暴力団の息の根を止めた暴排条例
団体名を名乗り、首脳の名前や経歴を明らかにし、メンバーを明かし、本部がどこにあるのか明示しているような犯罪集団は世界広しといえど、日本の暴力団だけだろう。警察が呼び出せば出頭するし、少し前までは殺人を犯せば最寄りの警察署に自首して出た。
そして今、暴力団が消滅しようとしている。
暴力団の衰退は統計的にも明らかである。初めて東京オリンピックが開かれた一九六四年の前年、六三年(昭和三八年)が暴力団勢力のピークだった。全国の暴力団は五二〇〇団体、構成員一八万四〇〇〇人を数えた。
これ以降、年々暴力団は勢力を減らしていき、二〇二四年(令和六年)にはこれまでの最少となった。構成員はわずか九九〇〇人、準構成員八九〇〇人、合計一万八八〇〇人にすぎなくなった(「警察白書』令和六年版)。
90年代から今も続く「龍が如く」という人気ゲームシリーズがある。伝説の極道・桐生一馬が活躍するアクションアドベンチャーゲームだ。そのシリーズ7作目の物語では、ヤクザに食わせない、稼がせない、居住させないという警察の「神室町3K作戦」が実行される。これで関東最大の極道組織「東城会」は崩壊し、構成員を正業に就かせるため“極道大解散”が行われ、警備会社が設立される(が、シリーズ8作目でそれも失敗したことがわかる)。この物語は、実際の暴排条例がもたらしたことと符合する。組を抜けても再就職率は志望者の2%。再就職できなければ「元暴五年条項」により、暴力団員でなくても5年間は組員扱いで銀行口座も持てない。生活保護も受けられない。機能するセーフティネットは刑務所に入ることしかない……。現状、暴力団員に基本的人権はない。
暴力団組織の腐敗
新しいシノギを創出できない一方で、組織は下から上へお金を吸い上げ続ける。山口組では「月会費」の名目で直系組長から一人当たり100万円前後を収めさせ、本部に毎月約7000万円を集金。このうち3000万円が組長に渡っているという。月会費以外にも、中元や歳暮などさまざまな形で金は吸い上げられ、下部組織は疲弊し貧困化している。そんな組織に、新たな人材が入ってくるわけがない。よって構成員の高齢化が進む。山口組は10年前から分裂、抗争を繰り返したが状況は変わらず、甘い汁を吸わんとする上層部の主導権争いを繰り返しているという。
山口組に対して醒めた気分は避けようがなく、山口組の組員数は引きつづき、これからも減少し続けて行く。なにしろ山口組は構造不況業種なのだ。プラス要因はどこにもない。
もはややくざは「必要悪」以前に、必要とされず、内部崩壊をきたしている。
もうまもなく暴力団は消えるだろう。
残るのは正業を持たない(持てない)、元ヤクザの老人だ。
どう考えても扱いにくそうな、そんな老人のセーフティネットについて本気で考える時がもう来ている。








