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2019.04.06

特集

ぼくはヨハネス・フェルメール──絵本で辿るフェルメールの人生と暮らし

■キュレーター林綾野さんの絵本で辿るフェルメールの人生と暮らし

キュレーターの林綾野さんは、「画家と食」をメインテーマに研究を続け、これまでに『モネ 庭とレシピ』『ゴッホ 旅とレシピ』 『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』などの書籍を刊行してきました。そんな林さんが取り組んでいるもうひとつの本のシリーズがあります。それは、画家の人生を繊細で愛らしいイラストとともに綴った絵本です。今回は、林さんの絵本とともに、フェルメールの人生と暮らしを辿ってみましょう。

フェルメールの祖父は贋金つくり!?

フェルメールの人となりに触れたいという思いから、その故郷デルフトやデン・ハーグを訪ねて調査を重ねた林さん。その成果のひとつが、絵本『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』です。古文書館を訪ねてフェルメールや一族の記録を辿るなど、丁寧なリサーチに基づく林さんの絵本には、びっくりするような事実が、さらりと登場してきます。

ぼくのご先祖さまに どんな人がいたのかもわかります。
おじいさんが 偽物のお金を作って
大変なさわぎをおこしたこと。
おばあさんが たくさんお金を使い込んでしまったこと。

「どうやらぼくのうちには 変わり者が多かったようです。」とありますが、どんな家からフェルメールのような画家が生まれたのか、その一端が垣間見えて、とても面白いです。

フェルメールはどんな家に住んでいたか?

「フェルメールはどんな間取りに住んでたのかな?」なんてことは、頭をよぎったこともありませんでしたが、そこはさすが好奇心旺盛な林さん。デルフトのアウエ・ランゲンデイク通りに暮らしていたフェルメールの家の間取りを、絵本で再現してみせました。

キッチンには牛乳を注ぐ女性がいて、玄関を入った部屋にはたくさんの絵が掛けられ、居間では義母がくつろぎ、2階ではフェルメールが画布に向かい、隣の部屋では妻が手仕事……。屋根裏には画布や絵の具などの画材も置かれています。

この絵本を見ていると、ここがフェルメールが暮らした空間なのだという実感を抱かせられるのですが、それは、部屋に置かれた品々がどれも文献に基づくものだということによるのでしょう。

「美しいこの世界を絵の中にしるしていくこと」

絵本では、フェルメールが活躍していた当時のオランダがどのような状況にあったのかも丁寧に語られています。他のヨーロッパ諸国に先駆けて市民社会が成立したオランダで、宗教画や神話画よりも、人々の日常を描いた風俗画が好まれたということにも触れられていますが、そこで終わらないのが、この絵本の特徴。「では、どうしてフェルメールはあんなに美しい絵を描いたのかな?」と、豊かなイマジネーションで画家の気持ちに思いを馳せているのです。

おだやかな光で満たされる室内
そこにたたずむ女性 耳元に揺れる真珠
デルフト焼のピッチャーや果物
ほうきや靴 洗濯カゴや紙くずまで
何もかもが 等しく 優しい光に照らされている。

ぼくは そんな情景を深く愛していました。
美しいこの世界を 絵の中にしるしていくこと
それが 画家の仕事だと ぼくは信じていたのです。

丁寧なリサーチに豊かな想像力を加味した情熱的なアプローチで、画家を現代に浮かび上がらせる林さん。『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』、そして『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』を読んでみると、きっとフェルメールの見方がかわるはずです。そして林さんも運営に携わる「フェルメール展」では、30数点しかないフェルメールの現存作品のうち、9点もの作品が来日中。ぜひ足をお運びください。

『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』表紙画像

『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』
作:林 綾野 絵:たんふるたん

古文書に残された史実をもとに、フェルメールの暮らした家、街、家族への思いを探り、人生をたどる物語絵本。全作品35点を収録。

『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』表紙画像

『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』
著者:林 綾野

フェルメールの名画の解説に加え、当時のオランダの食や暮らしの情報が満載の1冊。フェルメールが食べたかもしれない17世紀オランダのレシピや、昔ながらの料理法を受け継ぐ現代オランダ料理のレシピ合計16点も掲載。

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キュレーター林綾野さんの絵本で辿る フェルメールの人生と暮らし

出典元:https://kurashinohon.jp/946.html

林 綾野(はやし あやの) イメージ
林 綾野(はやし あやの)

キュレーター、アートキッチン代表。 美術館での展覧会企画、美術書の企画、執筆を手がける。新しい美術作品との出会いを提案するために画家の芸術性と合わせてその人柄や生活環境、食への趣向などを研究。著書に『フェルメールの食卓』 『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール』(講談社)などがある。

『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』(講談社)

『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』(講談社)

フェルメール展【大阪会場】
会期/2019年2月16日(土)~5月12日(日)
会場/大阪市立美術館
https://www.vermeer.jp/

『フェルメールの食卓』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。

講談社くらしの本はこちら

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