累計300万部の「若おかみは小学生!」シリーズなどの著書がある児童文学作家の令丈ヒロ子さんが、大人気絵本作家のやぎたみこさんとタッグを組んだ新作『負けるな!すしヒーロー! ダイナシーの巻』。お寿司やさんの3代目、食いしん坊のこうきが、すしヒーローに変身。おすしのパワーを生かした技で、食べ物をだいなしにするダイナシーと戦うお話です。この物語が生まれた背景を、著者の令丈ヒロ子さんにうかがいました。
大阪府生まれ。嵯峨美術短期大学(現・京都嵯峨芸術大学)卒業。講談社児童文学新人賞に応募した作品で注目され、作家デビュー。 『若おかみは小学生!』(講談社・青い鳥文庫)は、累計300万部を超える大人気シリーズになっている。 ほかのおもな作品に、『若おかみは小学生!』の姉妹編「温泉アイドルは小学生!」シリーズ、 『パンプキン! 模擬原爆の夏』(以上、講談社)などがある。
Q.この作品をお書きになったきっかけを教えてください。
以前から、「子どもに身近なヒーロー」を主人公にしたお話を描きたかったのですが、なかなかチャンスがなくて。そこに毎日新聞(関西版)から原稿の依頼をいただいたので、この機に書いてみようと思いました。(*2016年5月1日~31日毎日新聞関西版に掲載されました。)
Q.新聞連載中の反応はいかがでしたか?
びっくりするほどご近所の方(特に年配の方)に評判がよかったです! 「月光仮面を思い出した!」とか「あんなおもしろい話を書いてる人だったんですね!」などと、行く先々で声をかけられ驚きました。おかげさまで、近隣での知名度がぐっとあがりました。
Q.「おすし」と「ヒーロー」というテーマになさった理由はなんでしょう?
一番の理由は、わたしがおすしが好きだったことです。小さなお子さんから、お年寄りまでに好かれているものなので、いろんな年齢層の人がそろって楽しめる食べ物ですし。カジュアルにも食べられるけれど、おめでたい席や法事などでもよく出てくる、「特別な食べ物」という感じも好きですね。わたしは子どものころ、食べ物の出てくる絵本や童話が大好きでした。お話だけでなく、さし絵がおいしそうだと、ページが取れるぐらい同じシーンを見たり、読んだりしていました。おすしがどんどん出てくる話が、子どものころにあったら、夢中になっていたと思います。それから、実はヒーローものも大好きでした。初めて仮面ライダーを見たときの興奮は、忘れられませんね。大人になってからも、どこか人間味を感じるヒーローものが好きで、マーベル映画「アベンジャーズ」や「アイアンマン」シリーズなどは、欠かさず観ています。 なので、おすしを使いこなすヒーローものというのは、わたしにとって、大好物の盛り合わせのようなものなのです。今までで一番、「すいすいーっ」と書けました。書いていて、こんなに楽しかった作品は珍しいですね。
Q.主人公は、食いしん坊で、運動が苦手な男の子という設定ですね。
はい。おすしのように和風イメージで、親しみやすい男の子が似合うなと思い、お寿司屋さんの3代目、妹に優しく、争い事が苦手、ぽっちゃりで金属にかぶれやすいデリケートな男の子「こうきくん」にしました。
Q.いちばん書きたかったシーンはどこですか?
どこにでもいるようなふつうの男の子の中にある、強い気持ち――こうきくんの場合は「好きな食べ物を心からおいしいと言って食べられる、平和な街を守りたい」という気持ち――を、ヒーローになったときに、彼自身がはっきりと自覚するところですね。また彼が、敵をやっつけるだけでなく、「おいしく食べることの楽しさ」を思い出させるところです。いろんなすしパワー技も考えるのが楽しかったですが、「かんぴょうタイトロープ」「特上すしゴージャスゴールドタイフーン」は特にお気に入りです。
↑楽しい技がいっぱいです。
Q.やぎたみこさんとのお仕事はいかがでしたか?
絵本作家のやぎたみこさんのファンでしたので、いつか、さし絵をお願いできたらいいなと、ずーっと思っていました。やぎさんの絵は、優しくあたたかく、かわいいのですが、生き物の体温や皮膚の感触なども感じられるような、ものすごく存在感がある絵です。この話は、やぎさんの絵によって、リアルさ、おもしろさ、そしておすしのおいしそうな感じが、パワーアップしたと思います。今や、やぎさん以外の絵が、まったくイメージできないぐらいぴったりです。どの絵も大好きですね!
↑もくじのイラストは「すしパワーラボ」です。
この本を読んだら、おすしが食べたくなることうけあいです。ご家族みんなでおすしを食べながら、すしヒーローのことが、楽しい話題になったらいいな、と思っています!