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2025.06.27

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マルハラは何が問題だったのか。若者がLINEに「。」をつけない、なかなか既読をつけないワケ

2004年にサービスを開始したmixiが爆発的に広がり、日本においてSNSが大きく認知されてから、およそ20年。X、Instagram、TikTokなどなど、今や様々なSNSが多くの人々にとって日常の中に組み込まれています。企業アカウントとしての情報発信や営業ツールなど、プライベートを越えてビジネス分野でも存在感を増しているSNS。

本書では、ネットや情報リテラシーの事件・トラブル対策を専門とし、SNS関連の著書も多数出版している著者が、ビジネスパートナーに向けてSNSにおけるコミュニケーションのとり方について指南。世代の異なる相手との間で生じやすい「行き違い」やSNSでのトラブル・炎上回避について、さらにはビジネスでSNSを武器にする方法などを解説しています。

世代間ギャップの理由、つまり「文化の違い」を知ることが大事

本書のタイトルにも使われている『若者はLINEに「。」をつけない』という事象。これは「若い世代の文化」と言い換えてもいいかもしれません。とてもキャッチーな話題を切り口として、著者は世代間で異なる文化の違いを紐解きます。

大人世代のLINEは、メールの延長のように句読点を交えながらまとまった文章を送りがち。対して若い世代のLINEは簡潔に、装飾も句点もなく短文です。

私は大人世代と頻繁にやり取りするので、大人の長文LINEには納得。でも普段めったに20代とLINEをしないので、実際に行われたアンケート調査のデータや著者の中学生の子供の実例も引き合いに出しながら解説された若者LINE文化には、説得力がありました。

こうした違いの背景には、非同期コミュニケーションで育った我々大人と、同期コミュニケーションで育った若者の違いがあるようです。同期・非同期とはすなわち、リアルタイムかそうでないか、ということ。

ガラケー世代にとっては、メールがコミュニケーションツールでした。電波も今より貧弱。センターに問い合わせないと受信しないこともざら。その結果、相手がいつ読むかわからないので、誤解を与えず一度でしっかり伝わるように改行や絵文字、顔文字など装飾を施して文章を作成していました。対してLINEなどプッシュ通知もあるリアルタイムのコミュニケーションツールで育った若い世代は、齟齬が生じても即フォローが可能。リアルタイム=会話なので相手を待たせないことが大事、ということで句読点はもちろん、余計な装飾もナシですぐ返信する。それが若い世代にとっての気遣いとなっているのです。大人も若者も、気遣いという目的は共通なのですが、育ってきたネット環境の違いから、手段が異なるわけです。

部下とSNSで繋がりたい……上司が陥りがちな罠

同僚や部下とのSNS交流がうまくいっていないと感じている人(特に大人世代)がいるなら、要注意です。昨今多発する、SNS炎上騒動とも相まってか、SNSは閉じたプライベートなものとして利用する若者世代に対し、大人世代はSNSをビジネスに活用するという意識が強いと著者は語ります。その例としてFacebookが流行った時の状況に触れているのですが、確かにFacebookは仕事に活かせるSNSツールという立ち位置だった記憶があります。

上司としては、より円滑に仕事を進めるための関係性の構築が目的だったとしても、それを若者世代は望んでいないのかもしれません。
部下は基本的に立場上、上司からの依頼を断れません。断れないから受け入れているだけで、本音では断りたい、不快だと思っている可能性があります。良かれと思ってやったことが、むしろ仕事のやる気を削(そ)いでいる可能性さえあるのです。
立場の上下という違いがあること、立場が違う人とプライベートでまで交流したいと思う若者は多くないことは知っておくべきでしょう。
若手とSNSで繋がりたいと思っている大人世代にグサリと刺さりそうなこの警鐘、しっかりと受け止めたいと思います。

メッセージの送信時間、気にしてますか?

もうひとつ、個人的に気になる項目を紹介します。「上司やクライアントから、深夜・早朝にメッセージが届くことはプレッシャー」問題です。立場が強い相手がそんな時間に仕事をしているのに、自分は仕事をしなくてもいいのか、という圧。逆に、こちらが深夜・早朝に連絡を入れたらすぐ返信が来た、というのもまた、「24時間戦えますか?」というバブル時代ばりの相手の労働環境に不安を覚えるというネガティブな結果を生むことも。

コロナ禍を経て、在宅ワークが浸透した現在、つい思いついたまま夜中にメールしてしまう、なんて方もいるかもしれません。これがメールではなくLINEなどであれば、プッシュ通知のおまけが付いて、さらなる圧が加わることでしょう。当たり前のようで、実は曖昧な認識になってしまいがちな「仕事の連絡は業務時間内で」を、著者はあらためて提唱しています。
立場の違いに配慮したメッセージ頻度、送信時間を心がけるべきでしょう。
夜ふかしついでに、深夜、Slackで業務連絡を送ってしまう私は、おおいに反省しました……。

このように様々なSNSマナーを提示しているのですが、本書が示すその本質は、コミュニケーションそのもの。「言葉の受け取り方」「感情の伝え方」「空気の読み方」など、特に今の時代、人とコミュニケーションをとる際にとても大事な要素を、SNSと組み合わせた際のポイントと併せて、時には例文も交えながら丁寧に解説しています。

SNSは得意だと自負する人も、そして自信がない、苦手だと感じている人も、あらたな学びが得られる1冊です!

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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