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2015.11.05

レビュー

ひたむきさの先にしか見えないものだってある

「仕事が楽しければ人生も楽しい――。」というのは、見城さんが社長を務める会社、幻冬舎の男性誌「ゲーテ」のキャッチコピーだそうです。見城さん自身も、「こんな考え方を、人は極端だと言うかもしれない」と前置きしながらも、「しかし、仕事がうまくいっていない時は、食事がおいしくなかったり、休日のゴルフが楽しくなかったりするのは、誰しも身に覚えがあるのではないだろうか」と書いている。

それは、男女で変わりはないというのが見城さんの考え方だとのことで、林真理子さんも女性もどんどんプロになっていい。「きちんと働けば、仕事はその人に、驚くほど多くのものを与えてくれます」「プロになって技術を得るのは自分です。会社を移ったり、独立したりしても、その技術は生かせます」と語ります。

昨今は、ワークライフバランスが叫ばれ、仕事人間なだけでなく、家庭や生活も大事にしようというのは基本です。もちろん、仕事ばかりで精神的、肉体的に無理がたたってしまうということはあってはならないと思います。でも、バランスなんて人によって違うもの。家庭ひとつとっても、共働きの家だってあるし、どちらかが専業で主夫/主婦をすることもあるし、もちろん独身もいます。でも、昨今は、それぞれの生き方におけるバランスは違うのに、みんなが同じバランスをとらないといけない感じがしてしまうし、それは仕事にかける比重に対しても同じように思えてしまいます。

個人的には、仕事はそこそこにプライベートを充実させたい人がいてもいいし、これだけは達成させたいという仕事があるなら、全力で突き進んでいいのではないかと思うことはあります。そのせいで、周囲に過剰に犠牲を強いたりするのはどうかと思いますが、それぞれがいろんなパターンを見つけるべきで、それが違っても、人それぞれだと思うほうが気分的にも安定するのではないかと思います。

この間公開中の映画『バクマン。』を見ました。この映画では、主人公のひとり、真城最高が病気になっても、漫画原稿を完成させるか否か、そのことをコンビを組んだ高木秋人や周囲が許すか否かがクライマックスになっています。もちろん、仕事のために命の危険にさらされるのはどうかとは思うけれど、自分の達成したい目標のために、本気になったっていいじゃん、と思ってしまいました(バクマンと同じく、見城さんも血尿を出しながら仕事をしていましたが……)。

血尿が出でもやれとは決して思いませんが、少し前にも、BSプレミアムで、若手9組の漫才合宿に密着する「笑けずり」という番組がありました。そこで若手芸人に対して、先輩芸人であるバイキングが、「考えるしかない。ネタをつくることだ。今の皆さんに、ネタを作る以外に何があるのか」とアドバイスしているのを見て、それほどかけるものがあることって素敵だと思うし(それが趣味でも仕事でも)、そしてそれに向かうひたむきさがあってこそ、バイキングはテレビに出ているんだなと思えました。

そんな風に、仕事のやり方、ひたむきさのかけ方っていろいろあっていいと思ったのですが、今の時代はどうしてもバランス重視が叫ばれている気がしてしまう。もちろん、そこには、ひたむきさを利用する人がいることなども関係しているのですが、利用されないひたむきさもあるはず。そんなことを考えていていたらふと、この本は「過剰な二人」と言うタイトルであったことを思い出したのですが、過剰であるからこそ、見られるものはあるはずなのです。

過剰な二人

著 : 林 真理子
著 : 見城 徹

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レビュアー

西森路代

1972年生まれ。フリーライター。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般や、女性について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に「女子会2.0」(NHK出版)がある。

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