「毎日の晩酌が欠かせない」「お酒を飲むとつい楽しくなり過ぎて、うっかりいらんことを言ってしまい後悔することがある」「味の濃いものを食べると、ついビールを飲みたくなってしまう」……はい。これ、全部わたしです。アルコール依存症ではないけれど、お酒への執着がそこそこ強い。そんな人、結構多いのではないでしょうか?
妊娠・出産・授乳期間中は断酒をしていましたが、それが終わった今は、解放感からか、昼飲みにもハマっています。量的にはたいしたことないのですが、もしかして酒飲みほど「量はたいしたことない」って言いがち? これってもしかして、軽度の依存状態なのでは? なんて、ハッとすることがあります。
そんな気持ちでいた時に目に入ったのが、『アルコール依存症から抜け出す本』。アルコール依存症である人、および過去のどこかでアルコール依存症だった人は、日本に107万人います。思った以上に、身近な病気なのです。
この本を監修した医師・樋口進さんは、精神科医。アルコールだけでなく、ネット依存やギャンブル依存についても予防・治療・研究を続けている第一人者です。多くの症例をもとに、この病気との付き合い方や、患者をサポートするための相談窓口がわかりやすくまとめられています。
アルコール依存症には「患者本人に自覚がない」「病気に気づいてもなかなか治療が続かないケースが多い」という特徴があります。本書の序盤では「酒好き」と「アルコール依存症」の違いは、いったいどこにあるのか? どこまで飲むと依存症の疑いがあるといえるのか? といった初歩的な疑問を解決してくれます。
「こういう人、いるいる!」と思える軽度のものから、命に関わるレベルまで、合わせて6つの事例が具体的に紹介されています。朝から晩まで絶え間なく連続飲酒している場合や、明らかに飲み過ぎているのにそれを否認している場合は注意が必要だそう。
隠れて飲酒していたり、意識してもお酒をやめられない状態も、危険信号。「軽症だからまだ大丈夫」ではなく、今の段階でできることを探し、悪化を防ぐことが必要です。
依存症かどうかは「AUDIT」というスクリーニングテストで、自己チェックが可能です。お酒の量や頻度などの質問結果を点数化し、危険度をはかります。それぞれの回答は3~5択なので、あっという間に完了します。医療的な診断基準ではありませんが、病院に行くべきか悩んでいる段階の人には、わかりやすい目安となりますね。
また、インターネットやアプリでも簡易チェックが可能です。本書では、信頼できる専門医療機関のWEB診断のURLや、自治体が開発した「節酒カレンダー」アプリも紹介されています。
各種テストで、アルコール依存症が疑わしい結果が出たら、きちんとした診療を受けることが大切です。本書は、問題や症状から適切な相談窓口が探せる簡単チャートや、専門医療機関の探し方の図解もばっちり完備。
根性論で治る病気ではないからこそ、第三者である専門家の意見を聞くことが大切。目的によっては役所や警察、法律事務所に相談しながら、社会制度の利用を検討することもすすめています。家族ができること / できないことをきちんと切り分けてくれるのは、とてもありがたいです。血が繋がっていても、家族のために無理をしなくていいんですね。
依存症の恐ろしいところは、本人だけでなく家族や職場の人間も巻き込んでしまうところです。生活がままならなくなり、金銭・人間関係のトラブルが起こってしまいます。「支えになってあげなきゃ!」という優しさを持つひとが、巻き込まれてメンタルをやられてしまう現状があります。
アルコール依存症は、メンタルに直結する病気ですが、決して本人の精神力や根性だけで 治せるものではありません。入院しなくても、通院だけで改善する場合があることや、軽症の人向けの「減酒外来」があることも、初めて知ることができました。
自分はただの陽気な酒好きなのか? それとも病気なのか? を考えてみたとき、「もしかして……」と不安になったら、まずは本書を気軽に手に取ってみてください。
レビュアー
OL / ライター。ウートピ連載「女子会やめた。」「アイドル女塾」のほか、キャリア・ライフスタイル系のメディアを中心に執筆中。
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