町田康さんが猫との暮らしを描いたエッセイは、2000年4月に「猫の手帖」で連載が始まった。以後、「FRaU」、「Grazia」に連載され、『猫にかまけて』『猫のあしあと』『猫とあほんだら』『猫のよびごえ』と4冊の本となって刊行されました。
行き場をなくし、生命の危機に瀕している猫たちを連れ帰り、治療を受けさせて世話をする。それでも別れは訪れる。日々を淡々と丁寧に、写真とともに綴った作品に溢れる猫たちの愛らしさと生命の尊さ。長い人気を誇るベストセラーシリーズの最終巻『猫のよびごえ』が講談社文庫に登場です。
昔は猫が苦手だったが一緒に暮らすようになってからすっかり猫が好きになった。
いつも側にココアやゲンゾーたちがいた。どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた。
(『猫にかまけて』より)
いろんなことが変わっていく。時間が過ぎていく。
やがて私も死ぬ。
そのときまで、こうして、みんなが生きていたこと、生きた時間を書いていきたい。そうおもっている。
(『猫のよびごえ』より)
*亡くなった猫たち
ヘッケ(14ヵ月・右)
都内の裏通りに兄弟たちと捨てられていたが衰弱ぶりが激しく町田さんに拾われた。さまざまな治療で元気になったように見えたが1歳2ヵ月で亡くなった。可憐な猫。
ゲンゾー(13歳/牡・左)
愛想が良く「お手」もできる気のいい猫。突然部屋の中をダッシュする、柱にぶらさがるなど遊び好きで、町田さんにとって兄弟のよう、友人のようだった猫。
*現在、住んでいる猫たち
奈奈(14歳/牝)
保健所前に捨てられていた白地に雉トラのヘッケによく似た猫。気が強くパンチが得意。どんどん増える新しい猫を敵視していたが最近は体調がすぐれず個別に食事をもらっている。
エル(12歳/牡)
保護団体の人に連れてこられたときには生命の危険に瀕していたが、献身的な看病の結果、元気な猫に成長した。長い間、特別扱いをされてきたため、性格は王子。黒猫。
オルセン(推定13歳)
保護団体の人から預かり、里親が見つからないまま六本木から熱海へ一緒に越してきた猫。白地に雉トラ。人を怖がるため奈奈たちとは別室で暮らしている。
パフィー(推定13歳)
白と茶がパフェみたいに混ざった色。目がまん丸でかわいらしい。人を極端に怖がり隠れてしまうため、二年間その姿を見なかったこともある。
シャンティー(10歳/牡)
伊豆半島に引っ越すため家を探していたとき、不動産屋に案内された物件の前に捨てられていた猫。白地に雉トラ。甘え上手で繊細な性格。
パンク(10歳/牝)
シャンティーと一緒に捨てられていた猫。弱々しく元気がなかったためパンクと名付けたが、元気すぎるくらい元気な猫となった。極度の食いしん坊。
ネムリ・キョーシロー(?歳/牡)
保護されて町田家で「一時預かり」をしている猫。ジャガイモのような不細工な顔に似合わず「ネムちゃん」と呼ばれていたが改めてネムリ・キョーシローと名付けられた。