世界で3000万人に愛されている大ベストセラー絵本シリーズ『にじいろのさかな』は今年で刊行から25周年。にじいろに輝くうろこをもった、世界でいちばん美しいさかなが、わかち合うこと、勇気をもってたたかうこと、ほんとうに大切なものをみつけるまでを描くシリーズです。友情や思いやりなど、お子様の成長に合わせて、伝えておきたい大切な内容がぎっしりつまった絵本は時代をこえて読み継がれています。世界各国で刊行25周年の記念イベントが開催されるなか、ついに著者が来日決定! ひとあし先にインタビューを公開いたします!
マーカス・フィスターさんインタビュー
スイス人の著者、マーカス・フィスターさんに、作品が生まれた経緯や、新刊『まけるのもだいじだよ にじいろのさかな』などのお話を伺いました。
「にじいろのさかな」刊行25周年をむかえられて、いま、どのようなお気持ちですか?
25年……「にじいろのさかな」と一緒に私も年を重ねてきました。感慨深いですね。はじめに本が出版された当時、私はまだ30代前半でしたが、ある読者に、50代後半くらいの作者が描いた本だと思われていたんですよ。私はようやく、その年齢になった、というわけです(笑)。
25年のあいだに、世界的にどんな反響がありましたか? 印象的なことがあれば教えてください。
世界中の子どもたちから手紙が届くんです。それを楽しんできました。特に印象的だったのは、ある若者が子どものころを振り返って、「にじいろのさかな」にどのように影響されたかを教えてくれたことです。作品が読者にどんな影響を与えているかは想像しにくいので、年を経てそういう手紙をもらえると、とてもうれしく、温かな気持ちになります。
フィスターさんにとって、「にじいろのさかな」はどんな存在ですか? ご自身の分身のような存在だったりするのでしょうか?
いや、そんなことまったくないですね! にじうおほど情け深くはないし、実は、私はあまりうまく泳げません。
フィスターさんご自身は、「にじいろのさかな」に対する考え方は、この25年で変化しましたか?
「にじいろのさかな」は、どんどん好きになっています。この作品を描いたことで、新たな可能性を見出すことができ、 私自身が成長させられた気がします。とても大切な作品です。
新作の『まけるのもだいじだよ にじいろのさかな』についておたずねします。今回、なぜ女の子のキャラクターを登場させたのでしょうか?
にじうおは、典型的な男の子のキャラクターというイメージで描いたわけではありません。でも、今回いろいろな方面からの声に耳を傾けて、女の子のキャラクターをそばに置きました。彼女も、にじうおと同じように温かく歓迎されたらうれしいなあ。
新作は、表紙の色彩からして、暖色のオレンジやピンクなどが目立つように感じます。今回、イラストレーションについて、なにか心がけたことはありますか?
水中世界の表現には制限があります。だからできることといえば、新しいキャラクターを加える、色や視点を変えるといったことぐらい。なので、ストーリーを作ることより、新しい見せ方で表現することのほうが難しく、苦労するんですよ。
今回の新作で、「負けを認める」ということをテーマにしたのはなぜでしょうか? なにかきっかけがあったのでしょうか?
「にじいろのさかな」の話のテーマは、子どもの成長のなかで重要なものを選び、常に新しいものに挑戦しています。 シリーズ8作目となる今作は、「負け」というネガティブな題材を選んでみました。負けたときの気持ちと、それに伴う悔しさがとても重要なテーマ。ふだんはなかなか話せないことなので、あえて取り上げたという感じです。これは子どもだけの問題ではなく、大人にも共通することです。会社や、身近な人間関係でも、イライラするようなことに見舞われますよね。悔しい思いをしたときの対処方法を、子どものうちから身につけられるといいと思います。
待望の最新作!『まけるのもだいじだよ にじいろのさかな』
いま、世界では多くの紛争が起きています。同時に、寛容であることの大切さがこれほど感じられる時代もないかもしれません。今回の新作のテーマは、こうした時代的なことと関わりがありますか?
私たちはいまの時代を生きています。そして、生活している場所の環境に影響されます。厄介なことに、日常生活のなかで起こる小さな戦争も、かなり残酷なものになることがあります。
日本では、家庭でも学校でも、「にじいろのさかな」がよく読まれています。新作について、読み聞かせのアドバイスがありましたら、ぜひ教えてください。
読み聞かせる前に、まずは読み手がひとりで1~2回読んでみたほうがいいと思います。子どもたちは、ドラマチックななにかを期待しながら耳をそばだてていますから、練習が必要ですね。そしてゆっくり読んで、お話を聞いている子どもたちの、きらきらしている目を楽しんでください!
今年の8月には、日本で大々的な原画展が企画されています。フィスターさんにもご来日いただく予定ですが、日本にいらっしゃるのは楽しみですか?
はい、とても! アジアの国、特に日本を訪ねることはとても、とても貴重な経験なんです。文化、人々、食べ物、すべてがヨーロッパと違うので、新しいことをいっぱい習ったり、発見したりすることができます。
最後に、日本の子どもたちにぜひひとこと、メッセージをお願いいたします。
読書をどんどん続けてね。視野を広げて、新しい世界を発見することができる。きっと楽しい時間が過ごせるよ。
25周年記念メイキング動画
マーカス・フィスターさん来日決定!
刊行25周年記念 にじいろのさかな原画展 ~マーカス・フィスターの世界~
【会期】8月16日(水)~8月28日(月)
【場所】ジェイアール名古屋タカシマヤ10階 特設会場
【入場料】一般:800円、大学・高校生:600円、中学生以下は無料
刊行25周年を迎える「にじいろのさかな」シリーズの最新刊『まけるのもだいじだよ にじいろのさかな』を含む、「にじいろのさかな」シリーズの原画や、マーカス・フィスターさんの描いてきたたくさんの絵本の原画が展示されます。8月16日(水)には、原画展会場に、スイスからフィスターさんが来日予定!
フィスターさんといっしょに「にじいろのさかな」の誕生日を祝う、楽しいイベントもあります。ぜひいらして、みんなでお祝いしてください!
そのほか、8月11日(金)には東京都内の書店で著者のサインイベントも予定しています。詳細は、随時「講談社絵本通信」サイト内イベント欄にアップいたしますので、ごらんください。
http://ehon.kodansha.co.jp/event_list/157.html
■フィスター氏インタビュー映像
提供:東映株式会社
1960年、スイスのベルンに生まれる。高校卒業後、ベルンの美術工芸学校の基礎科に入学。その後、グラフィック・デザイナーとして、 1981年から1983年までチューリッヒで働く。カナダ・アメリカ・メキシコを旅行ののち、帰国後はフリーランスのグラフィック・デザイナー、イラストレーターとしても活躍している。おもな作品に「ペンギンピート」シリーズ、「うさぎのホッパー」シリーズ、「にじいろのさかな」シリーズなどがある。1993年、『にじいろの さかな』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞。「にじいろのさかな」以外の日本での翻訳絵本に、『ちいさな つきがらす』『おしえて おしえて』『いろとりどり』『ペンギンピート ひみつのぼうけん』 『ねぼすけふくろうちゃん』がある。
1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1975年に『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1988年に『はだか』で野間児童文芸賞、1993年に『世間知ラズ』で萩原朔太郎賞などを受賞。「にじいろのさかな」シリーズのすべての翻訳を担当している。