「出勤前にその日飲む分だけのビールを冷蔵庫に入れておく」
こんなちょっとしたコツが家でビールを美味しく飲む決め手だと知っていましたか? 夏の暑い時期、仕事の後の1杯のビールを楽しみに働いているという方も多いことでしょう。ところが、冷蔵庫に入れっぱなしのビールは美味しさを損ねてしまっている可能性があるんです。
ビールを最高に美味しく飲むにはどうしたら良いのか? 本書では「3つの掟」を遵守することでビール本来の美味しさを引き出すことができるとされています。
ポイントその1 冷やしすぎに要注意!
日本で最も多く飲まれているピルスナータイプのビールの飲み頃の温度は、一般的に6~8度で、冷蔵庫で5~6時間の保管が目安です。飲む際の室温を考慮しつつ、この温度の範囲内で、夏はやや低め、冬はやや高めの温度で飲むのがお奨めです。
自宅の冷蔵庫に入っているビール、いつ入れたか思い出せますか? ずっと入れっぱなしにしているという方も多いはず。でも、冷やしすぎの状態での放置はビール本来の泡立ちを悪くし、濁りや沈殿物が生じる可能性も。そうなると見た目も美味しそうではなくなってしまいます。
「冷えたビールが切れた!」。こんなとき、冷凍庫に入れて急冷しようとした経験がある方も多いのでは? でも、冷凍庫で冷やしすぎたビールは美味しくありません。氷水のような状態になり、本来の美味しい味も香りも低調になってしまうからです。
著者のお奨めは、大きめの容器に水を張って氷を入れ、その中に瓶や缶を入れて静かに冷やすという方法です。といっても待てない!という方も多いと思うので、出勤前にその日飲む分のビールを冷蔵庫に入れてから出かけるのが簡単、かつ飲みすぎなくて健康にも良い方法かもしれませんね。
また、「ビールの泡」にも重要な役割があります。
「グラスに注がれたビールが、本来の美味しさを十分に発揮できる状態にあるかどうかを示す」バロメーターの役割です。泡立ちが悪ければ、ビールを冷やしすぎたか、あるいはグラスの洗浄が十分でなかったかなどがわかります
また、泡が残っている間に飲み干すことも重要で、グラスの内面に「レーシング」と言われる白い泡の輪がしっかり残るときは本来の美味しさを堪能できた目安になります。
※レーシング(Lacing:グラスの縁飾り)とは、レース状の泡跡が飲んだ回数分グラスの内側に残っていく現象のこと。
グラスは料理の油分が残らないように綺麗に洗うのがポイント。さらに飲む前に冷蔵庫で冷やしておけばビールの温まりを防いでくれるので、より美味しく飲むことができます。
ポイントその2 ビールの注ぎ方
家でビールを飲むときは、「泡」を意識しながらグラスに注ぐとぐっと美味しくなるそうです。
グラスに注ぐ際、最初のビールの流れをグラスの側面に当ててしまうと、適正量の泡をつくるために必要な、十分な衝撃を得ることができません。これを防ぐにはビールの流れをやや細くし、グラスの底面にしっかり当てることが重要です。
1.底面をめがけて勢いよく注ぎ、泡が立ったら止める。
2.立った泡がそのまま上に上がってくるように、泡がグラスの縁付近まで来るように注ぐ。
3.ビールに占める泡の量が30%くらいになるように、静かにビールを注いで完成。
グラスは手に持たずテーブルに置いた状態で注ぐのがポイント。この「3度注ぎ」をマスターできれば自宅でのビールの味がぐっと変わります。
また、「グラスの注ぎ足し」は厳禁。蓋となっている上の泡があるうちに注いだビールを飲み干し、途中で継ぎ足さないことが重要です。
その3 ビールの鮮度
ビールは日光や高温に弱いので、冷暗所で保存することが重要ですが、夏場に気をつけたいのが車での運搬時の温度です。
車のトランクなどで高温にさらされると「紙臭」と呼ばれる段ボールのような臭いが生じたり、「酸化臭」と呼ばれるウイスキーのような臭いが生じてしまうことがあります。
ビールは「生物」だと思って扱うことが重要ですね。
泡の立て方、注ぎ方、温度、保管の仕方……ちょっとした違いで味が変わることを知っていると、家でのビールライフがもっと楽しくなります。
ちなみに酒税法の改正によって2018年4月1日から「ビールの定義」が変わりました。
これまで日本では、法律で定められた材料で作ったものしかビールとして認められておらず、ベルギービールのようにハーブやスパイス、フルーツを使ったものは「発泡酒」というカテゴリに分類されてしまっていたのです。
最近流行のクラフトビールも、個性を出そうとして規定にない素材を使えば「発泡酒」に分類されてしまっていたんですね。
ビールの麦芽比率(ホップ及び水を除いた原料の重量中に、麦芽が占める割合)が引き下げられ、使用する麦芽の重量の5%範囲内であれば、果実や穀物、スパイスなど香味料を追加することが認められたのです。
また、2023年10月1日からは、麦芽や麦を使わずに造られており、現在は「第3のビール」と呼ばれている新ジャンルも、発泡酒に分類される予定となっているそうです。
そもそもビールが日本国内で飲まれるようになったのは明治時代に入ってから。それまでは清酒(日本酒)が消費量のトップだったものが、1959年に初めて首位を奪ってからまだ60年ほどで、日本では意外に歴史の浅い飲み物なのです。そして、どんどん進化していっています。
本書では、他にも家で美味しく飲むための適切な冷やし方や注ぎ方、ビールを使ったレシピなど、普段何気なく飲んでいるビールをより美味しく飲める知識が詰まっています。「ビールごはん」なんて、ちょっと意外なレシピも紹介されていますよ。
実際にビールの飲み方を試してみたところ、最初の底に向けて注ぐ泡の立て方が一番難しかったのですが、どのくらいの勢いや液量を注ぐと良いのか、探り探り味を比べるのも楽しかったです。自宅のお気に入りのグラスでのベストな注ぎ方をマスターできれば、晩酌の楽しみ方がさらに広がります。
知っているとこれからのビールの楽しみが広がる「楽しい科学」の豆知識だらけなので、ビール党の方はぜひ手にとってみてください。
レビュアー
20代のころは探偵業と飲食業に従事し、男女問題を見続けてきました。現在は女性向け媒体を中心に恋愛コラム、男性向け媒体では車のコラム、ワインの話などを書いています。ソムリエ資格持ちでお酒全般大好きなのですが、花粉症に備えて減酒&白砂糖抜き生活実践中。