今まで様々な犬の本を読んできましたが、この本がほかと違うのは、ニュージーランドという土地で、大型犬を2頭同時に飼う暮らしがどんなものであるかが見られるところです。はっきり言って憧れの生活です。
でも、そこには海外ならではの笑いもあります!
著者のマーティンゆうさんは、東京で3年、シンガポールで7年、銀行員として働いていました。
旅行で訪れたニュージーランドの南島にあるワナカに惹かれ、2001年に移住。かねてからの夢だった大型犬を飼うことに。
生後4ヵ月のラブラドール・レトリバーの女の子、クロエちゃんを迎え、早速、湖でボートに乗ります。
ところがここで、とんでもないことが起こるのです。
これは、想像していなかっただけに笑いました!
クロエちゃんからしてみたら、ママも一緒に遊んでいる、と映ったことでしょう。
さすがニュージーランド!! 犬と一緒に近所の湖に行くというシチュエーションからして日本とは違うのですが、もっとニュージーランドらしいエピソードがこちら。
ラブラドール・レトリバーの名前の由来である「レトリーブ」は、「獲物を回収する」という意味だそうで、思わず納得してしまいました。
日本の住宅事情を考えると大型犬を飼うこと自体大変なので、2頭を同時に飼うなんて夢のまた夢。
しかし、ゆうさんはクロエちゃんを迎えた2年後には、弟か妹を迎えようと思っていました。
そして新しく家族に加わったのは、同じラブラドールの男の子・エビス。
ところが、クロエちゃんは……。
犬って、こんなにストレートに気持ちを表現するのですね。
この先どうなることやらと思っていたら、エビスがやって来てから4日目の夜、クロエちゃんの方からオモチャをくわえてエビスに近づいて行ったそうです。
クロエちゃんは、とても面倒見のいいお姉ちゃんで、エビスもお姉ちゃんが大好き。これ以降、2頭は片時も離れない仲良しになりました。
悲しいことに、動物を飼うと必ずやってくるのは別れのとき。
この本はタイトルに「シニア」と付いているだけあって、だんだんと老いていく愛犬の様子や、それを目の当たりにしたときの寂しさや切なさ、そして愛しさが描かれています。
耳が遠くなってきたクロエちゃんを驚かさないよう、ゆうさんが取った行動は……。
食いしん坊のクロエちゃんらしい。
しかし、尿崩症(にょうほうしょう)を患い、1日に4リットルの水を飲むようになると外に出たがらなくなり、ゆうさんと目さえ合わせなくなったそうです。
そんなクロエちゃんを見ていたエビスは……。
いつも一緒だった2頭なのに、いつしかクロエちゃんの方からエビスを避けるようになり、エビスもクロエちゃんの跡を追うのをやめました。
飼い主と愛犬の別れはほかの本でも読んだことがありますが、犬同士の別れの儀式は初めてだったので、この行動は切なくなりました。
後に、エビスが亡くなったときの話も載っていて、気づけば涙が止まらず。
愛犬が旅立ったときの悲しみは、本当に言いようがありません。何年経っても忘れられないものです。
でもそんな辛い思いもこの本を読めば、きっと癒(いや)されるに違いないと思いました。
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ブログ「羊の国のラブラドール絵日記シニア!!」はこちら。
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レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp