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2026.07.08

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死ぬって意外に難しい。後悔しないために知っておきたい「最期の準備」

昨年、親族を見送った。その経験もあってか、本書の副題を見て、深くうなずいてしまった。「死ぬって意外に難しい」──本当にそうだったという実感がある。たとえば、介護やその先に何を望んでいるのか、どういった「死」を迎えたいのか。そうした普段はなかなか聞きづらい話を、本人や他の家族と事前に話し合い、共有することの難しさも思い出した。本書にもっと早く会えていたなら、また違った道も選べたのでは──そんな思いを抱きつつ、ページをめくった。

循環器専門医の著者は、いくつかの病院勤務を経たのち、2004年からはカネディアンヒル介護老人保健施設(老健)の施設長として、多くの高齢者の診察に当たってきた。現在は13の介護系施設を運営する医療法人社団創生会の理事長を務めるかたわら、介護に関する情報をブログで発信し続けている。こうした長年の経験をまとめた前著『最高の介護』(講談社)は、発売後まもなく大きな反響を呼んだという。

本書は前著に続く一冊であり、執筆の狙いは以下の通りだ。
今回この本で、皆さんにお話しすることは、介護の「前」と「後」です。まず、介護に至る前、どうすれば健康寿命を延ばせるのか、何に気を付け、どんなことをしていれば、介護のリスクを減らせるかというお話をします。
現在、日本の65歳以上の約20%が介護認定を受けています。85歳以上では約60%、つまり半数以上に介護が必要です。介護状態になりたいと願っている人はいませんが、現実は厳しい。完全に介護ゼロは難しくとも、少しでもリスクを減らす方法があるならば、試して損はありません。
自分も家族も、誰がいつ介護を必要とするようになるかはわからない。いつか訪れるかもしれないその時に備えて、一番の支えとなるのは、事前の知識だろう。本書では、介護を遠ざけるための予防策や認知症と老健の利用法、看取りや延命治療に関する具体例、そして「後悔しない決断」をするための相談先や考え方といった、「これから」を考えるのに必要な情報が、わかりやすく丁寧に語られている。

特に心に響いたのは、第7章の冒頭だ。それは「でも、人は『最期』を選べないことも知っておく」という一言から始まる。
人はどこでいつ生まれるかを選べないように、死ぬ時期や死に場所、死に方を選べません。ポックリ死にたいなあとか、家族に囲まれて死にたいとか、眠るように死にたいとか希望はあれど、なかなかその通りにはならないものです。事故で突然亡くなったり、若くして病気になったりはもちろんですが、高齢になって天寿を全うする時期になってもやはり選べないのです。
(中略)
人事を尽くしたらあとは天命です。わたしたちがどうこうできることではなく、誰の責任でもありません。望む通りにしてあげられなかったとしても、それは決してあなたのせいではないということを忘れないでください。
じんわりと心が温かくなった。重ねて著者は、「介護で最も大変なことは『決断』です」「何度も言いますが、これらの決断に正解はありません」とも伝えてくれる。見送る前もその後も、迷いは尽きなかった。それでも、時間は待ってくれない。悩みながら家族と過ごした日々が、本書の言葉で報われた心地がした。

章の合間に収められた「介護施設一覧」と3つのコラムには「施設介護か在宅介護か」「元気なうちに何を決めおけばいいのか」「延命治療の選択」といった本文の要点がまとめられており、これから介護に向き合う人には役立つ内容となっている。実用的なだけでなく、介護に関わる人の気持ちにも寄り添ってくれる本書を、早めに手に取り、心の支えとしてほしい。

レビュアー

田中香織

元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。

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