困難を見過ごされてしまう人たち
境界知能とはなにか?
境界知能は、知能検査の数値(いわゆるIQ)で、70から84の範囲にある状態のことをいいます。(図表1)知的障害と平均値のボーダーにあるということです。
境界知能は気づかれないことも多く、周囲の無理解やいじめ、子ども本人の自己肯定感・自尊感情の低下、傷つきから、2次障害として、精神疾患、不適応、非行などの状況を呈してはじめて、医療や福祉、司法の現場で気づかれることもあります。
白と黒ではなく、グラデーションの理解を
「いや、子どもってそういうもんでしょ?」
「やる気がないだけ。やればできるんだから、ケツを叩いてでもやらせればいい」
「そういう特徴があっても、勉強やスポーツで頑張って自己形成していくもんじゃない?」
それは本当にそうなのか? そうであってほしいだけじゃないのか?
無理なのに「努力しろ」「反省しろ」と押し付けて、息もできない状況へ子どもを追いやっていないか?
境界知能といっても、それだけを切り離して考えられるものではなく、さまざまなケースがある。愛着障害*や発達障害、ADHD、学習障害が併存するケース。糖尿病など自分の身体慢性疾患を理解できず治療意欲も持てないケースや、50歳になって境界知能であることが分かったケース。そうした事例が数多く紹介されているのだが、どれも読んでいて胸が痛くなる。特に「こういう子ども、実はメチャクチャいるんじゃないか?」と思ったのが、この部分。
*愛着障害:乳幼児期に、母親や父親など特定の養育者との愛着形成がうまくいかず、情緒や対人関係に問題を抱えている状態。
勉強が苦手な子の中には、境界知能の子が多く含まれると考えられます。
しかし、支援級や通級を利用するには、知能検査の結果や医師の診断などがないと難しい状況です。またIQ検査を受けても70~84なら、そのまま通常級に在籍となるでしょう。
そうすると、一般に学校の授業についていけない、がんばってもできない、達成感・成功体験がほとんどないことの繰り返しで、勉強することやがんばることの意義を持てなくなるのかもしれません。
それだけでなく、周囲の子どもからいじめられたり、教師からは繰り返し学習するように課題を自宅に持ち帰らされたり、悪い評価を受けかねません。
本人にとっては、このような被害にあわないように、「成績は良くないが、ほかに問題のない子」として目立たないようにしたりわかったふりをしたりすることでその場をやり過ごすことが増えていきます。
本書では、外国での事例や具体的な提言まで述べられている。そしてなにより大切なのは、私たちひとりひとりが理解し、共生する意思を持つこと。本書の巻末には、極めてわかりやすい用語解説と、境界知能かどうかを考える所見リストが掲載されている。知らず知らずに子どもや、周囲の人をさらなる困難に追いやっていないか? これを読んで理解し、行動を起こすべきだ。








