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2026.11.05

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生物はいつか必ず死ぬ……とは限らない。不老長寿生物もいるのに、なぜヒトは必ず死ぬのか?

人類の永遠の夢とも言われる、不老長寿(または不老不死)。生物学上、そんなことは実現不可能であり、だからこそ見果てぬ夢なのだ……と思ったら、実は意外と実現している生物も存在した。本書は生物多様性の研究者である著者が、生物たちの「生と死」ならぬ「生と不死」(または「生と性」)について描いた一冊である。

ひと口に不老長寿といっても、どのようなかたちでそれは実現されるのだろう? 本書では、少なくとも1000年以上の樹齢を誇るというハチクという植物や、サンゴやベニクラゲ、ヒルガタワムシ、ナナフシといった事例が登場する。種によっては「個としての半永久的な命」……いわゆる個体単位での長生きというより、「種としての永続性」のほうを強く意識させるものもいる。そこに「個」という概念はもはや存在しない種もいて、ヒトをはじめとする哺乳類の生態とは、あまりに違う。

確かにそれらは「思いもよらないやり方で不老長寿を実現した生物」とは呼べるかもしれない。ただし、そのために「あえて失ったものの大きさ」にも思いを馳せずにおかない。不老長寿とは、ヒトや動物の姿かたちをそのまま保った状態で受け継ぐことができるほど、甘いものではないのだ。

ここで、バクテリアを例にとろう。我々がイメージする「不老長寿」のあり方とは、大きく異なる生物のひとつである。
バクテリアは細胞分裂の際、母細胞を原本として、それと全く同じ遺伝子をもつ分身を複製します。ということは、分身(娘細胞)もまた原本(母細胞)ということになります。もちろん、1つの細胞は、有限の時間しか存続できず、いずれ死を迎えます。しかし、その細胞が生命活動を止め、消滅する頃には、細胞分裂により原本と同一の別細胞が出現しています。つまり、細胞分裂で増えるバクテリアは、常に「自分」を作り続けられるので、細胞を乗り換えながら、永遠に自分を維持することができるのです。
これが、バクテリアが不老長寿と言われる所以
(ゆえん)です。ということは、細胞分裂や栄養生殖、分裂・出芽で分身を作ることができる生物は、死という概念をもたないことになります。
「永遠の命」ってそういうこと?と思う読者も多いだろう。だが、そもそも私たちは人間(ヒト)の尺度で「不老長寿」というものを考えすぎていたことに、やがて思い至る。好々爺然とした仙人のようなイメージを思い浮かべるほうが、ちょっと厚かましい気さえしてくる。実は、動かない1本の木や、目に見えないバクテリアかもしれないのに。

「不老長寿」という夢のような機能を失う代わりに生物が得たものは、どうやらあまりに大きかったことも本書では語られる。ヒトを含む「有性生殖」の生物が、不老長寿に近いライフサイクルを実現した「無性生殖」や「単為生殖」の生物に比べて、不利な点を4つ挙げたイラストが分かりやすい。
裏を返せば、これは多様性の発現と、それに伴う存続可能性、生物としての繁殖意欲などをそのまま示す図となる。まさしく「種として栄えた理由」だ。我々はとっくの昔に、選んでそれ(=不老長寿)を捨てたのだ、という自信(?)にも繋がるかもしれない。
生物は無性生殖や単為生殖を行うことで、不老長寿を手に入れることができます。しかし、いいことばかりではありません。永遠の命の代償は大きく、失ってはならない遺伝的多様性を手放さなければならないのです。そう考えると、不老長寿が生物の目指すべき理想なのかどうかは疑問が残ります。
実は、生物の体内には無秩序に分裂し続ける「死なない細胞」……がん細胞という厄介者も存在する。あらゆるところに皮肉は待ち構えている、と教えてくれるかのような一節である。映画『プロメテウス』(2012年)でも描かれたように、不老長寿という願いをしつこく実現しようとするなら、人類はとてつもない代償を支払うことになるかもしれない。それでも一部の人類は夢に向かって突き進むだろう。だからどうなろうと、文句は言えまい。

レビュアー

岡本敦史

ライター、ときどき編集。1980年東京都生まれ。雑誌や書籍のほか、映画のパンフレット、映像ソフトのブックレットなどにも多数参加。電車とバスが好き。

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