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2018.11.16

インタビュー

京極夏彦×高田崇史 初対談「記録と記憶の記号論~百鬼夜行、QED」(1)

10月28日、『文庫版 ルー=ガルー 忌避すべき狼』(京極夏彦著)『古事記異聞 オロチの郷、奥出雲』(高田祟史著)の刊行を記念して、東京ミッドタウン日比谷で開催された、京極夏彦と高田崇史のトークイベント。人気作家ふたりの初対談は創作活動の裏話満載で、会場は大いに盛り上がりました!

(対談を全3回で連載いたします)

【第1章】ふたりの人気作家はこうして生まれた!

高田 僕は今年、デビュー20年目なんです。正確には12月で20周年。京極さんは25周年ですよね?

京極 1994年9月に『姑獲鳥の夏』が刊行されたので、25年目に入ったところですね。

高田 実は僕、デビューする前に京極さんのサイン会に行ったことがあるんです。

京極 ホントですか!? サイン会って、あまりやってないんですけど、いつ頃でしたか?

高田 『鉄鼠の檻』のサイン会で、新宿紀伊國屋本店でした。長蛇の列で、僕も並んでサインをいただきました。京極さんの後ろにはポスターが貼ってありまして、そこに「遅くなってすみません」って書いてあったんです。あれを見たときから、「京極さんって優しい人なんだ」と思っていました。

京極 あれには事情があるんですよ。僕は講談社に原稿を持ち込んでうっかりデビューしてしまったんですが、1作目が世に出る前に、2作目を3ヵ月後に刊行しましょうと版元に言われまして──。

高田 ひどい会社ですね(笑)。

京極 3ヵ月ってすぐですよ。でも、まあ初仕事だし、できるだろうと思って書いたんです。そうしたら「次もまた3ヵ月後に刊行しましょう」と言われて。

高田 ますますひどい会社ですね(笑)。

京極 仕方ないから書きました。それまでは連絡先を公開していなかったのですが、3作目の刊行日に情報が解禁されまして、そしたらその日のうちに他社から仕事のオファーがありましてね、普通(仕事を)受けますよね?

高田 受けますね。

京極 お仕事をいただいたら「ありがとうございます」と言ってお受けするのが外注先の摂理ですよ。で、注文された順番に仕事をしていったわけですが、講談社ばかりやっているわけじゃないから、そりゃ、遅くなりますよ。3ヵ月では出せませんよね。ほかの仕事もしてるんですから。それでまあ「遅くなってすみません」(笑)。

高田 僕も講談社から「3作までは絶対うちで書いてくれ。他では書くな」って言われて、そのままズルズルきたら、いつの間にか「高田さんは講談社でしか書かない」って嘘の噂が流れてたんですよ。

京極 それ、偽計業務妨害にあたるんじゃないですか(笑)

高田 今考えるとそうですよね(笑)。

京極 そんなひどい会社の主催のイベントなんですか?

高田 そういえば、この対談タイトルはどういう意味なんですかね?

京極 「記録と記憶の記号論~百鬼夜行、QED」……大丈夫かなあ(笑)。高田さんと僕は、読者のみなさんから見て、ジャンル的にはそんなに遠くないと認識されているんじゃないかと思うんですね。「お化け」とか「神社」とか、昔の話を書いているし(笑)。でも、作品をつくる過程はかなり違うんですよね。

高田 そうなんです。つい最近、お話ししたときにはじめてわかったんですよね。作品へのアプローチ以外では共通していることも多いと思いますが。 京極さんは、子どもの頃はどんな本を読んでいましたか? 先日、有栖川有栖さんとお話しする機会があって、小学生の頃、エラリー・クイーンの『エジプト十字架の秘密』を読んでたって話したら、有栖川さんもまさに同じ本を読んでいて、その話の後にわざわざネットで買い直したそうなんです。

京極 子ども向けのでしょ?

高田 そうです。

京極 エラリー・クイーンでしょ?

高田 そうです。

京極 エジプト十字架の……

高田 秘密です。

京極 謎じゃなく秘密ね。僕もそれ読んでました!

高田 本当ですか!

京極 クイーンはそれが最初だと思う。間違いなくそれ、読んでます。あかね書房の推理・探偵傑作シリーズかな……いや、横尾忠則装丁の少年少女世界推理文学全集のほうですか?

高田 そうです、そうです。全20巻で、なんと川端康成監修。

京極 ハイカラな本(笑)でした。

高田 豪華ですよね。今でもうちにありますよ。

京極 うちにもありますよ。

高田 有栖川さんんの家にもありますよ(笑)。

京極 僕の場合、初めて買った文庫が芥川龍之介の『侏儒(しゅじゅ)の言葉』とブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』という変態ですからね。子ども向けの江戸川乱歩作品と柳田國男の『定本 柳田國男集』の4を併読していたという、ますます変態。でもダントツで柳田國男は難しいわけですよ、小学生には。それを読もうとする努力は並々ならぬものがあって、ほかの本はぺろぺろ読めましたけど、柳田國男は辞書をひいたり、鉛筆で線を引いたりして一生懸命読んだから汚いわけですよ。そのせいで “愛読書感”は出てますかねえ。

高田 「愛読書はこれです」って言えるわけですね。

京極 実はそんなに好きだったわけじゃないんですけどね(笑)。

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