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2019.06.21

レビュー

泣ける!と話題。さまざまな動物たちの命と向き合うどうぶつ病院物語。

中学生になったら

中学生になったみなさんは、「児童」ではなく「生徒」と呼ばれます。この「呼び名チェンジ」を中学校の入学式初日に聞いてビックリした。そのあと心身ともに激変して、こりゃおんなじ名前じゃダメだと納得したのだけど、あのふんわり落ち着かない気持ちは今でも思い出す。

『ゆずのどうぶつカルテ~小さな獣医~こちらわんニャンどうぶつ病院』の主人公“森野柚”ちゃんも、小学生から中学生になったばかりの女の子。

なんでこんな話をしているかというと、本作の前に、ゆずちゃんが主人公のお話があって、当時ゆずちゃんは小学5年生だったんです。そして本作では少し成長して中学生の女の子に。読者と一緒に成長していく主人公っていい。でも、本作から読み始めても大丈夫です。(私は先にこっちを読んで、そのあと前作を読んでいます)



作品の題名のとおり獣医さんを目指すのかな。なってほしい。

中学生の女の子が見つめるどうぶつ病院での毎日

舞台は“青空町わんニャンどうぶつ病院”。犬も猫も小鳥もうさぎも登場します。みんなコロコロにかわいい。



ゆずちゃんはここで獣医の“叔父さん”のお手伝いをしながら暮らしています。



「いろんなことがあったの」と子供が言うとドキッとする。本当にいろんなことがあったのだろうな、と思うから。主に動物病院を訪れるペットとその飼い主さんとのドラマがいろいろとありました。たとえば、大好きな犬を甘やかしすぎちゃう女の子、盲導犬候補の子犬を育てた男の子……どれも「現実にありそう」なお話ばかり。

今回もそんな「現実にありそう」な動物と人間とのお話が、中学生になったゆずちゃんの目線で語られてゆきます。



猫ヘルペス、知りませんでした……。少女まんがって恋や魔法だけじゃなく「猫ヘルペス」のことも知ることができる。幅広い。こんな風に、動物にまつわるうれしいこと、知らなかったこと、そして悲しいことも、ぜんぶ逃げずに丁寧に描くのが本作の持ち味です。

一緒におおきくなって、年をとる

たとえば「ペット介護」の話。



ゆずちゃんの中学校の“鈴香センパイ”と愛犬“マーチ”は、生まれた時からずっと一緒で、同い年の仲良し。(センパイって呼び名も中学からだったや)



犬で14歳といえば高齢で、介護が必要な年頃。


老犬をサポートする方法が詳細に描かれます。そして、ここからもう一歩踏み込むんです。


受験勉強もしたい、でも介護もしなきゃいけない……。きれいごとじゃないペットの老化を中学生目線でシビアに描いています。



そう。そもそもこれが辛い。



ボロ泣きだ。ペットを飼っている人はみんなこれを心のどこかに置いている。こういうお話をまっすぐ優しく描いています。あー、思い出しても泣いてしまう。

見習い獣医さんと、小さな獣医さん

そして、本作から登場するイケメン研修医“ハッチ先生”もイケメン的な意味だけでなく、大切な存在です。



ゆずちゃんにとって身近なお兄さんといった感じ。本作はゆずちゃんだけじゃなく、ハッチ先生の成長物語でもあるんです。



獣医師が叔父さんとハッチ先生の2人体制になったのもあって、より獣医さんのシーンが充実しています。「絶対治ってくれー! 頼む──!」と応援しながら読んでしまう。獣医師のお仕事を間近で手伝いながら、ゆずちゃんがどう成長していくのか楽しみ。2巻も楽しみに待ってます。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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