北朝鮮だけに目を向けている場合ではなかった! 核ミサイルに対して私たちはどう立ち向かえばいいのか
日本を脅かす北朝鮮の核ミサイルの脅威。冗談ではなく本当に日本に落ちるのではないかと日々怯えている人も多いのではないでしょうか。
“距離的にもっと近くて簡単な、日本と同じアメリカの同盟国である韓国をなぜ狙わないのか?”
上記の質問にパッと答えられない人は、読んでおいたほうが良い1冊です。
この本では、原爆と水爆の違いをひとことで説明できないレベルの文系女子が読んでも、1冊読み終える頃には「核ミサイルにどう対処すればいいのか」を語れるくらいまでの知識を身につけることができます。
元自衛官の軍事評論家、兵頭二十八さんによって書かれた本ですが、北朝鮮にばかり目を向けている私たちに対して"本当の脅威は中共(中国)であり、今の日本ではまったく核兵器への対応がなされていない"という警鐘が強く鳴らされています。
地続きの隣国から侵略される恐怖を感じにくい島国に住んでいる日本人は、あまりにも“平和ボケ”していると言わざるをえません。
──米軍や中共軍から北朝鮮が総攻撃されそうな雲行きの、危機的状況の初期の段階において、日本の適当な都市を核ミサイルで実際に攻撃してみせるのが、いちばん悧巧なのです──
北朝鮮が見ているのは、日本ではなくアメリカと中国だけ。北朝鮮の中国国境付近から北京までの距離は1170キロ。北海道にある自衛隊の千歳基地や愛知県にある小牧基地までの距離はちょうど同じくらいです。
日本にミサイルを飛ばして見せることによって、「北京まで届く能力があるんだぞ」という見せしめのために日本は狙われるのです。
冒頭の質問の答えは「韓国だと距離が近すぎて北京が狙えるという証明にならないから」ということになります。
中共にしても北朝鮮にしても、日本は怖くないと思っていてもアメリカを激怒させることは避けたいと考えています。そのためには正当な理由があり、自国が滅びるほどの過剰な報復をされない程度の攻撃に留める必要がある……。
そこで中共が狙うのは日本のどこなのか? 筆頭にまず挙げられるのは横須賀基地です。
──初弾のターゲットを在日米海軍の在外根拠地たる横須賀軍港の真上に設定することは、自動連鎖的な核報復のエスカレーションを抑制できるという点で、政治的メリットは大です。「あくまで軍事基地を狙った」「しかもアメリカ領土ではなく日本領土」と北京から公式に声明されれば、アメリカ政府としても、それと「同等」の報復以上のことはやりにくいでしょう──
ほかにも東京、神戸、東海村など場所ごとに狙われる理由、どのような核兵器を使用するのが最も効果的かということが詳しく解説されています。
この本は狙われる側の日本目線ではなく徹底的に中共側、北朝鮮側の視点に立って、どの都市をどう狙えば効果的なのか、ということを分析している点が特徴です。
中国が日本を狙う場合と、北朝鮮が日本を狙う場合ではそれぞれ目的が違うので狙う位置も使用される核兵器の種類も異なるはず。そのことを知っているだけでも、ニュースなどの情報の見方も大きく変わってくるのではないでしょうか。
そして、第六章では核兵器での攻撃を受けてしまったときに被害を最小限に留める方法について触れられています。
重要なポイントとしては
・広島、長崎でも死傷者の75%は火傷が原因であり、核での攻撃を受けた場合に必要になるのは大量の真水。
・韓国では地下鉄に大量のガスマスクや医薬品が備蓄されている。北欧やスイス、ドイツなど核兵器へのしっかりした対応がなされている国と異なり、東京は全然対策がされていない。ゆえに東京には効果的に被害を出しやすい。
・どの都市に、どの規模の、どの核兵器が使われたかによって、逃げる方向やベストな対応は決まる。住居内にいて動かないほうが正解の場合もある。
水爆ないし原爆の使い方は、どこに落とすかも大事ですが高度がかなり重要になってくるのだとか。地面からどの高さで爆発したか、火球が地面に触れたかどうかによって放射性降下物の量は大きく変わるそうです。
火球が地面に触れるような爆発のさせ方だと、ピンポイントに狭い地域がもう二度と人が住めないほどの破壊をされ、放射性降下物の量も多くなります。
核シェルターは気軽に買えない私たちでも、知識があるのとないのとでは、万が一のときの行動の違いで生死の分かれ道になるかもしれません。
例えば、耐火性のカーテンがあるかどうかだけでも生き残れる確率は変わるそうです。自宅から近い地下の公共駐車場の位置を把握しておく、真水の備蓄を多くする、放射性降下物の灰を直接肌に触れさせないように長袖で逃げる、風の向きを意識して逃げるなど、生存確率を上げる方法を知っておくことはできます。
ネットで調べればさまざまな情報が出てきますが、核による攻撃を受けたときにネット検索で対応策を調べる余裕はないでしょう。
大勢の人が問題の所在と対策方法を知ること、それによって智恵が集まり、実際に行動する人が増えれば未来も変わる……これが筆者のもっとも伝えたかったことではないでしょうか。
決してスラスラと読める内容ではありませんが、難しいと感じても読み進めていくと、核兵器への基礎知識、核兵器の規模や爆発した位置、風向きによる被害の広がり方がシュミレーションできるウェブサイト"NUKEMAP"の利用法、どのように被害を軽減するのか?などの知識がグンと身につきました。
私たちが動けば、未来は変えられるかもしれません。無知で何も核兵器対策のされていない都市と、万全の対策が備わっており、狙ってもあまり甚大な被害を与えられないであろう都市では、狙われる確率も大きく異なるでしょう。
本書ではこれから家を建てる場合の核兵器に効果的な施策や、集合住宅では何階を避けるべきなのかなど細かく具体的に触れられています。
多くの人が核兵器を闇雲に恐れるのではなく正しい対処法を知ることで、生き残れる確率は確実に上がるはず。すべての日本人に今読んで欲しい1冊です。
レビュアー
20代のころは探偵業と飲食業に従事し、男女問題を見続けてきました。現在は女性向け媒体を中心に恋愛コラム、男性向け媒体では車のコラム、ワインの話などを書いています。ソムリエ資格持ちでお酒全般大好きなのですが、花粉症に備えて減酒&白砂糖抜き生活実践中。