ほんと、だれの子?
2020年は世界中の動物園のSNSと動画を追いかけた。長期休館中でも動物たちはみんなむしゃむしゃとごはんを食べ、赤ちゃんだって次々に生まれる(そして彼らを精一杯お世話する飼育員のみなさんがいる)。命ってすごいなあ、どの赤ちゃんもみんな「赤ちゃん!」な空気をバンバン出してて面白いなあ、そんなことを思いながら画面越しに元気をたくさんもらった。
『だれの子? マジで違いすぎ! 動物親子写真図鑑』には29種類の動物の親子が登場する。私は1人で読んで大盛り上がりだったけれど、親子で読むのも絶対楽しいだろうな(漢字にふりがながついています)。
だって構成がとってもいいのだ。楽しい。まず、バーンと赤ちゃんの写真がでます。
ザ・赤ちゃんな姿。かわいい。ヒントもちょっとある! さあだれの子でしょう? ヒナの隣に親のものと思しき足がシュッと伸びてますね。「首も足もすごく長いあの鳥」と言えば“あの鳥”を思い浮かべるけど……?
次のページをめくると親が待ってます。
フラミンゴだったの!? 実はツルかなーと思ったんですよ、赤ちゃん時代は真っ白けだし。あんな真っ白なヒナが、どうしてピンク色に? そもそもなんでピンク色? 右下の「どうして?」という大きな文字の先に答えが待っている。
食生活のせい。しかも、あの美しいピンク色は、モテの要素でもある。なるほど、そりゃせっせとピンク色になっちゃうね。ちなみに、フラミンゴといえば片足でシュッと立ってますよね。あの理由も解説されます。
そして親子一緒の写真でフィナーレです。
全然違う姿だね。でも、ヒナの首の傾け方が、親と比べれば短い首とはいえフラミンゴっぽいかも。親鳥が寄り添っている姿もかわいい。……ああ、全方向的にかわいい。
こうやって一組ずつ親子を紹介していく本だ。「だれの子かなー?」と想像しながら読むととても楽しい。当たったり外れたり、意外なことがいっぱい待っている。
ヒントがいい。私、この子のお父さんお母さんにシンパシーを感じる。
本書は北海道の旭山動物園園長の坂東元さんが監修を務めている。大人も子どももワクワクするような解説を、わかりやすい言葉で語ってくれる。
動物は、子育ての仕方によって、親と子で色や模様が違います。子どものからだは、敵に見つかりにくい色だったり、群れの仲間が「自分たちの子どもだ」とわかるための模様だったりします。
また、色や模様は「野生種」と「家畜種」で違います。
(略)イノシシやダチョウなどの野生動物の親と子の色や模様の違い、すがたの違いから自然のなかでの生活を想像してみてください。
人間に飼われているイヌやヒツジなどの家畜種は、人間の好みの色や模様、すがたになっています。
コウテイペンギンの赤ちゃんはどうしてもふもふなの? ずっともふもふじゃだめなの? シロフクロウ、子ども時代はシロフクロウって呼びづらい! ヒグマは大人になるとどうしてあんなに大きくなるの? こんなふうに「見た目が違いすぎな親子」、「色が違いすぎな親子」、「大きさが違いすぎな親子」の秘密が明かされる。
こーんな小さな赤ちゃんが、あんな立派な姿に成長するなんて……。
ああ、ずっと見ていたい。おかあさんトナカイにもツノがあるんですね。初めて知りました。
どの動物もみんなかわいいので、おもわず「ふふっ」と笑ってしまう。そして、みんないろんな工夫を凝らして子育てをしているんだなと感動する。坂東園長の次の言葉にも胸が熱くなる。
動物園では、多くの命が誕生し、たくさんの命が死んでいきます。生まれた命はかならず死で終わります。だから命のバトンを子につなぎます。いま、これを読んでいるみなさんも、いま、みなさんのまわりにいるスズメも、いま地球に生きている生き物は、すべて命をつなぎつづけて、いまを生きています。そして、生き物たちはこれからも命を育み、未来につないでいきます。
命っておもしろい。動物園に行って、たくさんの生き物と赤ちゃんたちに会いたくなる1冊だ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。