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2017.05.01

インタビュー

絶対挑戦したくなる「ウルトラマラソン」攻略法。非常識なメソッドとは?

100kmや24時間走などに代表される今話題のウルトラマラソン。自身も国内外の数々のウルトラレースを経験するランニングコーチ岩本能史さんが、膨大な成功例・失敗例を踏まえて導き出した効率的なウルトラ練習法を一冊にまとめました。完走を目指す初心者から自己ベスト更新を目指すランナーの為に13週間(=91日間、3ヵ月)の練習メニューを大公開。これまでになかった「ウルトラランナーのための教科書」発売にあたり、著者がウルトラマラソンの魅力を語ってくれました!

Q1.フルマラソンでは味わえないウルトラマラソンならではのよさって何ですか?

フルマラソンと違って気ぜわしさがない分、景色やランナーとの交流などが楽しめる点は大きいと思います。ただ、それだけなら温泉&アフタービールマラニックで充分ですよね。

レースとしてのウルトラのよさは、やはり達成感の大きさでしょうか。「俺ってすごいじゃないか!?」と自己肯定することができます(←ただ、大抵の場合、実は勘違いでそれほどすごくはないです。だって覚悟を決めて地道に頑張れば、誰でもできないことではないのだから)。

あと、フルマラソンと確実に違う点は、より後天的要素(身体能力や体型、骨格以外の部分)が結果に大きく作用する点でしょうか。逆上がりができなくても跳び箱が跳べなくても、要領がわるくても不器用でも、コツコツ逃げずに腰を据えて対峙するという地味な能力が素質を凌駕するケースも多々あります。それがウルトラの世界です。

Q2.ウルトラマラソンを完走するために絶対に欠かせないものを5つあげてください。

①絶対に決めたことはやり通す、という熱さ

②ヒトはヒト、今日の自分は自分のためだけにやる、という冷たさ

③済んだ失敗は笑って無視する、という調子のよさ

④周囲で起こっていることのすべてを受け入れる、という柔らかさ

⑤例えば後続ランナーとの距離を測るためにそのランナーの視界から(曲がり角などで)消えるほんの一瞬に悟られずに振り向いて確認する、というような強かさ

以上が「備わっている!」というヒトは、立派なウルトラランナーになれます。

Q3.ウルトラマラソンを完走するためには、最低でも月間何km走る必要がありますか?

完了(途中からはただの移動)なら50kmでも100kmでも可能。

ただ、完走(レースとして成り立たせる)なら最低200km。潜在能力を発揮する(ウルトラとは何かが解る)ためには最低300km。300km以下では解ったようでいて実は解らない。

ウルトラマラソンとは42.195kmを超える道のりを走るマラソンのこと。一定の距離を走るタイプと、一定の時間を走り続けるタイプがある。

Q4.ウルトラマラソンを完走するためにはランニングフォームやシューズを変える必要がありますか?

フォームはどうでもよし。レースはラクに進めるべきもの。今、自分自身が選んで作り上げているフォームは、無自覚だけれどラクだからそうなっているはず。つまりラクなレースは、ラクな(無自覚)フォームが最適(←だって矯正したって気づいたらすぐに戻っちゃうし。ではすぐにどんなフォームに戻るかというと、ほらやっぱりラクなフォーム)。でも1個挙げるとしたら、肩甲骨間だけは狭める意識があればいいかもしれません。それだけで、頭のてっぺんからつま先までRUNに適したフォームに近づきますから。シューズ……、色々履いて試すしかないかもです。個人的には反発プレートがしっかり入ったモデルが好きです。

Q5.初めてウルトラにチャレンジするランナーにおすすめの大会をあげてください。

初めて海外に行くとしたらどこがいいか、を問われているのと同じで、その人の目的や強さなどによると思います。僕の周りにはハーフもフルもすっ飛ばしていきなり100kmに挑戦したヒトもいるし、初めて走ったのが平坦と言われるサロマ湖100㎞ウルトラマラソンレースで、でもそれが退屈すぎて、すぐに翌年スパルタスロン(ギリシアで開催される246㎞のレース)に参加した猛者もいるし(←ではサロマ湖が速かったかというとそうでもないので、それがまたおもしろいのだけど。まさにウルトラ百人百色)。走りたいレースを走ればよし。だって、人生と違ってやり直しがきく趣味なんだから。

世界各国で行われているウルトラマラソンの大会。現在日本国内では、年間150ほどのウルトラマラソンの大会が開催されている。

Q6.ウルトラマラソンを完走すると、フルマラソンは物足りなくなりますか?

これも人によると思います。でも僕の周囲の超ウルトラランナー(100㎞以上の距離のレースを走るヒト)は超ウルトラと並行して、必ず毎年フルを走っています。

Q7.ウルトラマラソンを走ることは人生に何らかのプラスになりますか?

「もしかして自分すごい?」と勘違いができる点。ウルトラ仲間の飲み会には愚痴が存在しない点。自分(たち)を中心に地球が回っていると思い込めてしまう愚かな点。多分この程度。え? これってプラスではなくマイナスじゃないかって? だったらプラスになることは多分なし。身体へのダメージも大きいし。人生1回きり。プラスにならないことに夢中で没頭できることは、多分幸せなことなのかも。ん? それこそがプラスかも。

岩本能史(いわもと・のぶみ)

1966年、神奈川県生まれ。ランニングチーム『club MY☆STAR』代表。市民ランナーが仕事と両立させながら自己ベストを更新できる、非常識ともいえる独自のメソッドが国内外で評判を呼んでいる。世界でもっとも過酷と言われるバッド・ウォーター・ウルトラマラソン(217km)4回完走(最高5位)、スパルタスロン(246km)7回完走(最高6位)のほか、24時間走アジア選手権で2位の記録を持つ。著書に『限界突破マラソン練習帳』、『違う自分になれ! ウルトラマラソンの方程式』(ともに講談社)、『100kmマラソンは誰でも快走できる!』(ランナーズ)など。

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