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2025.02.28

レビュー

メガクライシスがくる!! 災害大国日本を支える最先端の防災とは?

命を守る未来のテクノロジー

デジタル技術を活用し、業務プロセスやビジネスモデル、企業文化などを変革する――DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にする機会が増えた。
DXをビジネスだけに留めず、激甚化する災害から一人でも多くの命を守ることに繋げられたら……。

『2040年の防災DX』は、2040年におけるデジタルテクノロジーを利用した最新の防災技術と防災の未来像、そこに至るまでの様々な問題点や課題、また国内外の実例を紹介する1冊だ。

著者の村上建治郎氏は、株式会社Spectee(スペクティ)の代表取締役CEOを務める。東日本大震災における災害ボランティアの経験に端を発したスペクティは、災害情報の解析と配信を専門に行うベンチャー企業だ。「危機を可視化する」をミッションに、SNSや気象データ、カーナビ情報、道路・河川カメラなどのデータから災害やリスク情報を解析し、被害状況の可視化や予測を行う。

東日本大震災が起きた2011年から現在までのおよそ14年は、体感としてはかなり短い。その間にLINEが登場し、AIが身近な存在となり、ロボットやドローン技術が発達するなどデジタル技術も目覚ましく発展した。ここから次の15年もテクノロジーは大きな進化を遂げていくことが予見できる一方、気づいたら2040年になっているのではないか……そんな気がする。

本書はそんな近未来の防災において、どんな世界の到来が予測されるのかを、スペクティの取り組みとあわせて私たちに見せてくれる。

近未来の防災の姿

防災に関係する先進技術は、主に「AI」「ドローン」「ロボティクス」「デジタルツイン」「人工衛星」「インターコネクティッドの世界」の6つのカテゴリーで捉えることができる。各カテゴリのテクノロジーやノウハウはそれぞれ独自に発展しながら、相互に連携して防災における大きな役割を果たしていくことになるはずだ。
2040年の防災の形を予想するにあたり、この6つにどのような活躍が期待されるかを説明するのが第1章だ。

例えば家電などのIoT情報と「見えない部分、情報が不足している部分をAIによって補完」することで
一刻を争う避難行動に際して、家電から送られてくる情報をもとに残留者の有無等を判定できれば、人命救助の効率が飛躍的に上がるはずだ。
また、現実の世界をそのままデジタルの世界で再現する「デジタルツイン」。
これを活用することで災害時の被害の広がり方を予測したり、道路混雑やインフラの弱体化などを想定し、避難や支援の最適解を導き出すなど、従来の防災とテクノロジーの融合した姿を知ることができるという。

このような最新テクノロジーは防災の現場においてもかなり頼れる存在に見える。しかし日本の自治体が抱える予算の問題や行政上の思想、前例の少ない取り組みに対する厳しい目などが「防災DX」を阻む意外な壁となることがわかる。実際に防災DXを推進している自治体として挙げられている福井県のような先行事例が増えることにより、先進技術の理解と普及が進むことを期待せずにはいられない。

そんな中、内閣府が提唱する概念は
デジタルとフィジカルの融合によって、経済発展と社会的課題の解決の両立を目指すSociety5.0の社会である。
その中核を担うのがAIだが、それは「すべてをAIに任せる」という意味ではない。古くから自然災害に見舞われることの多かった日本には、防災分野における高い技術やノウハウが蓄積されている。その伝統的な強みとAIやIoTといったデジタル技術、経験の中で人が培ってきたアナログ的な判断の融合が、災害対応能力をさらに高度にしていくのだと本書は教えてくれる。

デジタル技術でリスクを最小限に

「災害大国」と呼ばれる日本。そこに住む以上、一定の確率で災害に見舞われることは避けられないかもしれないが、災害の影響を小さくすることは決して不可能ではないはずだ。AIやDXはそのための強い味方になる。
人間が主体となってデジタルテクノロジーを活用することで、防災に関する未来が明るいものになる……。本書はそんな未来の実現にむけた道のりを示してくれる。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。

X(旧twitter):@752019

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