「インソールがほしい」と思ったら、どこへ買いに行くのが正解だろうか。書店員時代の私は、長時間の立ち仕事がたたって足裏を痛めた時、近くの靴屋と百貨店へ探しに行った。医師の指示の下、藁にも縋る気持ちで買いに行き、使ってみたら驚くほど歩くのが楽になったことを覚えている。
その後、専門店や100円ショップなどで買ったこともあったけれど、まさか書店で売っているとは考えもしなかった……! 灯台下暗しとはまさにこのこと。「本屋さんって何でも売ってるんだなあ」と、間の抜けた感想を抱きつつ手にした本書は、30ページほどの書籍部分と、箱に収められたインソールがセットになったつくりだった。まずは書籍を箱から切り離し、説明を読むことにする。
ページを開くと目に入るのは、「超厚インソール」の特徴と使い方について。少し眺めただけなのに、予想していた以上に本格的な雰囲気が伝わってきた。急いでインソールも箱から取り出してみる。さらっとした表面は肌触りがよく、裸足で触れても気持ちがよさそう。裏面は白と黒で凹凸が加工され、かかと部分はかなりの厚さ。指で押してみると、しっかりとした反発力を感じる。なるほど、誌面から受けた印象は確かだった。
次は、自分の足に合わせて実際にインソールをカットする作業へ。実はこの工程が苦手で、以前に一度、切りすぎて買いなおしたことも……。だが、そんな私をフォローしてくれるかのような1文がきちんとあった。
まず自分の靴のサイズより1センチ大きいサイズのラインに沿ってカットし、かかとの位置を合わせながら靴に挿入。つま先の余っている部分を確認したら取り出して、少しずつ(3~5ミリずつ)カットしながらサイズを合わせていきます。
これは親切設計! さっそく裏面を見ると、サイズごとの曲線がわかりやすく引かれていた。指示通り、その表示から自分の足の大きさに近いところまでを切り出していく。
ちなみにインソールを入れる靴としては、基本的に「甲の高さを調節できる」もの、すなわち紐靴が推奨されていた。そのため最初はスニーカーへ入れてみたが、厚めの中敷きが取り出せないタイプだったためか、履いてみるとかなりの浅履きに。この反省を生かし、次は中敷きを取り出せるフラットな革靴で再挑戦。今度はうまくはまってくれた。
つま先を切りすぎないよう、はさみで少しずつ調整する。かかと部分よりも柔らかく作られた先端部分は、見た目よりも切りやすく、作業自体10分もかからず終了した。苦手だと思っていた工程なのに、あっさりと終わって拍子抜け。見やすくわかりやすい説明が、こんなに頼りになるとは思わなかった!
そして肝心の歩行。本書内では、足の運動機能や姿勢などについても説明があった。それらを頭に浮かべつつ歩いてみると、普段と違う部分に力がかかっていることに気がついた。私はもともとO脚気味で、靴の外側だけが減るパターン。そのため、できる限りかかとから親指に比重を置いた歩き方を心がけてきたのだが、長年うまくいかなかった。その歩行法が、インソールを入れただけで、できるようになっている……!?
とはいえ、歩き始めは身体が新しい歩き方に戸惑いを感じたのか、少しぐらつくこともあった。慣れていくと、徐々に背筋や内股の筋肉も伸びてきて、全体に歩きやすくなっていった。足裏への力のかかり方も新鮮で、「こう歩けばよかったのか!」と、初めて掴(つか)めたコツに歩くのがどんどんと楽しくなっていく。インソール1枚でここまで変わるとは思わなかったし、使い始めた人が続けて使いたくなる気持ちにも納得がいった。
本書の説明はコンパクトながら、足のメンテナンス法や足の異常の見分け方などについてもしっかりと触れられている。自身を支えてくれる足の癖と現状を知り、これからの日々に向けてのケアへとつなげるためにも、まずは内容を読んでからインソールを使用し、新しい歩き方へ挑むのが近道。ぜひ、お試しあれ。
レビュアー
元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。