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2021.04.28

レビュー

出社すれば評価される時代はもう終わった! コロナ後に生き残る人、捨てられる人

気のおけない友人と酒を酌み交わすこともできず、卒業式も、入学式もままならない世界が始まってから気づけば1年経ちました。
これからの時代をアフターコロナというかウィズコロナというべきかはまだわかりませんが、「普通」という概念は大きく様変わりしました。「ニューノーマル」です。

テレワークしたり、直接会うことを控えたり、といった感染機会を減らす行動様式であるということは皆さん理解していると思います。しかしそれによって起きる様々な変化にまでは、なかなか想像がつきづらいのではないでしょうか。
そういった変化を明確に解説したこれからのマニュアルとも言える本が、本稿で紹介する『「ニューノーマル」最強仕事術』です。

たとえば、仕事の基本、報連相。我々はずっとそれの大事さを知っているはずなのに、何のためにやるのかを忘れていました。
それはチームのメンバーが常に顔を合わせていたから、言わなくても空気でわかってもらえるだろうという甘えがあったり、移動の合間や休憩の時の雑談でマイクロな情報共有ができていたりしたからにほかなりません。
しかし、それが当たり前ではなくなった今、これからの報連相について、本書ではこのように解説しています。

優れた報連相をすることは、これまで以上に、評価を上げるインパクトになります。

と。つまり報告は義務からサービスへと性質が変化して、義務から上司への情報提供サービス、さらには自分の仕事ぶりを上司にプレゼンする場へと変化し、受け身から能動的な姿勢へと切り替えていくことが重要になるとのことです。

なるほど、確かに自分の成果を「目で見て」もらえなくなるわけですから、適切なアピールが重要になってくるわけですね。
とはいえ、ある程度仕事がわかってきた中堅社員ならまだしも、いきなりこのような状況に放り出された新人には仕事ぶりのプレゼンなんて難しくてそれどころではないと思います。そこで、本書では、結果報告から中間報告に重きをおくことを勧めています。これならば、新人でも取り組みやすいのではないでしょうか。

 「報告は終わった結果を伝えるもの」こう考える部下の方々は多いのですが、上司の考えは違います。上司にとって結果がでてからの報告は「受け止めて、聞くしかない」もの。特に結果が悪かった時には、反省会しかできません。

確かに、事後報告で失敗や遅延を告げられたら上司的にはたまったものではありません。新人サイドはなんとかするつもりだったとしても、上司サイドとしてはもっと早く言ってよ……となる辛い状況、きっと誰しもが身に覚えがあると思います。

一方で、途中経過を報告してもらえば、アドバイスをして事前に問題を回避できるなど、手が打てます。また、部下のアウトプットを受け取り、それを使って、上司がワークするような場合もあります。そういうケースで、部下の仕事の進捗がわかれば、その後の自分自身の作業スケジュールが組みやすくなります。

確かに、状況を正確にマネージャーに伝えられていれば、ベテランをカバーに回したり、後工程の調整を行ったりと、上司の本来の仕事ができるようになります。
そこで、新人くん用の報連相のタイミングとしては、以下のタイミングで報告を行う、という例があげられています。

状況に変化があったとき
納期までに時間のかかる仕事の区切りの時点
終了のメドがついたとき

ここで、報告にサービスという性質を持たせるにあたり重要なのは、「先回りして情報で人を動かすようにすること」なのだと理解できるようになったらもう、一皮向けた人材になれているのではないでしょうか。

たとえば、課題に対する相談一つとっても、丸投げで上司や同僚に考えさせる相談ではなく、解決案をセットにすることで、相手がジャッジするだけで済むようにコミュニケーションを組み立てておくように、きちんと区切りをつける習慣をつける、とでも言いましょうか。

濵田秀彦氏による本書は、「ニューノーマル」にあたっての仕事の様式や、マインドセットを明快に解説した、いま一番求められる「お仕事本」と言っても過言ではないでしょう。

いわゆるテレワーク本ではない

「ニューノーマル」を語るにあたり、早合点しそうなポイントとして「テレワークのやり方とかマナーの本でしょう?」といったところがありますが、本書はこれをいい意味で裏切ってくれます。
雨後のタケノコのように乱発されたテレワーク本のような、マナーやツールの使い方ではなく、仕事の内容に合わせたツールの選定、それによって起こり得るコミュニケーションの齟齬、そしてそういったミスコミュニケーションを防ぐための方法などが丁寧に解説されています。

新生・社会人向けビジネス書

本書で解説されているのは「そんなのわかっているよ!」と言いたくなる基本のキのことなのですが、コロナショックで様変わりした社会を前にすると、基本のキが驚くほど肚(はら)落ちすることに驚きます。
身も蓋もないことを言えば、「やりにくさ」は対面によって得られるメリットがなくなったことにより「甘え」が許されなくなったからなのではと感じます。
いずれにせよコロナが収束しようと共存する社会になろうと、今までの世界には戻れないし戻らないという認識を持って、 ニューノーマルに相応しいマインドセットを持ってこれからの世界に臨まないとこの先の未来に暗い影を落とすのではないか、そんな印象をもちました。

その点からも、初心に帰って本書で基本を押さえにいくのは重要だと言えるでしょう。
繰り返しになりますが、本書の中で解説されている仕事に対しての姿勢やサバイブ術などは、コロナショックが起きる前から求められ始めた労働環境の変化や、安定した雇用が約束されていない先行き不透明な社会を生き抜くためにずっと語られていたことではあります。
そして今、否応なく変化を求められる出来事が起きました。どうすればいいかわからなくなってしまったあなたに、本書はきっと役立つ手引きとなることは間違いありません。

レビュアー

宮本夏樹 イメージ
宮本夏樹

静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、オンラインメディアのプランニングとマネタイズで生計を立てる。マンガ好きが昂じ壁一面の本棚を作るものの、日々増え続けるコミックスによる収納限界の訪れは間近に迫っている。

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