マインドフルネス実践のための解説、特にビジネスへの応用を本書に期待すると、少々期待外れかもしれない。だが本書を読めば、マインドフルに生きることが現代においていかに必要とされているか、はっきりと実感できるようになるはずだ。
著者が教鞭をとるスタンフォード大学といえば、米国屈指の名門大学として知られる。そこでは失敗の経験をもたず、自分の考えを主張し、議論に打ち勝って相手を納得させることに長けている学生ばかりが集まる。だが一方で、彼らは相手に耳を傾けることは得意としていないという。
著者によるマインドフルネスの講義は、こうした西欧的なコミュニケーション方法に慣れ親しんできた学生たちに大きな変化を及ぼしてきた。なぜならマインドフルネスとは、いま生きているこの瞬間を大切にし、そこにいる自分や相手のすべてを受け入れることだからだ。
自分の知識や意見のみに夢中になっていた学生たちは、マインドフルネスの実践を通して、先入観を捨てて新しい目で世界を捉えなおすようになる。本書を手にとったあなたも、マインドフルネスに生きることがもたらす、新しい可能性を感じずにはいられないだろう。
現代の落ちつきない生活に疑問を感じているのなら、ぜひ本書を手にとってみていただきたい。きっとあなたの琴線に触れるはずだ。
目次
- 第1章 念(Mindfulness)
マインドフルネスとは何か/マインドフルネスの科学的根拠/マインドフル・リーダーシップ/マインドフル・エデュケーション etc. - 第2章 初心(Beginners Mind)
自分の「弱さ」を体験する/あるフットボール選手の物語/謙虚さが自分を成長させる/VUCAワールド etc. - 第3章 本当の自分(Authenticity)
あなたは誰か/人生の目的を見つける/日本人祖母の話/比較することについて etc. - 第4章 絆(Connectedness)
つながりの科学/共感を発達させる/「私たち」という感覚 etc. - 第5章 聴く力(The Heart of Listening)
「聴」という文字/聴くという贈り物/間と沈黙/聴く力は優れたリーダーの条件 etc. - 第6章 受容(Acceptance)
「仕方がない」という思想/平静の祈り/森田療法/変化と受容/スティーブ・ジョブズの受容について/手放すということ etc. - 第7章 感謝(Gratitude)
感謝と幸せの関係/価値を見いだす知能/病気における感謝/「今はただ感謝だけが残る」 etc. - 第8章 義理、人情、責任(Responsibility)
「特権」と「責任」/義理の真の意味/私たちこそリーダーだ/マインドフルネスと社会改革 etc.
著者紹介:スティーヴン・マーフィ重松
日本生まれ、米国で育つ。スタンフォード大学の心理学者。ハーバード大学で心理学の博士号取得。ハーバード大学、東京大学、スタンフォード大学で教鞭をとる。現在、スタンフォード大学ライフワークス・ファウンディング・ディレクターを務める。マインドフルネスやEQでグローバルスキルや多様性を高める国際的な専門家として知られ、教育、医療分野を中心に活躍している。著書に、『When Half is Whole』(Stanford University Press)、『Multicultural Encounters』(Teachers College Press)、『多文化間カウンセリングの物語(ナラティブ)』(東京大学出版会)、『アメラジアンの子供たち――知られざるマイノリティ問題』(集英社新書)などがある。
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レビュアー:猪野美里
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