肌トラブルといえば、幼いころに抱えていたアトピーだ。とはいえその症状も歳を重ねるにつれ緩和され、今では季節の変わり目に手足が少し荒れる程度で済んでいる。だから近年は悩みもなかった。化粧品売り場のビューティアドバイザーさんから「何かお困りは?」と聞かれても特に浮かばず、顔の肌チェックをしてもらっても適正値であることが多かった。
そのため最初は「一週間で肌が変わる」というタイトルを眺めても、腰は重いまま。だが、帯にあった女性の写真とセリフを見て気が変わった。「私も美保さんに救われたひとりです」──その言葉を寄せていたのはなんと、フリーアナウンサーの田中みな実さん。「え! あの肌を支える方法が書かれているの!?」そう思ったら、途端に興味が湧いてきた。
本書は女性雑誌『VoCE』での連載「人生が変わる美肌塾」を基にし、著者が自身やサロンのカウンセリングで実践してきたメソッドを、わかりやすくまとめて解説している。実は著者自身、20代の頃にはメイクを厚塗りし、刺激の強いクレンジング剤でゴシゴシと洗い落としていたという。その結果傷んでしまった肌には自信が持てず、写真に写るのも嫌だったそう。だが思いがけない転機によって、今の洗顔法と出会うことになる。
私の肌が改善したきっかけは、洗顔とクレンジングでした。
ちょうどまつげエクステサロンの開設にあたり、
私自身もまつげエクステをつけ始めたため、
洗浄力の高いオイルクレンジングをやめたのです。
さらに、エクステが取れないようにそーっとそーっと洗うようにしたら、
急激に肌が乾きにくくなり、くすみも改善。
毛穴も目立ちにくくなるなど、たった一週間で効果を感じたんです。
「必要は発明の母」と言われるが、こんな発見が現在の著者のツヤ肌を生み出すきっかけだったとは! それもたった1週間で。おかげで先がさらに読みたくなった。ちなみにここまでのお話は「序章」の前に書かれているので、私のように連載を知らなかった者にも、著者像がわかりやすく簡潔に伝わってくる。
さて石井式メソッドの最重要ポイントは、「摩擦を避けること」にあるという。序章では、力強いこの一言が真っ先に掲げられていた。
こんなに大きい文字で書かれた言葉を目にするのが久々で、圧倒されてからふと気づく。普段それほどこすっているつもりはないけれど、「徹底して」ということは、いったいどれくらい気を付ければ「こすらない」ことになるのだろう──。自分の洗顔法との違いを確かめるためにも、ページをめくる。
本書は全6章の構成になっている。中でも第1章「まず一週間、石井式“摩擦ゼロ洗顔”を始めましょう」と第2章「保湿を見直しましょう」は、その2つだけで全体の半分近くにわたるページが占められていた。いかに著者がその洗顔法とメンテナンスを重視しているか、気迫がビシバシと伝わってくる。そして、「洗顔・クレンジングの摩擦ポイント」チェックと、具体的な洗い方が語られる。
「30回以上のすすぎ」という文字を見て、目を見開いた。ふだんはおそらく10回程度しかすすいでいない。洗顔料はかろうじて泡のタイプを使っているものの、さらに読むと、「ピンポン玉3個分の泡をたっぷり使って、モフモフ押し洗い」せよとある。手は顔と垂直に動かし、横にはすべらせない。「徹底してこすらない」って、このレベルなんだ……!
ただ、ここで思い出したことがあった。アトピー治療の時に、皮膚科の医師から言われた言葉だ。「スポンジを使うと肌が荒れるので、せっけんやボディーソープを泡立てたら、その泡で身体を洗うように」。以来、私の肌荒れは落ち着いている。医学的な見地からの指導と石井式メソッドが、こんな形で繋がるとは。あくまで個人的な体験だが、なんだか腑に落ちてしまった。
話を戻すと、この後に続く「基本の洗顔」やすすぎ方を読んで、実際に洗顔法を変えてみた。水を顔の左右へ移動させず、垂直につけることで泡を落としていく。30回を数えたところで試しに顔を上げると、それでも泡が残る部分もあった。すすぎの重要性を思い知る。お手入れ後は肌が明るくなった気がするし、何よりツヤ感のもちが良くなった。洗顔料やローションの使用量は増えたけれど、高い化粧品を買うことに比べればはるかに安い。
そして何より、自分の顔をこれほど丁寧に扱ったのは初めてだった。ローションを入れ込むごとに、肌がもっちりと手のひらに吸い付くたび、愛しくもなったほど。思っていたよりも繊細、でも方法を変えてみたら応えてくれた自分の顔。紫外線も強くなるこれからの時期に向けて、より一層ケアに励んでみたい。
レビュアー
元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。