雑誌「FRaU」で1998年から15年間、驚きの的中率を誇ってきた水晶玉子さんの人気連載「オリエンタルカレンダー」。27宿の基本性格と運命、全351通りの相性に加えて、365日の運勢が分かる「オリエンタルカレンダー」はどのように導き出されていたのか。占い師・ゲッターズ飯田氏も注目している水晶さんのオリエンタル占星術の成り立ちを伺いました。
空海が中国から伝えた密教の占い
「オリエンタル占星術」は、「宿曜経」(正式には「文殊師利菩薩及諸仙所説吉凶時日善悪宿曜経」)という仏教の経典がもとになっているとのことですが、そもそも「宿曜経」とは、どんなものですか?
「宿曜経」は、紀元8世紀に不空三蔵という僧がインドから中国に伝え、それを遣唐使で中国に渡った空海、後の弘法大師が日本に持ち帰ったものです。平安時代には、「宿曜経」をもとにした「宿曜道」は「陰陽道」と同じくらいもてはやされましたが、その後は、密教の奥義として密かに現代まで伝えられました。
「宿曜経」は月の動きを元にした、いわば“東洋のホロスコープ”占いです。ルーツは西洋占星術と同じ古代バビロニア。やがて東西の文化が融合したヘレニズム時代を経て、この占いが西洋で発達して西洋占星術となり、東へ伝播して、シルクロードを旅するようにインド、中国へと渡り、「宿曜経」として日本へたどりつきました。「オリエンタル占星術」は、そんな「宿曜経」の背景にあるインドの占星術や中国の道教などの要素も加味しながら、その内容を現代の生活に合わせた言葉でお伝えする占いです。
あまりにもよく当たる為、宿曜占星術は権力者によって封印されたとの説も。
月で占う東洋占星術
西洋占星術は太陽、オリエンタル占星術は月に導かれる占術なんですね。
はい、西洋占星術の12星座は生まれたときの太陽の位置で決まりますが、「オリエンタル占星術」の27宿は、生まれたときの月の位置で決まります。バビロニアで生まれた占いが、西洋では太陽、東洋では月を中心に発達したのは、さながら地球規模で「陰」と「陽」のバランスがとられているような不思議な話です。同時に人間や物事を占うとき、片方の占いだけでは伝えきれない部分をそれぞれの占いが語っている気もします。太陽が意志や自我を司るのに対し、月は感情や本能を司る星とされていることからも、月を中心に語られる性格や運勢には西洋占星術とはまた違った側面があるのです。
でも「オリエンタル占星術」は、月の動きだけで占うものではありません。もとの「宿曜経」の「曜」は「九曜」という概念を表すものです。「九曜」とは現在も使われている曜日の概念のもとになっている7つの天体の「七曜」(太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星)に、羅ご星(日月食を起こす蝕星)、計都星(彗星)を加えたもの。現代で「曜日」は、記号のようにしか思われませんが、当時はさまざまな惑星の影響を感受する最新のツールでした。後述しますが、ある宿が、ある曜日と重なったときに起きる「七曜陵逼」や「六害宿」、または「甘露日」「金剛峯日」「羅刹日」は曜日、つまり惑星の影響を示す日なのです。
古来から東洋、西洋ともに月は女性の象徴と言われている。
当たる秘密は意外にデジタルな仕組み!?
「オリエンタル占星術」は、感情や本能を司り、日々その動きをもととしてるとのことですが、その特性がもっとも活かされるのは、どんなシーンでしょうか?
「オリエンタル占星術」が驚くほどの的中率を発揮するのは、毎日の「日運」と、人と人との相性の部分でしょう。
ところで東洋と西洋とでは、東洋が「アナログ」、西洋は「デジタル」というイメージを抱く人が多いのでは? それは歴史のある時点から、西洋文明のテクノロジーの発達が著しかったためでしょう。東洋では一部で細密な天体観測がされても、「宿曜経」以降に、それが占いに用いられることはありませんでした。27宿で毎日1宿ずつ月が進んでいく占いは、細密な天体の動きに裏打ちされた現代の西洋占星術に比べると、簡素ですが逆にデジタルなものかもしれません。けれど、その簡略化された中に古の人の深い英知が詰まっているのです。
人と人との相性は、「相手から見た相性」と「自分から見た相性」が違う点がこの占いで見る面白さ。たとえば自分が「安心」して付き合える相手は、相手にとっては「壊す」ような存在になる、さながら「カモと天敵」なのになぜか強く惹かれあう相性があったりします。そんな人との縁の不思議さを教える占いでもあります。私自身も、その日の日運と誰かとの相性をみるときは、「オリエンタル占星術」で見た結果は必ずチェックしています。
東京都生まれ。宿曜経にオリジナルの解釈を加えた「オリエンタル占星術」が大人気の占術研究家。