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2020.08.20

レビュー

基本は2つ! 面接、交渉、人間関係ですぐ使えるコミュニケーション術

あなたは臆病者ですか?
日本人なら多くの人が「はい」、そう答えてしまうような質問でしょう。
自分で考えて、発想して、でも社内や学校でそれをうまく人に伝える勇気がない。間違っていたら恥ずかしいし反論されるのも怖い。どうしようどうしようと考えている間に時は過ぎ、その話題は終わってしまっている。「あの時でも言っていればこの仕事は変わったのかな」「自分の人生や生活が変わったのかな」そう振り返りながらも淡々と月日は流れていってしまう……。

著者の藤島氏は「私も皆さんも臆病者なのです」と言います。
「電通でコピーライター、クリエイティブディレクターをやっていたような人が、そんなの嘘でしょ?」と私も思いました。電通の社員なんて華やかで積極的で明るくて、前にしゃしゃり出ていくような強さがなきゃやっていけないでしょう……? というイメージを持っていました。

でも藤島氏は

こう書いてくると、初めからコミュニケーション能力が高く、物おじせず海外でもばりばり働き、創造力もある人間と思われてしまうのですが、実態はまったく反対なのです。新入社員時代の私を知る方はみな、大いに心配していたと言います。今でも、心配してくれている先輩もいます。
社内コミュニケーションも上手く出来ず、自信もないくせに(自信がないからこそ)、突っ張ってみたり。クライアントに意見してみたり。クライアントの笑いを取ることも、胸の内を慮ってあげることも出来ません。バランスの悪い対応力でしかなく、さらに周りをハラハラさせます。

という方らしいのです。まさか?
でも本書を読み進めるうちに、著者の丁寧に単語を選び繊細に言葉を紡いでいく様子に、本当に臆病者(と言うかセンシティブな方)なんだなと感じてきました。自分のアイデアをキラキラした舞台で披露できる人が羨ましいと憧れ望む気持ちの強さが、そのコンプレックスを打ち砕き職業にできるまでになったのでしょう。
だからタイトルにある「臆病者」という単語に反応し、この本を手に取り円滑なコミュニケーションや華やかな舞台に憧れを抱く人こそ、その「羨ましい」「そうなりたい」という熱量で、そして持ち前の繊細さを活かしてコミュニケーションやクリエイティブの世界を担っていけるのではないか。確かにそう思わされました。

1.コミュニケーションやクリエイティブに特別な資質はいらない! 原則さえ守ればいい!
「さあコミュニケーションを図りなさい」「クリエイティブになりなさい」、突然そう言われても何をどうしたらいいのかわからず右往左往してしまいます。
ですが、広告でも映像でも面接でも会議でも原則はたった2つとのこと!
「What to say」と「How to say」だけなんですって。そして「What」を決めてから「How」に取り掛かるのも大事だそうです。

何を、この場面で伝えるのかという「What to say」である的を明確にして、その的を射抜くための矢である「How to say」に工夫を凝らす必要があります。

「目的」である「What to say」に優先順位を付け引き算をする。
そして「How to say」でその目的を叶える。この2つの原則は非常に大事なのですが見落とされがちだそうです。つまりこの2つさえしていればもう大丈夫!

2.臆病者は観察力が磨かれる。だから伝えられる。
伝える前提には「聞く」があるんだそうです。確かに。
臆病じゃない人は「私は」「俺は」とガツガツ伝えてばかりかもしれません。でも臆病者は慎重で繊細で相手に寄り添い全体を俯瞰することができます。臆病者だからこそ相手の気持ちや言動に敏感に反応し相手のことを聞くことができます。
聞くと、相手は寄り添ってもらえている空気感を感じ心地よくなります。そしてさらに伝えてくれる。とても幸せな循環が出来上がりますね。
臆病者たちよ、相手の話をたくさん聞いて引き出してみましょう。臆病者だからこそできる大きな強みです!

3.この不確実な時代に、コミュニケーションは羅針盤に、クリエイティブは灯台になる!
新型コロナウイルスの終息が見えないこの時代、筆者が言うには

まさにVUCAの時時代。V=Volatility(変動して)、U=Uncertainty(不確実で)、C=Complexity(複雑で)、A=Ambiguity(曖昧な)世界が広がっています。コミュニケーションがますます大事になります。コミュニケーション力が問われています。
変動しない、確実で、シンプルで、明確なコミュニケーションがあれば、この時代を渡っていけます。コミュニケーションはVUCAの大海原を航海するための羅針盤となります。

なんと力強く勇気のわく言葉でしょう。

クリエイティブ、創造する力は誰にでも与えられた資質だそうです。
著者の会社のブランディングの方法として「北極星を見つける」ということが紹介されていますが、著者個人の北極星は「お役に立つ」。いかにも臆病者らしい優しい世界だとしみじみ感じました。
臆病者の皆さんが自分の北極星を見つけ、揺るぎない明確なコミュニケーションを図っていく。それだけでこの不確実な世界を生きていくには明るい材料となります。

「自粛警察」「マスク警察」、逆に「コロナは風邪で怖くない」説の人、もしくは世の中への不満・恐怖・怒り、そういうものがうずまき今までにない過激な言葉がSNSやニュースサイトに溢れていて恐怖に飲み込まれそうになります。
一般市民だけではなく政治も専門家も混乱の渦の中にいてどこへ進むべきなのか迷っています。
どうかコミュニケーションとクリエイティブの力が平和と豊かさを取り戻してくれますように……そう願いながらこの本を何度も読みました。
広告やビジネス関係なく、この不確実な世の中を生きる全ての臆病者たちの枕元にこの本を置いておきたいと思いました。

レビュアー

野本紗紀恵 イメージ
野本紗紀恵

一級建築士でありながらイラストレーター・占い師・芸能・各種バイトなど、職歴がおかしい1978年千葉県生まれ。趣味は音楽・絵画・書道・舞台などの芸術全般。某高IQ団体会員。今一番面白いことは子育て。

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