気に陣地取りに動き出したのが、悪玉菌であるウェルシュ菌のリーダー、ウェルシュ。
ウェルシュの子分たちは、お肉に含まれる動物性タンパク質が大好物で、これを腐敗させ、体によくない物質を出すのが得意。
だから、いつもゴポゴポと不気味なガスを出すタンクを背負っているのですが、ついに真っ黒なバズーカ砲が一斉に放たれました!!
そうです! くさ~いオナラです!!
たちまち町はウェルシュたちの支配下に。
しかし翌日にはきれいに整備された善玉菌の町によみがえっていました。
「宿主」が野菜を食べたからです。
善玉菌の1つであるビフィダム菌のビフィダムは、王子様のような気品を漂わせ、真っ白な軍服を身にまとっています。
ビフィダムが率いているのは、強力な軍隊。彼らは食物センイを分解して作る「酢酸」や「乳酸」を放ち、悪玉菌を溶かしてしまうのです。
と、ここまではなんとなく理解していました。人間の腸には善玉菌と悪玉菌がいて、善玉菌を増やした方が体には良いということを。
しか~し、日和見菌って何? しかも大人の腸内で一番数が多いのが、この日和見菌だなんて!!
しかも、悪玉菌がはびこる時には悪玉菌の仲間として振るまい、善玉菌が優勢になると善玉菌に早変わり。
様子を見ながら強い方につくなんて、人間だったら嫌なヤツですが、実際に自分の体内でこれが起こっているかと思うと、「いいか、善玉菌に加勢しろよ」と腸に向かって念を送りたくなるから不思議です。
もしかしたらこれが、マンガで見るのと文章を読んで頭の中でイメージする違いかもしれません。
この本を読んでいるとなぜかヨーグルトが食べたくなるし、お肉を食べるとウェルシュが喜んでいるだろうなと想像し、「早く野菜を投入せよ!!」と私の心が指令します。困ったもんだと笑いながらも、野菜を食べる機会が増えました!!
また、今回特に驚いたのは、腸内環境は遠く離れた頭皮にも影響を及ぼすということでした。
頭皮にも善玉菌、悪玉菌、日和見菌がいて、「マラセチア菌」は皮脂が大好物、肌荒れの原因にもなる要注意の悪玉菌だというのです。
つまり美しい髪やツヤツヤの肌を望むなら、まずは腸内環境を整えることが大事だとわかりました。
さらに「O(オー)-157」など大腸菌=悪玉菌だと思っていましたが、「大腸菌」の中にはビタミンを作る日和見菌もいるというのです。
その名も「ラクトバチルス菌」。
こうした聞き慣れない菌の名前も、マンガ版『はたらく細菌』に登場したお馴染みのキャラクターたちが出てくるので、イメージしやすいです。
恥ずかしながら、自分の体のことなのに知らないことばかりで驚きました。
もっと早くに知りたかったな、と言うのが本音です。子供のころに得た知識と習慣は、大人になっても残っているからです。
だからこそ、「細菌」のはたらきを楽しく学べる『はたらく細菌』は、多くの方に読んで欲しいと思いました。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp